The BONEZ、窮屈な時代に傷を負った仲間への言葉 JESSE&T$UYO$HIが語る、喪失から始まったバンドが果たすべき役目
The BONEZが10周年を迎えたことは、数字的な節目以上に大きな意味を持つ。喪失から始まった彼らは、ゼロからもう一度スタートラインに立ち、「The BONEZとは何なのか」と向き合いながら、仲間と共に新しい景色を作る意味を強く体現してきたバンドだ。コロナ禍の逆境の中、KOKI(Gt)を新たに迎え入れ、「We are The BONEZ」というアンセムを生み出した4人は、その揺るぎない団結を確信。一方で、分断が進む世の中に向けてレベルミュージックを鳴らし、存在を示すこと、理解し合うこと、自ら未来を築いていくことの意義を叫ぶアティテュードは、彼らのライブでもより顕著になってきているものだ。
過去最高にパンキッシュで、それでいてレゲエからヒップホップまで個性豊かな武器が炸裂している4thアルバム『Yours』(4月19日発売)は、そんなここ数年間の想いが結実した最高の1枚。仲間といる歓びを爆発させながら、己の傷や苦悩も衒いなく歌うことで掴んだThe BONEZの新境地、そして核心とは何なのか。JESSE(Vo/Gt)とT$UYO$HI(Ba)にじっくり話を聞いた。(編集部)
「“The BONEZとは何か”と思った時にできたのが今回の曲たち」
――「仲間と共に見たことがない景色を見に行こう」という想いをパンキッシュに鳴らした会心の作品だと思います! もちろんそこにはいろんな意味が詰まってますが、どんなことを思いながら5年ぶりのアルバムに臨みましたか。
JESSE:コロナ禍だったこともあって、メンバー内で「今のテンションはどんな感じ?」「どういうことをやりたい?」というのは絶えず確認し合っていて。そんなにラウドなものを聴く雰囲気じゃねぇという時もあったけど、観客同士の距離が離れている時期が長かったからこそ、このアルバムがリリースされるときにはそういうものが少しでも緩和していくように、俺ら自身も動いていかなきゃっていう3年間だったのかな。去年あたりは、いつまでコロナが続くのかと思っていたけど、「俺らが終わらせる」くらいに思っていたし、自分たちのライブでもそういう流れを作っていかないとってずっと話していて。
T$UYO$HI:とはいえ、しばらく打ち上げすらできない時期があったからね。
JESSE:そうだよ。今まではライブが終わるたびに、「今日の1曲目よかったね」とか、「2曲目と3曲目の間は“ダダン!”じゃなくて、やっぱり“ダン!”で入ろうよ」とか、そういう会話をスタッフたちとしてたんですよ。ただイェーイって酒飲んで馬鹿やるだけが打ち上げじゃなくて。
――そういう会話が、自然とバンドの血肉になっていたことに気づいたわけですよね。
JESSE:そう。周りのバンドマンには、「モッシュできないから、手を振る曲多めで作る」「ダイブやサークルピットを連想させるような曲はしばらく作らない」と言ってる人たちもいっぱいいたけど、アルバムに着手していた俺の肌感としては「それだときっと遅いんだよな」と思っていて。実際、コロナ禍で“鬼パンク”なアルバムを作れたことで、「こいつらは違うところを見ていたんだな」と思わせられる気がしていて。そこは、イッシー(T$UYO$HI)が作曲をする中で一番闘ってくれたと思うし、「ちょっと攻めすぎてないかな?」っていう不安はあったと思うけど。
T$UYO$HI:作曲面でいうと、いろんな音源をディグっていく中で、すごい才能がどんどん出てきてるし、「こいつらには勝てないな」って思うと正直めちゃくちゃ凹むんですよ。俺はバンドマンの中でも年上の方だから、アンテナが錆びてしまうことへの不安が結構あって。でも、最近の若い子たちは感覚から骨格まで全て違うんだなってことがわかると、逆に「俺らには何ができるんだろう?」とひたすら考えるようになった。「The BONEZとは何か」と思った時にできたのが今回の曲たち。特に、昼間や夕方に聴いて気分がブーストされるようなところが、The BONEZの曲にはあるのかなと。
――「Dreamer」あたりまでのアルバム前半の曲を聴くと、そのテンションが伝わってきます。昨年のEP『LAB』を聴いていても感じたんですけど、今作も4人が本来持っている武器や強みを解放して、どう新しく鳴らしていくかっていう音作りになっていると思うんです。
