BILLY LAURENTが目指す、ピンチをチャンスに変えるラッパー像 音楽のルーツから<LDH Records>でのリリースに至るまで

BILLY LAURENTが目指すラッパー像

 「I LIKE IT (feat. BBY NABE)」「CHODAI (feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」などがTikTokを中心に話題を呼んでいるラッパー BILLY LAURENTが、<LDH Records>から初のリリースとなる新曲「Go Sign」を全世界配信リリースした。この曲は、自身がアーティストとしてスケールアップするために、もう一度気を引き締めて前に進むことを決心した思いをリリックに込めたアップテンポなナンバー。なおMVでは、彼が敬愛してやまない同郷のラッパー ELIONEをはじめ、親交の深いアーティストが集結したフレッシュかつ賑やかな映像に仕上がっている。PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBEの作詞チームの一員として、他アーティストへの楽曲提供なども積極的に行うBILLY LAURENT。そのルーツやこれまでの活動の道のり、そして新曲「Go Sign」の制作エピソードなどじっくりと聞いた。(黒田隆憲)

SALUやELIONEへの憧れで目覚めたヒップホップ

ーーBILLYさんが音楽に目覚めたきっかけは?

BILLY LAURENT(以下、BILLY):親から聞いた話によると、いつもテレビの前で歌って踊っていたらしくて(笑)。物心がつく前から音楽が大好きだったみたいです。父親からの影響が大きく、家の中や車の中で流れていた山下達郎さんや、久保田利伸さんが特に好きでしたね。

ーーピアノも習っていたんですよね?

BILLY:はい。母親の親友がピアノの先生で、よくそこで遊んでいるうちに気づいたら習うようになり、発表会で演奏するようになっていたんです(笑)。小学校に入学するくらいまで続けていましたね。

ーー音楽に囲まれた環境だったのですね。ヒップホップに目覚めたのは?

BILLY:中2の頃、サブスクのプレイリストにセレクトされていたSALUさんの「Swim In My Pool」を聴いて、ボーカルの表現方法、例えば感情のにじませ方やラップのフロウなど、全てが新しく感じて「こんな人がいるんだ!」と衝撃を受けたのがきっかけでした。当時ヒップホップ好きの友人が学校に一人いて、彼のお父さんが音楽にものすごく詳しかったんですよ。それで家へ遊びに行くたび、主に日本のヒップホップを色々聴かせてもらったり、アルバムを貸してもらったりして。僕は静岡県沼津市出身なんですけど、その友人のお父さんから「地元にかっこいいラッパーがいるんだよ」と聞いて、そのうちの一人がELIONEさんだったんです。彼のライブに遊びにいくうちに、どんどんヒップホップにハマっていきました。

ーーそこから自分でもラップを始めたそうですね。

BILLY:まずは、その友人を含めた数人でお年玉などを持ち寄り一緒に機材を買いました。今思うとパソコンもマイクも本当にショボかったんですけど(笑)、それでレコーディングするところから始めました。といっても、シングルのカップリング曲として入っているインストバージョンをパソコンに取り込んで、そこに自分たちで「あーでもない、こーでもない」などと試行錯誤しながらラップを乗せたのが曲作りの始まりでしたね。

ーー沼津から上京したのは高校を卒業してから?

BILLY:そうです。大学進学に合わせて東京に引っ越しましたが、その時にはすでに「音楽を本格的にやろう」と思っていました。初ライブは高2の時だったんですよ。今思うとお遊びのような内容だったのですが(笑)、その時に友人とかがたくさん見に来てくれて、喜んでくれたのが忘れられなくて。高3になって進路を考えた時、自分の中で音楽がものすごく大きな存在だと気づいたんです。「これで勝負したい!」と。ELIONEさんを追いかける形で上京することになったので、その時はもう自分の進路について迷いはありませんでした。

ーー上京して、具体的にはどんな音楽活動を行っていたのですか?

