Kroi 千葉大樹×Bialystocks 菊池剛 鍵盤対談 初の対バン前に理解を深める楽曲やライブへの2組のスタンス
Kroiが11月から12月にかけて全国7公演の対バンツアー『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』を開催する。『Dig the Deep』は、Kroiが活動初期から行ってきた対バンライブ企画。約2年ぶりの開催となる今回のゲストアーティストにはTempalay、OKAMOTO'S、nobodyknows+、Nulbarich、Bialystocks、Ovall、クリープハイプが名を連ねている。
リアルサウンドでは、Kroiの千葉大樹(Key)とBialystocksの菊池剛(Key)によるキーボーディスト対談をセッティング。お互いのバンドの印象、楽曲制作やライブに対するスタンス、対バンへの意気込みなどについて聞いた。(森朋之)
鍵盤奏者はまとめ役向き? レーベルメイトとして抱いていた印象
千葉大樹:今回はよろしくお願いします。対談の取材は初めてなんですけど、「ぜひ菊池さんと話したいです」とお願いしたんですよ。
菊池剛:そうだったんですね。よろしくお願いします。
千葉:今までしっかり話したこともなかったので。あ、結婚式で鍵盤をお貸ししたことはありましたね。いつもお世話になってるスタッフの方の結婚式で、うち(Kroi)とBialystocks、SOMETIME'Sが演奏したっていう。
菊池:そうでした(笑)。あと、ブルーノ・マーズのライブでたまたま近くの席でしたよね。
——交流がはじまったのは、BialystocksがIRORI Recordsに加わってからですか?
千葉:そうですね。同じレーベルになって初めてBialystocksの曲を聴いたんですけど、めちゃくちゃいい曲ばかりだし、ちゃんと音楽をやっているという印象がすごくあって。こういうアーティストがレーベルにいてくれることで、「音楽を真剣にやっているレーベル」ということがもっと伝わるんじゃないかなと思いました。
菊池:Kroiを知ったのは、2021年ですね。我々が初めてアルバム(1stアルバム『ビアリストックス』)を出したときにタワーレコードで挨拶周りをしていたら、KroiのEP(『STRUCTURE DECK』)が一緒に並べてあるのを見かけて「こんなバンドがいるんだ」と。ブラックミュージックやファンクがベースにありつつ、近寄りがたいエグさがないというか。演奏しているところが目に浮かぶ感じもありましたね。
千葉:演奏が目に浮かぶというのはうれしいです。メンバー全員をフィーチャーするというか、楽曲のなかにそれぞれが目立つパートがあったりするので。そこは作曲の段階から意識していますね。ボーカルの(内田)怜央も「ボーカルだけを聴かせたいわけではない」と言っていて。歌も一つの楽器として捉えているというか、優劣をつけずに構成しているんですよね。
菊池:なるほど。我々は逆に歌謡曲的なものも好きなので、歌を中心に置きたいところがあって。
千葉:確かにBialystocksの曲を聴くと、ボーカルを大事にしている印象がありますね。
菊池:“オケと歌”みたいにはしたくないけど、歌が最初に飛び込んでくるような構造にしたいんですよね。ボーカリストの違いもありますけど。
千葉:甫木元さん(Bialystocksのボーカル・甫木元 空)はじっくり聴かせる曲も似合いますからね。怜央はリズムを大事にしていて「このドラムだと歌が乗せづらい」みたいな会話もあるんですよ。
——Kroi、Bialystocksは、ライブで原曲と違うアレンジにすることも多いですよね。
千葉:そうですね。
菊池:Kroiもかなりソロ演奏が散りばめられてますよね。
千葉:かなりやってます。ライブでは原曲と何かしら変えたくなるし、がっつりアレンジする曲もあって。お客さんもそのほうが楽しいと思うし、我々も演奏していて面白いので。ライブのアレンジはどうやってます?
菊池:ほぼ僕に一任されてますね。自分でアレンジして「こうしてください」とミュージシャンに伝えて。「できなくてもやってください」という感じです(笑)。
千葉:鬼教官じゃないですか(笑)。
菊池:そうですかね(笑)。バンドメンバーがライブのたびに変わるので、ある程度スピード感が必要というか、自分で決めちゃったほうが早いんですよ。あと、ちょっと変わったこともやりやすいし。相談すると、日本人的な折衷案になりがちというか。
千葉:「結局、どっちの意見も通ってない」みたいな。
菊池:そうなりたくないから、あえて意見は聞かないようにしてます(笑)。もちろんできそうなミュージシャンに頼んでいるからできることなんですけどね。
千葉:Kroiのメンバーはわりと気ぃ遣いなんですよ。意外と典型的な日本人というか(笑)、全員が「あれ?」って感じになることもあって。
菊池:みんなでお見合いしてる感じ。
千葉:そういうときって、みんなが「上手くハマってないな」と思ってるんですよ。そのまま進めてもいい結果にならないことがわかっているので、方向を変えてみたり、長めの休憩を挟んだり、何枚かあるカードを切って。メインで曲を作っているのは怜央なので、あいつが決めることも多いですけどね。あと、アレンジ周りのことは僕が意見することもあって。まとめるわけではなくて、みんなの話を聞きつつ、いい方向に進める感じかな。仲介役です(笑)。
——Bialystocksはやはり菊池さんがまとめ役ですか?
菊池:どうですかね。ライブのアレンジなどは、僕の言うことを甫木元に聞いてもらってますけど(笑)。彼は「こうしたい」みたいなことをあまり言わないんですよ。遠慮しているのか何も浮かんでいないのかわからなかったんだけど、たぶん、浮かんでないんだろうなと(笑)。甫木元はずっと音楽をやっていた人間じゃないから、こちらから要望を伝えてやりながら技を増やしてもらってるところもあります。そこも内田さんと違うところですね。
千葉:なるほど。
菊池:内田さんって歌ってるときと話してるときでぜんぜん雰囲気が違いますよね。MCのときは男子高校生みたいなんだけど、歌いはじめると豹変するというか。
千葉:確かにギャップはあるかも(笑)。
菊池:我々はライブ中はほとんど話さないんですよ。へんな空気になるくらいだったら、やめたほうがいいなと思っていて。
——ライブの見せ方でいうと、曲をつなぐところは共通点かもしれないですね。
菊池:無音の状態をあまり作りたくないんですよ。音がないとシーンとしちゃうので、曲をつなぐことが多いですね。
千葉:うちは「つないだほうがライブっぽい」というシンプルな理由です。最初はそうでもなかったんですけど、素晴らしいアーティストのライブを観たり、自分たちのライブを重ねるなかで、徐々につなぐようになって。前回のツアーの前に、すべての曲のテンポとコードを表にまとめたんですよ。それを見ながら、「コレとコレはつながりそうだね」というのを話して。たとえばBPMが140の曲と70の曲はつなげられるなとか。その表はけっこう使ってましたね。
菊池:それを先導するのは千葉さんの役目なんですね。
千葉:あ、そうですね(笑)。そういう作業は俺がやることが多いかも。
——鍵盤奏者だから?
千葉:そうかもしれない。もちろん怜央もコードやリズムのことをよくわかってるんだけど、コードバッキングをいちばんやってるのは鍵盤だと思うので。
菊池:ピアノは打楽器とコード楽器の両方の面があると言われてますからね。