(sic)boy×JESSE、同郷コラボで体現する混沌と光 ロック×ヒップホップを更新する両者の共通点

(sic)boy×JESSE、同郷コラボの必然性

 まずは声の威力に圧倒される。混沌を、闇をもがくような叫び声、そこから一瞬突き抜けるようなメロディ。流れるようなその声、雑多な音の粒は、不規則に、苛烈に混在し、闇を見せる。それは何か勢いよく進むもの同士がぶつかり合った時に起こる、爆発の真っ只中にいるように。あるいは多くのものが同列に存在し、流れていくその場所、つまりはこの時代の渦中である。

 3月22日に(sic)boyの新曲「Dark Horse feat. JESSE」がリリースされた。ラップミュージックを軸に、自らの音楽的嗜好を、世界観を貫きながら作品としてジャンルレスにアウトプットしていく(sic)boyは、個性の強いアーティストとぶつかり合い、共振することをやめない。

(sic)boy - Dark Horse feat. JESSE (RIZE / The BONEZ) Prod. KM

 そんなこの楽曲を語る上で外せないのは、やはり彼の音楽性だろう。本楽曲のラウドロック、ミクスチャーへの傾倒は、(sic)boy、および本楽曲のプロデューサーでもあるKMの過去作からも顕著だった。2020年にリリースしたアルバム『CHAOS TAPE』では、多くのジャンルやサウンド的な仕掛けを施しながら、東京のミクスチャーとヒップホップをオリジナルな形で接続させる作品であった。また、ヒップホップクルー CreativeDrugStoreのJUBEEやOnly U、LEXなど、同様の感覚を持って、シーンにジャンルレスな興奮を提示する同世代のラッパーたちと共振することで、その感覚を強めていった。近年、海外のアーティストとのグローバルなコラボレーションも顕著になってきている(sic)boyだが、国内のシーンにおいても、自らの音楽的欲望を追求しながら、多くのアーティストたちと共に、シーンを盛り上げていると言えるだろう。

 ロックとヒップホップ。全てが並列に流れていくインターネット時代を生きる我々にとって、ジャンルを無意味に隔てるものはない。その体現者こそが、SoundCloudという、インターネット音楽文化の渦中で活動し、頭角を現していった(sic)boyである。彼が登場したことは、シーンの在り方や解釈を更新するものであったかもしれないが、それをある種、当然のように、自然とやってしまうクールさこそが、彼の魅力なのだ。

 そんな彼と今回ぶつかり合い、共振するのは、東京のロック/ミクスチャーシーンで精通してきたアーティスト JESSE。(sic)boyにとってJESSEはリスペクトする地元の先輩という関係性で、同曲のトラックの原型がKMから上がってきた際に、(sic)boyが「これを形にしていくのであればJESSEさんしかいない」と発案。ダメ元でオファーしたところJESSEが快諾したという制作エピソードがある。ロックバンドRIZEやThe BONEZのボーカリストとして活躍するJESSEは、音楽シーンの中心でロックジャンルを柔軟に拡張させながら、過去にはZeebraやラッパ我リヤとコラボレーション。ヒップホップシーンとの接続も見せてきた。地元が一緒ということを抜きにしても、彼が今(sic)boyのようなアーティストとコラボレーションすることの必然と説得力は否定できない。

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