Tani Yuuki×片寄涼太(GENERATIONS)特別対談 独創的な眼差しが交差する「運命」制作秘話や、互いの交流を語り合う

Tani Yuuki×片寄涼太 特別対談

 GENERATIONSの片寄涼太が歌う「運命」と、Tani Yuukiによるそのセルフカバーバージョンの2つのMVが同時公開された。いずれも同じストーリーを別々の角度からワンカットで撮影しており、本人たちも出演。公開を機に2人の関係に大きな注目が集まりそうだ。

 昨年放送されたテレビドラマ『運命警察』(テレビ東京系)の挿入歌としてTaniが書き下ろしたこの曲は、片寄演じる主人公・福山七瀬が「生前にTikTokでバズらせた」という設定で、ドラマ内でも重要な役割を担った一曲。夢を追いかける人々の背中を押すような歌詞と、思わず口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディとの絡み合いが絶妙で、これまでに「Myra」や「W/X/Y」など多くのヒット曲を生み出してきたTaniの作曲力が遺憾なく発揮されたと言える。

 この曲を聴いた片寄は「これまでの芸能生活が救われるような思いになった」らしく、ドラマの放送開始日直前にTaniに向けて感謝のダイレクトメッセージを送ったのだとか。一方で、Taniも「運命」は「僕の中でも大事な曲になった」といい、3月15日にセルフカバーを配信リリースした。結果的にこの楽曲提供は、両者にとっても重要なコラボレーションとなったようだ。

 今回は、そんな片寄とTaniの対談をセッティング。お互いの印象をはじめ、楽曲に込めた思いやMV制作秘話、お互いに憧れる点などを語ってもらった。グループとソロとで全く異なる活動スタイルに励む2人だが、制作に向かう情熱的な姿勢にどこか通じ合うものを感じるコンビであった。(荻原梓)

「夢を追いかける人たち全員を肯定してあげられる歌詞に」(Tani)

――2人はこの「運命」以前に面識はあったんでしょうか?

Tani Yuuki(以下、Tani):実はお会いしたことがなく、しかも直接お会いできたのも楽曲提供させていただいた後、時間が経ってからで。最初の接点は片寄さんから、ドラマの放送前日にいただいた丁寧なダイレクトメッセージでした。

片寄涼太(以下、片寄):「運命」という曲に、自分自身のこれまでの芸能生活が救われるような思いになったので、その感謝の気持ちを伝えたいなと思い、直接メッセージを送らせていただきました。

――こうして実際に会ってみてお互いの印象に変化はありましたか?

Tani:会う前はちょっと怖いのかなというイメージも持っていたんですけど、実際は全然そんなことなくて(笑)。感謝のメッセージをくださったり、ラジオにサプライズ訪問してくださったりと、とても優しくて、イメージが全然違いました(笑)。

Tani Yuuki

片寄:GENERATIONSメンバーの小森隼くんがレギュラーで出演させていただいている『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)のゲストにTaniさんが出演された際、僕もサプライズで出たらすごく驚いてくださって。

Tani:一瞬、白馬が見えたんですよ。

片寄:それは言い過ぎでしょ(笑)。

Tani:あの時はびっくりして固まっちゃって「なんでいるんですか!?」としか言えなかったですね。

片寄:僕もTaniさんのことはそれこそ若くてイケイケな感じというか、誤解を恐れずに言えば、チャラついた感じでなければいいなあなんて思っていたんですけど(笑)、お会いしたらすごい好青年でした。もちろんTikTokで何曲もヒットさせていますし、すごくいい曲を書く方だなと思っていましたけど、まさかそんな方とこうやってご一緒できるとは思っていなくて、ドラマの企画とはいえ最初はワクワクしていましたね。

片寄涼太

――曲作りはどのように進めていったのでしょうか?

