ツユの型破りなライブから鮮明に浮かび上がる3人の想い 全国ツアー最終日、怒涛のステージを観て
「独特なぷすの曲を好きでいてくれている人がたくさんいるってすごいことだと思う」(miro)
「みんな(ファン)も変なんだよ!(笑)」(礼衣)
「ただ、変なりにも僕らはツユとしてこれからも活動していきます!」(ぷす)
思春期の少女たちの心に棲む不条理をクレイジーなメロディで描く楽曲を通してツユが表現したかった想いが、3人の姿勢からも鮮明に浮かび上がるステージだった──。
10月1日のZepp Fukuoka公演を皮切りに、全国6カ所を巡る初の全国ツアー『ツユ LIVE TOUR 2022』を開催したツユ。最終日となった10月30日Zepp DiverCity(TOKYO)公演のうち、昼の部の客席はビッシリと埋まり、上昇していくツユの人気の高さを物語っていた。
ツユの内包する楽曲イメージとは一味違うソリッドなSEが流れるや否や、青と赤のライトが交互に明滅しはじめる。ステージ手前に張られた紗幕の向こう側には、ぷす(Gt)、miro(Pf)。そして最後、ふたりの間に礼衣(Vo)が入り込む。すかさず、礼衣による「アンダーキッズ」との声の合図で紗幕に映る同曲の紫を基調としたアニメーションMV。この日のライブの口火が切られた。〈最悪だ 最低だ お前らのせいだ〉究極のネガティブワードと変則的なメロディに一気に引き込まれる同曲は、終わりに向かうにつれてこれまで出会ったツユの楽曲のメロディの断片と再会する1曲。回るほどに見える景色が変化するティーカップに似た飽きない表情を魅せるメロディに礼衣の歌声がぴったりと重なり合うなか、紗幕が落ちた。1曲目から急ピッチで駆け上がり、炸裂しているのは独自路線をひた走るツユらしさである。
切ないバラードナンバー「太陽になれるかな」や「雨模様」、恨み、妬み、憎しみといった悪感情が寄生する「強欲」から「デモーニッシュ」への流れなどを聴いていて実感したのは、もともと煌めくピアノサウンドが存在感を放っているツユの楽曲においては、ステージに上がるメンバーが現体制へと確立したことで、よりピアノがマストな楽器になっているということ。とくにこの日もmiroのピアノサウンドが礼衣のセンチメンタルな歌声の魅力を増幅させていた。柔らかい様相で溶け合ったピアノの音色と礼衣の歌声へ徐々にバンドサウンドが加わり、雲が切れ視界が開けたようなアンサンブルを奏でた「梅雨明けの」、どこかノスタルジックな「ナツノカゼ御来光」と、ぷすによるじっぷす名義のボーカロイド曲のセルフカバーが続いたあとには、礼衣の寂しげな歌声がこだまする「ひとりぼっちと未来」を挟み、再びボーカロイド曲のセルフカバー「アサガオの散る頃に」へ。
この日、序盤から印象的だったのは、楽曲に限らず、ツユの3人の個性にアクセントをつけることで独自の世界観を構築してみせるそのステージング。そこから伝わってくるのは、ツユのライブパフォーマンスにおける断固としたこだわりだ。なかでも、高低差の激しい楽曲を音程ひとつも零すことのないようにと正確に歌い上げていく礼衣の姿からは高いプロ意識も垣間見えた。そんなツユの個性に応えるように、色とりどりのペンライトや拳が自由な形で力強く上がり、客席もその場を楽しんでいる。
一般公開よりも先に初めてステージ上のスクリーンにMVが公開された曲は、スマートフォン向けリズム&アドベンチャーゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』のユニット・ワンダーランズ×ショウタイムへの書き下ろし曲「どんな結末がお望みだい?」。「くらべられっ子」「ナミカレ」といったツユを代表する楽曲群に続いて、礼衣がついに言葉を投げたのは、18曲目の「泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて」の演奏後だった。MCを入れることなく、ここまで密度の濃い演奏をひたすら貪欲に続けることができるユニットは、ツユくらいだ。型破りな音楽性に、型破りなライブスタンス。他と比較する余地もないほどにエキセントリックな様が小気味よい。礼衣の問いにぷすのギターサウンドが応えるかのような一幕があった「あの世行きのバスに乗ってさらば。」の延長線上にある「終点の先が在るとするならば。」の2曲も強烈な印象を残した。
確信したのは、ツユのライブの構成においてそれぞれの楽曲のアニメーションMVの展開が重要な役割を果たしているということ。映像とサウンドの両方がひとつになることで想像以上に楽曲の迫力と臨場感が増していく。