ユーマ代表 弘石雅和×ナイツ 塙宣之が語り合う“YMO愛” テクノ屏風からヤホー漫才まで、受け継がれるクリエイティビティ
「“細野ネタ”が思ったよりもウケなくて、内心焦ってました(笑)」(塙)
――ナイツの通称“ヤホー漫才”(会話のテンポをキープしながら、塙が固有名詞を言い間違え、相方の土屋伸之がツッコミを入れるスタイル)は、YMOの音楽がヒントになっているとか。
塙:やっぱり影響はあると思います。2000年にナイツを結成して漫才を始めたんですけど、いろいろやっても上手くいかなくて。その頃にYMOを聴き直して、やっぱりいいなと思い、自分が気持ちいいと感じるテクノのテンポで漫才をやってみようと。僕が何か言ったら土屋がすぐさまツッコむという感じなんですけど、土屋自身は音楽に興味がないからこそ、僕が言う通りに上手くやってくれて、何とか形になっていきました。でも、土屋もツッコミを20年以上やってるわけだし、僕も上手くなってきてるから、昔のようなヤホー漫才のリズムではないんですけどね、今は。
弘石:僕は以前から“ヤホー漫才オーケストラ(YMO)”のファンで、“ナイツ・エイジ”なんですよ(笑)。漫才の話で思い出しましたけど、僕が中1の頃はヤンキー、テクノのほかに、漫才ブームもあって。『THE MANZAI』(フジテレビ系)というお笑い番組にYMOが出て、トリオ・ザ・テクノという名前でネタをやったんですよ。
塙:ええ、観たことあります。
弘石:「そして今度は、音楽をやってる人たちが漫才をやるんだ!」とビックリして。『増殖』(1980年)にスネークマンショーのコントが入ってますが、あれもかなりブラックユーモアですよね。今だったらコンプライアンスに引っかかりそうな内容もありますが(笑)、あれを小中学生が聴いてたわけですから。
塙:僕はスネークマンショーを知らなかったので、『増殖』を聴いたとき、「なんでコントが入ってるんだろう?」と不思議に思ってました(笑)。スネークマンショーが伊武雅刀さん、小林克也さんなどのユニットだと後からわかって。もともとはラジオ番組から始まっているんですよね。『増殖』のジャケットを見たときも、最初は誰が映ってるのかわからなくて、細野さんを「景山民夫さんかな?」と思ってました(笑)。
弘石:確かにちょっと似てますね(笑)。
――ナイツは2017年、細野さんのコンサート(『初夏ツアー2017』)の前座を務めたこともあるんですよね。
塙:まさか細野さんのコンサートで、“細野ネタ”をやるとは思ってませんでした。年配のお客さんが多かったせいか、思ったよりもウケなくて……漫才のテンポが狂うかと思うほど内心少しだけ焦ってましたけど(笑)。
弘石:そうなんですか。僕も現場で観させてもらいましたが、すごく面白かったので意外です。
塙:ありがとうございます(笑)。あと話は変わりますけど、(弘石が着ている)YMOのシャツ、羨ましいです。なかなか手に入らないんですよ。少し黄ばんだやつはメルカリにもあるんだけど(笑)、すごくキレイに保たれていますよね。
弘石:塙さんにお会いするので、正装してきたんですよ。中学生のときからずっと欲しくてたまらなかったんですけど当然買えなくて。仕方ないから、当時は白いシャツにマジックでYMOと書いて着ていました(笑)。
塙:やってますね〜。
弘石:今着ているシャツは2003年に発売された復刻版なんです。もともとは1980年に発表された、幸宏さんがデザインされた「BRICKS」ブランドのシャツですね。
塙:僕はそこまで集められてないんですけど、清水ミチコさんの弟・清水イチロウさんもYMOマニアで、特に細野さんの大ファンらしくて。ライブを観て、「細野さんと同じ靴が欲しい」と思って自分で調べて買ったんだとか。
弘石:収集家の方もいらっしゃいますよね。昨年末、YMOとも仕事をしているライターの吉村栄一さんに、都内にあるYMO好きの方がやっている会員制のスナックに連れていってもらいました。YMOの歴代のツアー衣装やポスター、Prophet-5(YMOも使用していたアナログシンセ)などが置いてあって。
塙:へえ〜。YMO居酒屋だ!
弘石:そうなんですよ。店主の方は50代で、長年、YMO関連のものを買い集めていらっしゃって。今の若い世代からも、YMOの影響を感じることがあります。たとえば今、中国でテクノが流行ってるんですけど、すごくレベルが高いんですよ。北京や上海のアンダーグランドの電子音楽などもすごく面白いんです。
塙:若い人たちはどこでYMOを知るんですかね?
弘石:テクノに興味を持って、YouTubeなどで掘っていくことが多いみたいですね。戸川純さんに憧れて、北京から東京に来て音楽活動をしている静電場朔というアーティストもいて。ユーマでも、アジアの若いアーティストのレーベルを作ろうと思っているんですよ。
塙:細野さんが好きで、はっぴいえんどをテーマにした漫画を描いた台湾の漫画家さん(高妍『緑の歌 - 収集群風 -』)もいらっしゃいますよね。細野さんのラジオ『Daisy Holiday!』(InterFM)を毎週聴いているんですけど、LAUSBUBという北海道の女の子二人組のユニットがゲストで登場したことがあって。ゴリゴリのテクノなんですよ。すごく良かったです。あと、YouTubeとかにアップされている“ファミコン音源でYMOをやってみました”というのも好きです。
弘石:音楽だけでなく、いろんなジャンルの方がYMOの影響を受けていますよね。