SG、LDH Recordsで目指す“世界一自由なアーティスト” 音楽で生み出したいボーダーレスな繋がりへの意欲も語る
日韓ハーフのシンガーソングライター SG(読み:エスジー)。2020年、音楽活動のフィールドをYouTubeとTikTokに移して以降、日本語と韓国語を織り交ぜて歌う独自の歌唱法のカバー動画が大きな注目を集めた。また並行して、オリジナル曲の発表も次々と行い、2021年4月リリースの3rdシングル曲「僕らまた」は、リリースから時間を経る中で少しずつ、しかし確実に支持を集め、今では「令和の卒業ソング」の一つとして定着している。
3月22日渋谷 Spotify O-EASTにて開催された初ライブ『SG 1st Concert “FINALE” #SGproject』で、SGはLDH Recordsとタッグを組み、自主レーベル SUPERGENIUS Entertainmentを設立し新しいスタートを切ることを発表した。
SGは、日本で生まれ、生後3カ月のときに韓国に移り住み、それ以降は高校生になるまで韓国で育った。そして、16歳の頃に日本での生活を始めた。はじめに、音楽との出会いについて聞いた。(以下、発言はSGへのインタビューによるもの)
「韓国の高校でいじめに遭って、もうやってらんねえって日本に引っ越してきたんですけど、日本に来た瞬間から、音楽に対してすごく開放的な国だなと思って。当時はアニソンをめっちゃ聴いてて、いろいろな日本のアーティストを聴いていくうちに自然とバンドの音楽が好きになっていきました。それより前はずっとK-POPやEDMを聴いていたんですけど、バンド文化圏にはまっていくうちに、次第に自分もバンドをやりたいと思うようになり、すぐにギターを始めました」
その後、彼は高校時代の友人からカラオケに誘われたことをきっかけに、歌を歌うことの喜びに目覚め、また、大学時代の先輩からボーカリストとしてバンドに誘われたことから本格的に音楽活動を開始する。そして、2020年のコロナ禍突入を機にバンドの活動にブレーキがかかってしまい、新しい発信の場所として選んだYouTubeでカバー動画を投稿し始めたことが現在のSGとしての活動に繋がっていく。
SGは、自身が人種による差別に苦しんできた経験から「“Music has no borders.” ―音楽には国境がないことを証明する」というテーマを掲げて音楽活動を行っている。このテーマについて、彼は次のように語った。
「僕からしたら『音楽には国境がない』ということは、証明するものというよりも紛れもない事実なんです。そして僕は、その事実を素晴らしいものだと思っていて。僕自身、いじめに遭った過去があるんですけど、例えば、いじめる人もいじめられる人も、みんなBTSが好きだったりして、音楽の前では『君も僕もBTS好きじゃん、それだったらもういじめなんてくだらないことどうでもよくない?』と思えるんですよね。音楽には絶対にその力があると信じているので、それを僕のモットーにしようと思ったんです。僕としては『音楽には国境がない』のは当たり前のことだから、すごく強い意志を持ってこの言葉を掲げているわけではなくて、もっと自由に音楽を通して友達になろうぜっていう感覚ですね」
「“Music has no borders.” ―音楽には国境がないことを証明する」を最も象徴しているのが、2022年6月から始動したプロジェクト「#SGproject」である。このプロジェクトは、世代やジャンルの異なる様々なアーティストをゲストに迎えたフィーチャリング楽曲を毎月配信するもので、これまで、Novel Core、鈴木鈴木、Rude-α、Aile The Shota、吉田凜音、りりあ。、竹中雄大(Novelbright)が参加している。
「声をかけたのは、その時々で一番連絡を取り合っていたり、一緒に曲を作ってみたいなって思っていた人たちですね。曲の中に僕が歌う韓国語が入ることもあって、まさに音楽を通してボーダーを越えて交流することができている感じがすごくします。このプロジェクトを通していろいろな人たちと一つの音楽を作ることができたという事実が、僕にとってはかけがえのない宝物です」
3月22日、「#SGproject」でコラボレーションしたアーティストをゲストに迎えた初ライブ『SG 1st Concert “FINALE” #SGproject』が開催された。この公演のタイトルには、「FINALE」という言葉が冠されていた。その真意について彼は次のように語った。
「今までの僕の活動を見せて、そして一度終わらせるという感覚でした。ファンの方が聞くと悲しむかもしれないんですけど、僕は常に、いつ辞めてもいいような覚悟で活動をしていて、それは今回のライブについても同じです。もしこれで僕の音楽活動が終わったとしても、もし仮に明日死んだとしても悔いのないように全部を出し切るという気持ちを込めたタイトルです」
続けて彼は、自身の音楽活動にかける想いについてこう語った。
「複雑なんですよ。音楽活動を辞めたいって思ったことが何度もあって。周りからのプレッシャーやファンからの期待を受けると、僕自身、弱くて耐えられなくなってしまうことがあるんです。でも、いざ音楽をやるとやっぱり楽しいんですよね。いつも僕の中で、こうした2つの気持ちが喧嘩しているんです。でも結局いつも、自分の曲に『うん、やっぱりやろうよ』と背中を押される気持ちになるんですよね。それに、聴いてくれるみんなの笑顔を見たり、みんなからの『いいじゃん』っていう声を聞くと、やっぱり頑張ろうって思えます。だから、みんなに助けられて、そして僕が歌うことでみんなを助けて、そうやって手を取り合いながら歩んでいきたいなと思います」