4s4kiに与えられた音楽という“ギアス”とファンに継承される願い 『CODE GE4SS』再現など濃密な3部構成ライブをレポート

4s4kiワンマンライブレポ

 目の前に繰り広げられる美しくも破壊的な光景に会場中がすっかり魅入られていると、再び4s4kiがステージへと戻ってきた。作品の完成によってステージセットの最後のピースが埋まり、いよいよこの特別な夜の最後を飾る、第三部「4s4ki:Oneman live 2023 “承”」が幕を開けた。

 1曲目に選ばれたのは代表曲「おまえのドリームランド」。『CODE GE4SS』の重厚な世界観と、Fragmentとzzzによる強烈なパフォーマンスを立て続けに浴びたこともあってか、どこか浮遊感の漂う楽曲の世界がより一層に解放感を持って広がっていく。その心地よさは4s4ki自身も思わず「気持ちいいー!」と演奏中に叫んでしまうほどで、瞬く間にポジティブなエネルギーが会場中を満たしていく。そのムードをしっかりと捉えた4s4kiは「先制の剣」や「LOG OUT」といった楽曲を立て続けに放ち、色鮮やかに尖った音色や脳内から直接引っ張り出したような言葉の数々を次々と炸裂させながら、その熱量を一気に限界まで引き上げていく。途轍もないエネルギーに飲み込まれそうになるが、4s4ki自身はそのポップでヘヴィな混沌にむしろ身を委ねるかのように、続く「I LOVE ME」や「Sugar Junky」では地面を這ったり、ユーモラスな動きを見せながら、楽曲と一体となったかのようなパフォーマンスを披露していた。

4s4ki

 「先制の剣」の〈大丈夫だ、問題ない。〉のパートで「いつも通りふざけ倒して参りたいと思いますので、皆さんも恥を捨てて楽しんでいってくださいね!」と言い放ったように、4s4kiのライブは基本的にはポップで楽しい空間が広がるものだ。だが、その音楽に込められているのは決してポジティブな感情だけではない。「私は本当はネガティブな人間だ」と前置きした4s4kiは、「みんなは辛いことがあった時に、私のこういう曲を聴いて、無理に元気になろうと思わなくていいから……ね? 寄り添うような楽曲をみんなに届けられたらいいなと思うから、そんな曲を2曲続けて歌います」と語り、自身の楽曲の中でも特にヘヴィな「ブラックホール」と「paranoia」を続けて披露した。

 自ら激しく歪んだギターを鳴らしながら〈どうしてこうなってしまったの/どうして死にたいと思っちゃうの〉と手遅れの現実を嘆く「ブラックホール」で声を震わせながら歌うその姿は、決して人々を楽しませるような、ポジティブなものではないだろう。だが、4s4kiがその曲名を告げた時に、観客からは大きな喜びの声が上がり、誰もがその姿を真剣に見つめていた。それは、ここに集まった人々がそういった感情を多かれ少なかれ抱えており、まさに寄り添ってくれる存在を求めているからなのだろう。

4s4ki

 そして、そんな「寄り添ってくれる存在」を求めていたのはかつての4s4ki自身にとっても同様だったのではないだろうか。辛い現実から妄想の世界へと逃避する自らの姿を痛烈に描いた「paranoia」で〈明日にはみんなに愛されるように〉と語り、耳をつんざくほどの轟音でギターを掻き鳴らしながら、生まれ変わりの願いを叫ぶその姿は、かつて孤独で辛い日々を過ごしながら、何よりも愛されることを切に求め続け、やがて生に絶望してしまった『コードギアス』のC.C.の姿を想起させる。

 『コードギアス』という作品を象徴する場面の一つに、死を受け入れた親友に対して、ルルーシュが「生きろ」というギアス(命令)をかけるシーンがある。この「生きろ」という言葉は、ルルーシュという人物を象徴するものであると言っても過言ではないだろう。その想いをまさに“継承”した4s4kiもまた、ネガティブな楽曲の中でも、あくまで生を叫び続けていた。このレポートを書いている今もなお「ブラックホール」の最後で繰り返される〈でも生きたいんだよ〉の絶叫が脳裏に焼きついて離れない。このヘヴィな2曲を終えた4s4kiはキーボードへと向かっていった。

 「escape from」「Gender」の2曲をキーボードの弾き語りで丁寧に歌い上げた4s4kiは、「特に大切な曲」と前置きして「クロニクル」へと繋いだ。歌詞の一つひとつを確かめるように歌うその姿は、これまでに紡いできた感情をすべて吐き出してしまうかのようで、演奏も弾き語りから壮大なトラックへと移行していく。〈スタートラインが違う 理不尽なレース〉に絶望しながらも、愛されることを求め、ルルーシュのように〈自ら犠牲に聖人の様になれるわけもなく/なんて愚かだろう?〉と思いながらも、それでもなお4s4kiは〈ただ生きて/喚いて/叫んで〉と生を叫び続ける。そこには「新世代」や「ハイパーポップ」といった言葉も意味を成さない、ただ今を生きている、一人の人間の剥き出しの感情だけがあった。

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