Tani:脚本を手掛けられた鈴木おさむさんのラジオに一度ゲストとして出演させていただいたことがあったんですけど、その放送後に「実はこういうドラマをやろうと思っていて、挿入歌を作ってくれませんか」というお話をいただいたのが始まりです。元々僕の楽曲を聴いてくださってたみたいで、興味を持ってくれていたそうで。その後、おさむさんと直接会議をして、「運命」というタイトルや、“夢追い人”について書いてほしいというお題をいただいたりして、そこから作り上げていきました。

――夢を追う人全員に当てはまる歌詞ですよね。

Tani:ドラマ上ではオーディションを勝ち抜いて優勝したヒロインのデビュー作という設定ではあるんですけど、僕自身も“夢追い人”の一人ではありますし、片寄さんが歌う楽曲としても成立するように、色んな人の思いや背景を重ねられるようなものにしたいと思って曲作りしていきました。

――歌詞には弱音のようなフレーズが所々で登場して、すぐにそれを否定してあげますよね。ある種“弱い自分”と“強い自分”が一曲の中でせめぎ合っているという、この構成が本当に見事だと思いました。

Tani:このフレーズは音楽の専門学校に通っていた時期に、「この先音楽で食べていけるのか」「このオーディションを受けた先に何があるのか」「本当にやりたいことは何なのか」と葛藤していた僕自身の心の中にあった言葉でもあるんです。でも、片寄さんやドラマに関わっていた人たちも、誰しもがこういう思いを抱いてるんじゃないかと思ってて。みんな心のどこか隅っこでこういう言葉が口を衝いて出てしまう瞬間はあるはずで、それをその後の歌詞で否定してあげる。そうすることで、夢を追いかける人たち全員を肯定してあげられるんじゃないかと思ったんです。

――ドラマ上では「TikTokでバズった」という設定ですが、そういった意味で意識したことはありましたか?

Tani:あまり意識はしていないです。そもそもおさむさんが僕に依頼してくれたこと自体が、今のSNSを活用している世代のアーティストだからということや、ドラマのストーリーや役柄的なことを考慮して、ぴったりハマると感じてくださったからとのことで、僕としては特に意識せず、いつも通り曲を作っただけなんです。逆に「バズらせよう」と思って作った曲は、意外とバズらないもので(笑)。

片寄:そうなんですか、意外です。歌詞を読むとめちゃくちゃ緻密に作られているじゃないですか。タイトなスケジュールだったのに、最初はすごい曲が上がってきたなと驚きました。いつもどのくらいのスピード感で作ってるんですか?

Tani:今までの最短は5日間ですね。早い人は数時間でできる人もいるので、一般的には遅い方だと思っています。一個一個のワードにすごく時間をかけるんですよ。というのも、昔は僕自身がよければそれでよかったんですけど、今は片寄さんだったり、提供する相手のこと、聴いてくれる人のことなど、色んな立場の人のことを考えるようになって。この曲を聴いた時に「どういう受け取り方になるんだろう」みたいなことをものすごく考えるようになったんです。だから時間がかかるんだろうなと思います。

片寄:受け取り手に対して配慮することは大事なことですよね。プロの仕事だなと思います。しかも生きていく上での苦悩や葛藤にもちゃんと向き合い続けているし、今の話だと学生時代のルーツも含めてしっかりと作品に落とし込んでる。そこが素晴らしいですよね。アーティストの鑑だと思います。それにTaniさんの曲って、普段はあまり使わないような言葉も多いじゃないですか。そういうのってどうやって思いつくんですか?

Tani:たとえば「運命」の〈弥の明後日〉はスタッフさんにも「これはなかなか出ないよね」って褒められたんですけど、いつも普通に使ってたんですよね。明日じゃなくて〈弥の明後日〉なのは、晴れる予感、つまり希望を抱ける未来が、明日だとあまりにも近すぎるなと思って。全然予想のできない先の未来に希望を持ち、それを何度も裏切られる葛藤を歌いたかったからなんです。

片寄:へえー! MV撮影の時に役者のみなさんと話してたんですよ。「弥の明後日ってこんな字書くんだね」って。

Tani:小説みたいな言い回しが多いともよく言われるんですけど、それは僕が学生の頃に読んだ本とかが、もしかしたら蓄積になっているかもしれないです。あとはほとんど連想ゲームですね。

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