yummy’g、“固定観念”からの脱却 『My jam』で鳴らす自分たちらしさ、音楽的ターニングポイントに迫る

2023年11月に結成すると、翌2024年には関西最大のバンドコンテストである『十代白書』で決勝大会に進出し、その後も関西圏を中心に注目を集めてきた女性3人組バンド・yummy’gが、初のミニアルバム『My jam』をリリースした。これまでリリースしてきた2作のEP『How was it?』と『What's up!?』ではアヴリル・ラヴィーン的なポップパンク色の強いスタイルを見せてきた彼女たちだが、昨年8月からの3カ月連続配信リリースを経て作り上げた今作は、よりオルタナティブなタッチを強めた新境地へと足を踏み入れる意欲的な作品となった。
この明らかな変化はなぜ起きたのか? メンバー3人に話を聞いてみると、そこには怒涛の勢いで突っ走ってきたここまでの道程のなかで抱いていた苦悩があった。より自分たちらしい音楽を、自分たちらしく鳴らしたいという思いが、サウンドの面でも歌詞の面でも結実したのがこの『My jam』なのだ。そんな作品を携えて、yummy’gは3月、地元・大阪での初ワンマンライブに挑む。(小川智宏)
yummy’gはどうあるべきかーー葛藤の2年目を経て見つけた自分たちの形
――最新作『My jam』はいい意味で今までのyummy’gのイメージを覆す、すごく幅の広がった作品になったなと思うのですが、皆さんはどんな手応えを感じていますか?
ARISA(Ba):レコーディングもサウンドにこだわりながら進めていきました。いつもと違う場所でレコーディングしたし、アルバムに入れる曲も全員で相談しながら作っていって。結構新しい感じになったかなと思います。手応えはめちゃくちゃありますね。
とも(Dr):これまでずっと同じところで録らせてもらっていたんですけど、今回レコーディングをしたのが初めての場所っていうのもあって、気持ちもサウンドも心機一転というか、新しい感じでできたのがめっちゃいいなと思ってます。あと、『My jam』っていうタイトルには、自分の好きなものやお気に入りのものを詰め込んだっていう意味もあるし、“ジャム”って煮詰めるものなので、作品もしっかりこだわって煮詰めて、納得いくところまで作れた作品かなと思います。
――ASUKAさんはどうですか?
ASUKA(Vo/Gt):さらにレベルアップできた曲たちやなって。今までのyummy’gっていう固定観念を取っ払って曲を書いてみたら、今までと違うベクトルのいいものができたって感じです。

――曲についてはあとでじっくり聞きたいんですけど、その前にバンドのこれまでについても教えてください。結成から2年ちょっとぐらい、『十代白書』から始まって、すごいスピード感でここまできた印象があります。自分たちとしてはどうですか?
とも:1年目はすごいスピードで。私とベースのARISAはほんまにバンド自体が初めてやったんで、もうめちゃめちゃ一瞬やったし、それこそちょっと大きめのステージのオープニングアクトに立たせてもらったりとかして、いろいろな意味で挑戦の年やったなと思います。でも2年目はそれにも少し慣れてきて、1周経験したからこそ考えないといけないことというか……自分たちのなかで「これは正解で、これは不正解」っていうのが出てきて。悩んだ年やったかなって思います。
――悩みというのは?
ASUKA:2年目の後半ぐらいから「yummy’gってどうあるべきやろ」みたいなことでいっぱい悩み始めて。でも、正解じゃないけど「こうしていけばいいんじゃないか」みたいなものが今年になってやっとわかってきたんで、今年はそこに近づけたらいいなと思いつつやってます。
――なるほどね。そもそもなんですけど、このバンドはどういうふうに結成されたんですか?
ARISA:全員専門学校が一緒なんですけど、私とドラムのともが同じ学年やって、ボーカルのASUKAだけ、学年で言ったら3つ上かな? 先に学校を卒業してたんです。で、私とともが在学中の時に「バンド組みたい」ってなって、ボーカルをずっと探してて。そのタイミングでちょうどASUKAのバンドが解散したのもあって、担任の先生が繋げてくれたというか。

