4s4kiに与えられた音楽という“ギアス”とファンに継承される願い 『CODE GE4SS』再現など濃密な3部構成ライブをレポート

4s4kiワンマンライブレポ

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。4s4kiよ、力の限り歌え! そして、ここに集いし者たちよ、心して聴け! この4s4kiの歌を!」

 2023年7月15日、Spotify O-EAST。『NEW ALTERNATIVE FESTIVAL“AREA 44 vol.2 ; CODE GE4SS”』と名づけられたこの日のイベントは、4s4kiが自身にとってのルーツであるアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』と公式にタッグを組んだ最新アルバム『CODE GE4SS』のリリースに合わせて開催されたものであり、同作の再現ライブを含む3部構成のスペシャルライブである。

4s4ki

 そんな特別な夜を迎え、期待に満ちた会場に満を持して放たれたのが、『コードギアス 反逆のルルーシュ』の主人公、ルルーシュ・ランペルージ(CV:福山潤)による冒頭の言葉だ。言葉に合わせてスクリーンに映し出された象徴的なマークは、やがて見開いたルルーシュの目へと変わり、それが彼から4s4kiに対して、そして私たちに対して下された「ギアス」(絶対遵守の命令)であることを示していた。

 果たしてこれ以上の演出が考えられるだろうか。ルルーシュの「ギアス」を受けた4s4kiは、その言葉に従うように堂々とステージに立ち、まるで祈りを込めるかのように『CODE GE4SS』の1曲目を飾る「CODE GE4SS」を歌い始める。神々しさすら感じるその姿と歌声に魅了されるのも束の間、一気に疾走するビートに観客の熱狂は一気にピークに達し、スクリーンにはその世界をさらに拡張するかのように『コードギアス 反逆のルルーシュ』のシーンが次々と映し出されていく。視覚と聴覚、そして自らの中にある『コードギアス』の記憶がめまぐるしく刺激され、これまで足を運んできたライブでは決して感じたことのない感覚に襲われる。

 『CODE GE4SS』は、一見するとコラボレーション/タイアップ色の強い作品だが、「インスパイアド・アルバム」と位置づけられている通り、4s4ki自身が強烈な“何か”を感じた『コードギアス』という作品を自らの表現によって再解釈したものであり、そこには同作を媒介とすることによって4s4ki自身と、聴く側の感情の双方を激しく刺激する瞬間が訪れる。それは生のパフォーマンスによってさらに増幅され、よりリアルで複雑なものとなって会場中に響き渡る。

 同名のキャラクターをモチーフに、自らがただ使われるだけの存在であることを自覚しながら、それでも居場所があることへの喜びを切なく描いた「rolo」では、最初は優しく歌い上げながらも徐々に震えていく声がそこにある想いの複雑さ、やるせなさをより一層に強く感じさせる。脳内がノイズで掻き乱されるかのような「SILENT」から劇中屈指の悲劇を皮切りに幕を開ける反乱を描いた「ブラックリベリオン」へと雪崩れ込むパートでは、スクリーンに広がるグリッチノイズと虐殺と破壊、原曲以上にヘヴィに鳴り響くビートと銃声、何より4s4ki自身の絶叫によって会場もろとも破壊的な空間へと誘われていく。『コードギアス』という作品を通して、居場所を切に求める想いや、処理することのできない状況への混乱、その中でも前へ進もうとする強い意志といった、一つひとつのリアルな感情が次々と立体的に広がっていく。

 そんな第一部の中でも最大のハイライトとなったのは「Euphemia li Britannia」だろう。「私にとって本当に大事な曲」と前置きした4s4kiは、作中で唯一のインストゥルメンタル曲である同楽曲をキーボードによる生演奏で披露した。『コードギアス』屈指の“悲劇のヒロイン”である人物を表現したであろう優しく美しいメロディを奏でるその姿は、まさに4s4ki自身が、誰よりも平等と平和を願ってた“彼女”に対して弔いの意を示しているかのようであった。

 語りかけるかのように歌われた「ユフィの為に」や、スクリーンに映し出された言葉の一つひとつも相まって普遍的なラブソングのように響いた「Shirley」を経て、第一部の「4s4ki:Live at AREA44 “CODE GE4SS”」も残り1曲。この場に集まった人々への感謝を告げた4s4kiは、かつて“無条件の愛”を求めたC.C.(『コードギアス』の登場人物)をモチーフとして書かれたであろう「GREEN GIRL」を披露し、〈僕も受け継ぎたい〉という『CODE GE4SS』やこのイベントを象徴するフレーズを力強く歌い上げ、ステージから去っていった。

4s4ki

 第二部となる「Fragment × zzz:Installation “継”」では、4s4kiに代わってステージに登場したFragment(4s4kiが所属する“ササクレクト”のプロデューサーユニット)とzzz(4s4kiのライブ舞台美術などを手がけるアーティスト)によるインスタレーションがステージ上で展開された。FragmentがZAZEN BOYS「Honnoji」の凶悪なリミックスなどを織り交ぜながら硬質なビートを会場中に響かせると、その音に導かれるようにzzzが倒れた十字架のオブジェに蛍光色の塗料を重ねていく。初めはオレンジやピンク、青や緑を主体とした色鮮やかな世界が広げられていったが、やがて黒の塗料が何度も重ねられていくうちに、混沌とした渦が幾つも生まれていく。

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