The BONEZ、窮屈な時代に傷を負った仲間への言葉 JESSE&T$UYO$HIが語る、喪失から始まったバンドが果たすべき役目

The BONEZ、傷を負った仲間への言葉

「“New Original”を先導していくのがバンドの役目」

――「For you」では、そうやって傷つきながら歩んできた人生についても衒いなく歌っています。

JESSE:負けること、失敗することは、人生の正解なんだよね。負けないと勝ち方がわからないし、“勝ち”という言葉も、“負け”という言葉がないと生まれないから。俺なんて敗北だらけな人生だけど、そこからもう一度這い上がってチャンスを取りにきた時に実感したのは、今までフロントマンとして、俺がみんなのことを背負っていたのではなくて、俺のことを多くの人たちが背負ってくれていたんだなっていうことで。その分、俺のせいでダメージを食らわせちゃった人たちがいっぱいいるから……みんなを一緒にすごい景色に連れて行くことで、「俺を信じて、背負ってくれたことは間違ってなかったんだぜ」って思わせるしかないなって、今は思ってる。

――冒頭で話した「仲間と共に見たことがない景色を見に行こう」の中には、そういう決意も込められているわけですね。

JESSE:うん、そうだね。ただ、もともとベイビーズ(PTPファン)もRIZER(RIZEファン)もハードなファンになればなるほど、The BONEZを聴かない人が多かったから。PTPやRIZEが観たいからこそ、別にThe BONEZを観たくないってことなんだよね。だから、最初に来てくれた「いいじゃん、観に行くよ」っていうフットワークの軽いヤツらを、俺らがどれだけ大切にしたことか。そこで感じた「ありがとう」の気持ちは一生忘れないよと思って10年走ってきたかな。

T$UYO$HI:だからこそ、俺は「ロックバンドは好きだけどThe BONEZはなんとなくしか知らない」っていう人に、今のThe BONEZをちゃんと観てもらいたい。対バンした時に、ステージ袖にいたROTTENGRAFFTYのN∀OKIが「お前らのライブやっぱりすごいな。The BONEZとやりたくないわ!」って言ってくれたんだけど、コロナ禍だったこともあって、The BONEZのイメージがその前で止まっている人が多い気がする。俺はそれがすごく悔しくて。このアルバムとツアーで、今のThe BONEZは予想を超えてちゃんとアップデートできてるんだってことをいろんな人に観てもらいたい。

JESSE:本当に。和食だと思ったら、「いきなりイタリアンなのか、お前ら!」というくらい違うと思うから。

The BONEZ - Plasma-【Live Music Video】

――The BONEZは逆境がある時こそすごいライブをするバンドだと思いますし、活動が一旦止まった上にコロナ禍という壁が立ちはだかった中でも、怯まずそういうライブを続けてきたからこそ、今の想いにつながっているんじゃないかと思うんです。2020年以降のご自身たちのライブへの姿勢は、今回のアルバムにどう結びついていると思いますか。

JESSE:コロナ禍で3回ツアーをやったんだけど、そもそも1つ変化を感じていたのは、コロナ禍だからこそライブに来れるようになった人がたくさんいるということで。客席にスペースができたことで、人混みが苦手なタイプの人でも、初めてライブを生で観に来れたっていう人がいて。あとはライブハウスの最前列に小学生や親子連れのお客さんがいるなんて光景も、コロナ前はあり得なかったからね。今までライブに来ていたヘッズの姿が減って、まだライブ慣れしてないような初めましてのお客さんがすごく増えた。もちろん、そういう人たちに向けて「ライブハウスってこうやって遊ぶんだぜ!」って伝えたりもしたんだけど、そもそも彼らはモッシュやダイブがなくても平気な人たちだし、あまり激しく動くライブが好きじゃないっていう人も結構いるんだよね。だけど、そういう人がこの3年間のライブシーンを支えてくれてたんだから、以前のライブヘッズが戻ってきて、いきなり好き放題やるっていうのは違う気がしていて。俺はどちらにも理解し合って、共存してほしいんだよ。

――まさに「New Original」を作っていくということですよね。

JESSE:そうだね。それを先導していくのがバンドの役目だし、今回のアルバムにはそういう言葉が詰まってると思う。だから、むしろ昔に戻りたくはないね。この前、GORILLA HALL(OSAKA)でライブをやった時に、新しい光景を見ることができて。モッシュもダイブも何でもありな会場なんだけど、最前列に子供がいる状態からライブが始まって。「大丈夫かな?」と思ったんだけど、ちゃんと子供のいない安全なエリアというか、フロアの左右でモッシュやダイブが起こるようになっていて。子供とかいろんな人がいることを自然と受け入れて、それでもライブが成り立ってる光景がすごくいいなと思ったんだよね。