T$UYO$HI:そうですね。それでいうと、バンドの違いが大きく出るところって、ドラムとボーカルだと俺は思っていて。ベースとギターはエレキだけど、ドラマーの筋力や体格、ボーカルの喉の強さとか、肉体的な部分ってバンドのグルーヴにダイレクトに影響してくるから、洋楽と邦楽の違いもそういうところにあるのかなと。俺らの場合は、JESSEとZAX(Dr)の動物的なところを前面に出していきつつ、ただの動物ではないぞっていうクレバーなエッセンスやドラマ性を振りかけることで、The BONEZらしくなっているのかなと思います。
――例えば、「We are The BONEZ」の2番の展開に顕著に表れてますよね。
T$UYO$HI:ラップのところだよね。けど、もともとは全然違っていて、確かJESSEが「トラップを入れてラップ調にしたほうが面白くない?」って言った気がする。
JESSE:特にThe BONEZとしての最初の5年間、ヒップホップな面はRIZEに任せて、そことは違う“ハイエースツアーバンド”としてのThe BONEZを確立させるために、すごく時間を使った気がしていて。もちろん、PTP(Pay money To my Pain)やRIZEと切り分けて旗を立てることは、通らなきゃいけなかった道なんだけど、本当はPTPでZAXやイッシーがやってたことや、RIZEで俺がやってたことは必殺技のはずで、それは自分がどの現場にいようが武器になるべきものなんだよね。でも、それをあえてしまって、The BONEZとは何なのかを探っていたのが最初の5年だと思うんですよ。
そこから、ここ数年はようやく4人のバランスが取れている気がして。例えば、PTPでやってたようなダウンチューニングを入れてみようっていうのが『LAB』だったし、RIZEみたいにヒップホップを混ぜるチャレンジができたのが「We are The BONEZ」なのかなと思う。特に『LAB』が境界線をぶち破って、「もうちょっと実験してみよう」「箱にしまってた得意技をもう1回使ってみよう」って思わせてくれたなと、今話していて感じますね。
T$UYO$HI:そもそもThe BONEZでは、4人の技の組み合わせ方が前のバンドとは違うわけで。それをちゃんと炸裂させられればいいんじゃないかなって。
「痛みから生まれた俺たちを“こんなに抱きしめてくれるのか”」
――その変化は自分も感じています。けど、10周年という節目でありつつ、このタイミングでそれができるようになった理由は何だと思いますか?
JESSE:俺が(2019年に)逮捕されたことで、本当にいろんな道が閉ざされて、たくさんの人に迷惑や心配をかけてしまったんだけど、とにかく俺は音楽を辞めたくなくて……。そこから「もう1回聴いてみようかな」と思ってもらうためには、みんなの顔に泥を塗ってしまったこの俺が、バンドの核である音楽によって「The BONEZ、こんなにカッコよくなって戻ってきたんだ!」って思わせるしかないと思って。3年前、コロナ禍になった時に「歌つなぎ」の企画がSNSで始まって、Masato(coldrain)が俺にバトンを投げてくれたんだよね。俺が音を鳴らす現場に戻ってきたのはそれが最初だったと思う。その時、他のバンドはみんなボーカルだけの弾き語りで歌をつないでたんだけど、俺たちはThe BONEZとして4人で出演することにして。KOKIの顔を出したのも初めてだったし、そこでやったのが「Rusted Car」……じゃなくて、「Broken Car」だった。
T$UYO$HI:「Rusted Car」の原型なんだけど、その時はまだ歌詞と曲名が違っていて。
――4人で出演したことは、The BONEZの在り方をすごく象徴している話ですよね。The BONEZが喪失から始まったバンドだからこそ、そのストーリーを振り返った時に、もう一度スタートラインに立つためには“バンド”として、4人で新曲を鳴らす必要があったわけで。
JESSE:そう。The BONEZが体現しているのって、“大切なものを失ったところから見つけられた何かがある”ということで。K(Pay money To my Pain)という大事なヤツがこの世からいなくなってしまったけど、痛みから生まれた俺たちのことを「こんなにも抱きしめてくれるのか、この野郎!」って思い続けてきたのがThe BONEZの10年間なんだよね。親友が死ぬなんて起きてほしくないことだけど、それがなければThe BONEZは生まれてないからこそ、俺たちの胸に渦巻くグワーッとした感情は一生なくならない。なんで他のバンドじゃなくてThe BONEZを聴くのかといえば、俺たちにはそういう絶対のストーリーがあるからだって思うし。