花譜、壮大なスケールで迎えたシリーズの大団円 カンザキイオリ卒業、新章突入を告げた『不可解参(想)』
昨年はバーチャルアーティストとして史上初となる日本武道館公演を成功させたバーチャルシンガー・花譜。3月4日、彼女の3rd ONE-MAN LIVE『不可解参(想)』が開催された。
『不可解参(想)』は、2019年から続くライブシリーズ『不可解』の完結編。このシリーズは2019年にLIQUIDROOMで行われた初のワンマンライブ『不可解』を皮切りに、その再構築版となる無観客ライブ『不可解(再)』、2nd ONE-MAN LIVE『不可解弐Q1』&『不可解弐Q2』と豊洲PITでの『不可解弐REBUILDING』などリアルとバーチャルとを横断する形で再構築を繰り返しながら開催。そして昨年行なわれた3rd ONE-MAN LIVE「不可解参(狂)」は、日本武道館を舞台にシリーズの集大成的なパフォーマンスを披露した。
今回の『不可解参(想)』は『不可解参(狂)』と対をなす配信ライブにして、約4年間続いてきたシリーズを完結させ、新たな一歩を踏み出すような公演となる。バーチャル空間に用意された「概念武道館」を出発点に、花譜が「不可解」という概念を具現化したような塔の頂上を目指して上っていく構成となっており、エリアごとに様々なテーマが設けられている。ライブ全編を通して、「不可解」というシリーズ自体を自分の足で乗り越えていく花譜の姿が浮かんでくるようなものになった。
まずはオープニング映像で過去のMVなどに登場してきた街並みが次々に映され、概念武道館の1Fからライブがスタート。バーチャル空間の武道館を舞台に、序盤は「魔女」や「畢生よ」「夜が降り止む前に」など『不可解参(狂)』と同じ曲順でステージが進む。とはいえ、舞台演出やバンドの演奏、花譜自身の歌によって変化が加えられていて、現実の武道館公演とは似ているようで異なる、パラレルワールドのような景色が広がっていた。
続いてリフトに乗り2Fに上がると「不可解」を披露。歌詞のタイポグラフィや映像演出をふんだんに使ったライブ演出と、花譜自身の震えるように感情を表現する歌声で観客を引き込んでいく。以降は概念武道館の客席いっぱいに広がるピンクのペンライトが映され、「ニヒル」や「アンサー」を披露。「アンサー」歌唱後には花譜の目の前に花道が生成され、彼女が会場の中心に向かってゆっくり歩いていくと、今度は桜の大樹がそびえたつ円形ステージ「概念武道館 大樹」を舞台に「裏表ガール」の歌唱がはじまる。花譜自身の高校卒業を記念した配信ライブ『僕らため息ひとつで大人になれるんだ。』に寄せて生まれた自身のアイデンティティにまつわる思いが表現されている楽曲を、桜の花びらが舞う中で優しく歌い上げた。
以降は花譜が巨大なエレベーターに乗り込み、会場のさらに上へ。いよいよ概念武道館の天井を突き抜けたところで頭上に巨大な塔が出現し、『不可解参(想)』というライブタイトルが登場。ここからいよいよ、概念武道館から離れて巨大な塔を昇っていくこととなる。
まずは上昇するエレベーターの中で花譜が「一緒に踊ってくれませんか?」と伝えた後、衣装を「花譜第四形態・雉」に着替えてDJパート「K.A.F DISCOTHEQUE(DJMIX)」がスタート。花譜のボイスサンプルから生まれたCeVIO AIシリーズの人工歌唱ソフトウェア「音楽的同位体 可不(KAFU)」を使用した近年のヒット曲「フォニィ」(ツミキ)や「マーシャルマキシマイザー」(柊マグネタイト)、「きゅうくらりん」(いよわ)をはじめ、彼女自身が歌唱参加したMAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」といったTVアニメ『うる星やつら』ED楽曲、カバーを投稿している「ノンブレスオブリージュ」(ピノキオピー)や「神様」(東京ゲゲゲイ)などがシームレスにミックスされ、カラフルな照明も相まってまるでクラブのピークタイムのような風景が広がっていく。
オリジナル曲とカバー曲、タイアップ曲とノンタイアップ曲、生歌と音声合成による歌唱など、今や様々な形に広がった花譜の活動の幅広さを伝えるような瞬間だった。
続いて「観測所」に到着すると、ここでは花譜の最初のオリジナル曲にして、2019年に行なわれた「不可解」でも1曲目に歌われた“はじまりの曲”として知られる「糸」を披露。その後、ゲストを迎えたコラボパートがはじまり、CIELとの「私論理」、SINSEKAI STUDIOより存流と明透によるAlbemuthとの「戸惑いテレパシー」、EMA(DUSTCELL)との「あるふぁYOU」、VALISとの「神聖革命バーチャルリアリティー」を次々に披露。