 あと、長らくライブ中の声出しが禁止されていたけど、子供たちが危ない目に遭った時って、とっさに「危ない!」って大きな声が出るじゃん。AIだったら「大声を出すな」ってインプットされたら、そういう状況でも声を上げないのかもしれないけど、人間は何かを救いたい時とか、感情が揺さぶられた時は本来、声が出るものなんだよね。その感情が、長らく政府のルールでストップさせられていたじゃないですか。なので、「どうしても出さなければならない時は、我慢せず声を上げてくれ」っていうのは俺はよくMCで伝えていて。それでライブハウスから怒られたこともあったけど、モラルなしに好き放題叫べってことではないんだよ。感情が揺さぶられて、とっさに声が出てしまったのなら俺は受け入れるし、もし怒られても俺が謝るよっていうのは伝えたかったことかな。

「俺らって、表紙が『少年ジャンプ』で、中身は『ヤンジャン』」

T$UYO$HI:でも、『WBC』の大谷(翔平)じゃないけど、「The BONEZだったら何かやってくれるだろう」みたいな周囲の期待に反して、ちょっとでも上手くいかなかったら、急に魔女狩りみたいに批判に走る世の中が、俺はすごく怖いなって思う。マスクする/しないの判断が個人に委ねられたとはいえ、どうしても保守的になってしまうのは仕方ないと思うけど、少なくとも自分の意志で決めていいものなら、俺は楽しい気持ちを失ってまで損をしたくはないんです。だいぶ前から答えがわかっていたはずなのに、後になって「あの時、みんなでああすればよかったよね」みたいになるなら、最初から楽しめていた方がいいと思うし、The BONEZはそれをしっかり提示できてる気がしていて。「今この場を楽しくしたい」「この場でできる限り色々な人とつながりたい」という想いが強いので。

――なるほど。

T$UYO$HI:俺はDragon Ashも(サポートメンバーとして)やってるから、考え方の違いも見えやすかったんですよね。意外とDragon Ashにも保守的なところもあって、コロナ禍が戻るまではライブをやりたくない気持ちも結構強かった。The BONEZにいると「これが普通でしょ」と思ってたことでも、隣のバンドを見てみれば、こんなに違うんだって感じることがいっぱいあって。この前も他のバンドのライブを観ていたら「こんなに熱量なくて大丈夫?」「これリハじゃないの?」みたいに、ちょっとびっくりしちゃったことがあったし。

JESSE:俺らが熱量ありすぎるからね(笑)。やっぱりフェスとかで、ライブ中のステージ横にどれだけバンドマンが集まるかどうかっていうのは、バロメーターみたいなものなんですよ。Limp Bizkitがライブやってると、横にDeftonesが来て、KoЯnも来て……みたいな感じ。それによってライブやっている最中に、「みんな、俺らに期待してるな」って気づけるというか。特に去年あたりから、「お前らのライブはすごいな!」「毎回ツアーファイナルみたいだな!」とか、ライブが強いバンドたちもたくさん言ってくれるようになって。俺らとしてはただ単純に、前回の自分たちのライブ映像とか観ながら「もっとできるよな」って改善してやっているだけなんですよ。俺なんて今、あばらの骨が折れてるんだけど――。

――え!?

JESSE:こないだのライブでダイブした時に(笑)。けど、その状態でもう何本かライブをやっていて、ちゃんと前回を超えようとしているんですよ。

T$UYO$HI:もしかして「#骨から気合い」(The BONEZの10周年ハッシュタグ)ってフリだったの?(笑)

JESSE:それ、他の人にも言われた(笑)。骨折したことがプロモーションになってるじゃねえかって。

――(笑)。

JESSE:まあ、そうやってくしゃみや咳するのさえしんどくても「いいライブするぞ!」っていう、孫悟空状態(笑)。俺らって、表紙が『(週刊)少年ジャンプ』で、中身は『ヤンジャン(週刊ヤングジャンプ)』なんだよね。ちょっとエロかったり不良な面があるんだけど、最後は「絶対に正義が勝つぞ」って強く叫ぶ。

――最高です。「Love song」も、まさにそういう曲になってると思います。

JESSE:このタイトルなのに、全然バラードじゃないっていう。眉間にしわを寄せて歌うより、ちょっとベロを出してやんちゃしながら「Love song」って言ってる方がかっこいい気がしたんだよね。……とはいえ、いくら叫んだところで、そもそも正義が勝った時代なんてなかったわけで。最後に正義が勝つのは、漫画の世界だけ。常に悪いヤツらが牛耳って、善人が涙を流す歴史の繰り返し。だからこそ、俺たちバンドマンにできるのは、生身のお客さん一人ひとりにしっかり見てもらって、いい人生を送ってもらうための材料になることでしかないと思ってる。俺たちのライブを観て開花した人たちに対して、「誰か大切な人を救えるあなたであってくれ」っていう気持ちが一番強いから。

The BONEZ Love song 【Official Video】

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