BILLY:とりあえずどこに発表するでもなく、ひたすら曲を作りまくりました。未成年の頃はライブも頻繁にはできなかったんですけど、それでも中目黒solfaのデイタイムに自分でライブを定期的にオーガナイズしていたこともありましたね。大学の友人や地元の友人、界隈で知り合った音楽仲間が集まるような場所を作りたかったのと、自分たちの作品をアウトプットする場がほしかったんです。

Billy Laurent - CHODAI feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY (Official Music Video)

「日々生きている中で感じる“自分の言葉”を大事にしている」

ーー影響を受けたアーティストとしてカニエ・ウェスト、ジャスティン・ビーバー、そしてELIONEさんを挙げていますね。

BILLY:たくさんの方に影響を受けていますが、3人挙げるとしたらその方たちですね。カニエ・ウェストは問題児みたいに言われることが多いじゃないですか。でも僕は彼の人柄から大好きで。ドキュメンタリーを見たこともあるけど、音楽に対する熱量が半端ない。そして生み出す音楽、アートへの造詣の深さ、ファッションに対するセンスなど全てが大好きです。「カニエ」という生き物にとにかく魅了され続けていますね。

 ジャスティン・ビーバーは、僕が思う「スーパースター」の定義を満たしている人。ELIONEさんは……先輩でもあるし音楽仲間でもあるのでちょっと照れくさいのですが(笑)、彼の音楽に憧れてラッパーになろうと決心したわけですし、自分自身のDNAといっても過言ではないです。常に挑戦している背中を後ろから見ていて本当にかっこいい、アニキ的な存在として人柄もすごく尊敬していますね。

ーーPSYCHIC FEVERの作詞チームの一員として、他アーティストへの楽曲提供なども積極的に行い、ご自身のリリックも、とてもユニークなワードセンスが話題となっています。リリックを書く上で心がけていること、アイデアやモチーフのインプット方法などを教えてください。

BILLY:リリックに関しては、とにかく「自分の言葉」を大事にしています。日々生きている中で感じたことや、実際にあった出来事、人から聞いた話とかいろいろなインスピレーションがあって。それをなんとなく覚えておいたり、軽くメモしておいたりして、その中からまずテーマを決めています。どちらかというと、根を詰めて書くというよりはカフェなどでのんびりしながら書いたり、友達とかとスタジオでふざけた話で盛り上がって爆笑しながら書いたりすることが多いんです。特に決まりはないのですが、リラックスした状態で書くようにしていますね。

 自分以外のアーティストに提供させていただくリリックに関しても同じで、その人の言葉になるように書くことを心がけています。人となりや好きなカルチャー、バックボーン、センスの部分も含めて「その人」のことをものすごく考えて、その人から出てきそうな言葉を探していますね。

ーー自分以外のアーティストに歌詞を提供することで、自分のリリックにも何かしらフィードバックはありますか?

BILLY:めちゃくちゃあります。普段とは違う視点で物事を見て、そこから言葉を紡ぎ出すことで自分の中に新たな視点とボキャブラリーが備わるというか。

ーー今回、<LDH Records>からは初のリリースとなる新曲「Go Sign」は、どのように作っていったのですか?

BILLY:曲名の「Go Sign」は「(“進め”という)標識」や「信号」みたいな意味があるんですけど、いろいろな縁があってELIONEさんと制作に入り、その楽曲がもしかしたら<LDH Records>の方に聴いてもらえるかもしれないという状況になって、「ちょっとこのままじゃまずい」「ここでしっかりスキルアップして頑張っていかないと」と思ったんですよ。それがまさに自分にとっての「Go Sign」だなと思ったことが、この曲のテーマになっていますね。

ーー〈いいねにフォロワーとか再生数より 大事にしたい 今がサムネイル〉というフレーズが印象的です。

BILLY:今は多くの人がSNSを利用し、「いいね」やフォロワーの数を気にする時代だと思っていて。僕も気にならないと言ったら嘘になりますが、本当に大事なことって他にもいっぱいあるなって。自分の周りで起きているリアルな体験に、もっとフォーカスしていこうぜというメッセージです。

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