ツユ、活動規模拡大の中で貫く多様な共感と向き合う姿勢 『アンダーメンタリティ』はピンポイントに聴き手を掴む“エグい”作品に
ツユがリリースした3rdアルバム『アンダーメンタリティ』。とても鮮烈な一枚だ。言葉を選ばずに言うならば、とても“エグい”作品である。
特に表題曲「Under Mentality」から「いつかオトナになれるといいね。」までの前半6曲。陽光の下のドライブに似合いそうなグッドフィーリングなポップミュージック――というようなものとはまるで真逆のテイストだ。むしろ電気もつけず暗い部屋の中で布団にくるまってスマホの光だけに照らされているようなシチュエーションの方がピッタリくる。不満、嫉妬、劣等感、悪意、そういう負の感情が立て続けに吐露される。胸のうちにグルグルと渦巻く行き場のない葛藤が、めまぐるしく展開する曲調に乗せて吐き出される。
ツユは、作詞作曲・ギター・プロデュース担当のぷす、ボーカル担当の礼衣、ピアノ担当のmiroからなる音楽ユニット。約2年ぶりの新作アルバムはメジャーレーベル所属後初のフルアルバムだ。今年に入ってからは、TVアニメ『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編エンディング主題歌「傷つけど、愛してる。」や、dアニメストアCM「#アニメってエネルギーだ」篇CMソング「これだからやめらんない!」などのタイアップ曲も書き下ろしてきた。アルバムにはそれらの楽曲も収録されているのだが、その上で、とてもコンセプチュアルな仕上がりになっている。
そのキーになっている曲が、2022年7月に公開された「アンダーキッズ」だ。MVの再生回数は1100万回を超える人気曲。歌詞やアニメーションの描写を見ればピンとくるように、曲は新宿・歌舞伎町の”トー横界隈”に集う若者たちの心情をモチーフにしている。居場所もない、行くあてもない、未来に希望を感じられない、そんな言葉が速いパッセージのメロディに乗せて歌われる。〈将来この国ごと終わるから/荒れるだけ今荒れて/近い未来でほら滅びましょ〉というフレーズが刺さる。
2022年5月に公開された「いつかオトナになれるといいね。」も強烈だ。こちらは“推し”に全ての愛情と財産を注ぎ込むファン=“信者”と、それを冷めた目で見る主人公の視点で展開する一曲。曲調は明るくコミカルなトーンでありながら、歌われていることはかなり皮肉に満ちている。冒頭から〈盲目!信者!〉と煽るコールが繰り広げられ、歌詞の中で“推し”はスキャンダルと炎上を巻き起こし、結局はバッドエンドに終着する。
アルバムのリード曲として先行配信された「アンダーヒロイン」は、この「いつかオトナになれるといいね。」のMVに登場するピンク髪の少女が主人公の1曲。あざとい振る舞いと周囲への攻撃的な態度をとりながら、だんだんと嫉妬心や劣等感に飲み込まれていく心情が描かれる。MVには「アンダーキッズ」主人公の紫色の髪の少女も登場する。つまりは3部作のように一つの世界観を共有するシリーズの3曲と言える。
アルバムはギターをフィーチャーしたぷす作曲のインストゥルメンタル楽曲「Under Mentality」から始まり、礼衣がモノローグのセリフを喋る「不平不満の病」と「腹黒女の戯言」を挟んでこの3曲が並ぶ。「アンダーヒロイン」と「いつかオトナになれるといいね。」には〈ギター!〉という歌詞からギターソロに突入する展開もあり、そういうところも含めて、あけすけな言葉遣いと直情的な曲調が結びついているのがポイントだ。