3人組ユニット・ツユの鋭い音楽性に“えぐられた”人が急増中 フックの強さを武器に拡大する活動のフィールド

ツユの鋭い音楽性に“えぐられた”人が急増中

 ネットカルチャーを起点に拡大してきたツユの求心力は、今、より大きなフィールドに波及しようとしている。

 先日、初の全国ツアー『ツユ LIVE TOUR 2022』ファイナルのZepp DiverCity(TOKYO)昼公演を観て、そう痛感した。フロアに渦巻いていた熱気は、オーディエンスの一人ひとりの心にツユの音楽が深く刺さっていることを証明していた。

ツユ ライブ写真
『ツユ LIVE TOUR 2022』Zepp DiverCity(TOKYO)(写真=堀卓朗(ELENORE))

 ツユは、作詞作曲・ギター担当のぷす、ボーカル担当の礼衣、ピアノ担当のmiroからなる3人組の音楽ユニット。その楽曲が醸し出すムードは、心地いい“グッドバイブス”が中心ではない。むしろ逆。不安や、葛藤や、劣等感や、妬みや、人がどうしても抱えてしまう負の感情をモチーフにした曲が多い。生々しい言葉で心の傷跡にふれるような歌詞も多い。エモーションを強く揺さぶるタイプの音楽だ。YouTube登録者数は2022年11月時点で110万人超。その数字は、ツユの楽曲が持つ刃のような鋭い切っ先に“えぐられた”人がここまで増えてきたことの証でもある。

 結成から約3年半。ここまでのツユの歩みと、彼らが打ち立ててきたポップミュージックとしてのユニークな魅力を、改めて振り返ってみたい。

 2019年6月、活動をスタートしたタイミングで投稿した「やっぱり雨は降るんだね」と、ツユがその名を広める大きなきっかけになった「くらべられっ子」が、まずは初期の代表曲。軽快なギターサウンドと切なく狂おしいメロディを持つ「やっぱり雨は降るんだね」は、名前の由来もあって雨にまつわる曲を多くレパートリーに持つツユにとって最初の名刺代わりの一曲だろう。劣等感を抱えた心情を起伏の大きな歌声で綴る「くらべられっ子」は、沢山のリスナーの心を射抜いたはずだ。

ツユ - やっぱり雨は降るんだね MV
ツユ - くらべられっ子 MV

 鮮やかな色彩で描かれたアニメーションのミュージックビデオもツユのクリエイティブの大きな特徴だ。コンポーザーのぷすはボカロPや歌い手としてのキャリアを経てユニットの活動をスタートさせている。ネットシーンにおいてはイラストレーターや動画クリエイターと組んだアニメーションMVという手法自体はよく見られるものだが、さまざまな表情を見せる少女の姿とリリックの言葉をビビッドに見せていくビジュアルのテンポの良さには特筆すべきものがあると感じる。

 2020年2月に上記の2曲などを収録した1stアルバム『やっぱり雨は降るんだね』をリリースしたツユは、2021年7月に2ndアルバム『貴方を不幸に誘いますね』を発表する。「泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて」や「デモーニッシュ」など、よりヒリヒリとしたダークな側面を前面に出してきた一枚だ。「泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて」は情報量の多い畳み掛ける曲展開に乗せて、相手を見下すような余裕がどんどん焦燥に変わっていくような感情のありさまを歌う曲。めくるめくテンポチェンジが仕込まれた「デモーニッシュ」は、言葉数が多く符割りも細かい忙しないフレーズを歌いこなす礼衣のボーカルの表現力が目覚ましく発揮された一曲だ。安易な共感を阻むような、ある種の狂気性にまで踏み込んだ歌詞の描写も鮮烈だ。

ツユ - 泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて MV
ツユ - デモーニッシュ MV

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