――ではASUKAさんからすると、後輩から誘われたって感じだ。
ASUKA:そうです。担任の先生が「めっちゃやる気ある子おるからやってみいひん?」って誘ってくれて。で、会ってスタジオ入ったら「めっちゃいい!」って。
とも:それで気づいたら続いてたみたいな感じ(笑)。自分は専門学校に入った時は4ピースのギターロックをやりたいと思ってたので、3ピースっていうのも想像してなかったし、ガールズバンドっていうのも全然想像してなかったんですけど、音を合わせた時に「こっちの方が向いてるかも」って直感で思いました。
――これまでのyummy’gはポップパンクっぽい要素が強かったじゃないですか。その音楽性はどこから出てきたものなんですか?
ASUKA:バンドを結成する時に誘ってくれた先生が、ちょうどコロナ禍が明けてまたライブとかが盛り上がる時期に入るから、「アップテンポでハッピーなものをイメージして曲を書いて、それをバンドの色にしていった方がいい」みたいなアドバイスをしてくれたんです。で、それをちゃんと守って書いたらこうなったっていう感じでした(笑)。
ARISA:自分もポップパンクみたいなの全然聴いてなくて。でもASUKAが持ってくる曲を聴きながら「あ、こういう感じね」みたいなのをちゃんと勉強してっていう感じでしたね。
――ASUKAさんの音楽的なルーツというとどういうところになるんですか?
ASUKA:yummy’gやったら、それこそアヴリル・ラヴィーンとか、ウェストコーストパンクがルーツになってるんですけど、自分自身は洋楽でもめっちゃゆっくりな曲とか、日本やったらTempalayとかが好きで。
――ともさんは?
とも:私は洋楽がまったく聴けなくて。音源で音楽を聴くっていうよりライブハウスに行くのが好きなタイプなんで、Blue Mashとかハク。とか、不眠旅行とかが好きでした。ライブハウスバンドやったら基本どんなジャンルでも聴いたけど、ちょっと洋楽は本当に聴けなくて。yummy’gが始まってから聴き出して、今では結構好きって感じです。Knoxっていうアーティストがいるんですけど、洋楽やけど聴きやすいから好きですね。

――ARISAさんはどうでしょう?
ARISA:自分は、バンドっていう存在を知ったのがめっちゃ最近なんです。ちょうど高校生ぐらいの時にマカロニえんぴつとSaucy Dogが高校で爆流行りして、そこで「これってバンドっていうんや」みたいな。それまではクラシックとかジャズとかしか聴いてなかった。あとはカラオケで歌うために西野カナとかを聴く、みたいな。
――クラシックとジャズを聴いていて、カラオケのために西野カナを聴いてたってこと?
ARISA:ほぼそんな感じです。だから日本のトップソングぐらいしか知らへんくて。でも楽器に触れたいと思い始めてからバンドを知るようになって。洋楽とかもめっちゃ勉強してます、最近。
――すごいね。そういう3人が集まって、あの最初のEPみたいな音楽をやってたっていうのは、ちょっとユニークかもしれないですね。
全員:(笑)。

yummy’gの音楽に滲む翳りや憂い、新境地を拓いた「PΣAK!」
――でも、今までの作品を聴いていて思っていたことがあって。西海岸パンクみたいな音楽って、カラッとした印象というか、気持ちいい風が吹いてて、太陽が降り注いでて、ヤシの木が揺れててみたいなイメージじゃないですか、一般的には。でもyummy’gの音楽は、それとは違うものが混ざってる感じがすごくあるなと。もちろんアッパーだしポップなんだけど、それこそASUKAさんの歌を聴いていると、どこか翳りや憂いを感じたりもしていたんですよね。そのギャップがおもしろかったんですけど、今作はそこがバチっとハマった感じがする。
ASUKA:そういうパンク的な音楽はyummy’gを始めてから知ったっていうのもあって、「この方向性でこれ以上、いろいろな人が求めるいい曲が書けるんかな」ってなって。その時に、思い切って自分が好きなテイストも入れた、明るいだけじゃない曲……『My jam』の中で言ったら「PΣAK!」とかを作って、2人にデモを送ったんです。「よくない」って言われるかなと思いながら送ったんですけど、「超いい!」って言ってくれて。2人がいいって言ってくれるんやったら、もっと曲の振り幅を広げられるなと思えて、そこからどんどんいろんなところに手を出していけました。
――状況としては勢いがどんどん増しているところだったと思うんですけど、そこで「これ以上いけないかも」と思っていたんですか。
ASUKA:そもそも自分は全然アッパーじゃないタイプなんで、そのギャップにめっちゃ悩んだし、どうするのが正解なんやろなみたいなことはずっと思いながらやってました。
――2人はASUKAさんから「PΣAK!」のデモが送られてきた時にどんなことを思いました?
とも:サビがめっちゃキャッチーで、もともとはワンコーラスしかなかったんですけど、その後フルコーラスが送られてきた時に「あ、そっちに進化するんや」って思って、「めっちゃいい!」ってなったのを覚えてます。
ARISA:「PΣAK!」は、個人的にはボーカルが歌う時のグッとくる感じがめちゃくちゃ好きで。これは絶対にライブでも音源でも強いなっていうのをめっちゃ感じました。
――今回のミニアルバムに入ってる曲は、全部それ以降にできた曲たちなんですか?
ARISA:いや、ちょっと前のもあるよな。去年の8月から3カ月連続リリースで配信してた曲も入れてるんですけど、「2L8」とかはめっちゃ前に録ってたんです。
――たしかに「2L8」は狭間というか、移り変わっていく時期の曲っていう感じがしますよね。
ASUKA:あれはデモができたのが去年の1月とかでした。
――その辺から徐々にシフトチェンジが起きていたということなんですね。
ASUKA:そうですね。



















