次世代のLiSAやAimerは現れる? ソニーミュージックスタッフに聞く、アニソンによる海外ブレイクの課題と可能性

 昨今の日本の音楽シーンとアニメーション作品は切っても切れない関係にある。日本のアニメーションが海外で評価され、注目を集めると、作品の世界観を拡張する主題歌やテーマソングも共に愛され、多くの支持を獲得し続けている。

 直近であれば昨年末にヒットし、海外メディア「Anime Trending」が主催する「9TH TRENDING AWARDS(第9回アニメトレンド大賞)」で史上最多となる8冠を獲得したアニメ『ぼっち・ざ・ろっく』。同作のアルバム作品『結束バンド』は、ストリーミングサービス Spotifyのグローバルトップデビューアルバム4位にランクインし、iTunesの世界アルバムランキングでトップ10を記録するなど、世界的な注目を集めた。

 また、昨年放送のアニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマとして書き下ろされ、常田大希(King Gnu/millennium parade)が参加したことでも話題となった米津玄師「KICK BACK」も、2022年10月13日付けのSpotifyグローバルチャート「トップ50-グローバル」にて47位にランクインしたことが話題に。

 昨年のSpotify年間ランキングを見ると、海外で最も再生された国内アーティストの楽曲の多くがアニメ作品の主題歌であることが分かる。『進撃の巨人』や『呪術廻戦』、『ブラッククローバー』や『東京喰種』など、国内外で話題となったアニメ作品の主題歌やテーマソングが多くランクインしている。

 それだけではない。アニメ『鬼滅の刃』で大ヒットを記録し、海外配信チャートで23冠を達成したAimerの「残響散歌」や、ビルボードグローバルチャートインで話題となったLiSAの「炎」など、近年海外でもヒットした楽曲の多くが、アニメ作品に紐づいたものであったことは、数多くの音楽/アニメファンが感じているところだろう。

 日本のアニメがカルチャーとして国内外を問わず浸透してきたこの四半世紀。ジャパニメーションは、日本が世界に誇る産業の一つとして成熟したように感じる。そして、その数多くの作品で日本のポップスが使用され、海外リスナーからも強く支持されるようになった。そして、ストリーミングでの音楽視聴が一般的になった近年、海外でも日本の音楽を手軽に楽しむことができるようになり、今では日本アーティストの海外進出の一つの突破口として、アニメのテーマソングの重要度は年々大きくなっているような印象も受ける。

 そんな状況の中、LiSAやAimer、米津玄師などを擁するソニー・ミュージックエンタテインメントが、この春に海外での活動を視野に入れたアーティストを生み出す新規オーディション『The World Stage』を立ち上げた。同オーディションでは世界を射程に、グローバルな活躍が期待できる新しい才能を持った人材を募っており、グランプリの受賞者には2024年のデビューが決定している。

 『The World Stage』を運営するソニーミュージックのスタッフは、近年のアニメと紐づいた楽曲のヒットについて次のように話す。

「アニメによって日本の音楽が海外でも認知されるようになった反面、アーティスト自体の認知はなかなか上がらず、活動が点になってしまっているような状況です。例え単発でヒット曲が生まれたとしても、それがアーティスト自体の知名度の向上や他の楽曲も聴いてくれたり、ライブに足を運んでくれるような根強いファンに繋がるというかというと、そういうわけでもない。今はアーティストとリスナーの接点が持ちづらい状況ですが、今後は世界のユーザーがアニメを見ているという意識の上で、アニメ関連の楽曲制作や活動の基盤を作ることが重要だと考えています」

 アニメ作品をきっかけに海外における活動やヒットを恒常的に定着させた例は少ないのが実情だ。ストリーミングサービスの定着により、楽曲単位で手軽に音楽を楽しめるようになった一方で、ミュージシャンやアーティスト単位での海外認知はまだまだハードルが高く、恒常的なワンマンライブやコンサートイベントの開催は現在も難しい。それはアーティストの海外進出の大きな課題となっているようだ。

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