花譜、壮大なスケールで迎えたシリーズの大団円 カンザキイオリ卒業、新章突入を告げた『不可解参(想)』

花譜『不可解参(想)』レポート

 続いて衣装を「特殊歌唱用形態 軍鶏(想)」に着替えると、塔の内部に波打ち際や渋谷を思わせる夜の大都会が広がる不思議な空間に到着。ストリングスも含む10人編成の花譜バンドがホログラムで登場し、「過去を喰らう」「海に化ける」「人を気取る」の“「過去を喰らう」3部作”を披露。街頭ビジョンなどをスクリーンにする演出に加え、「海に化ける」ではらぷらすが宙を舞い、「人を気取る」では地面が割れてさらに上空へ昇っていった。

 以降はさらに概念武道館から遠く上空に離れ、「未観測地点」で「未観測」を、「臨界点」で「不可解」シリーズ完結編となる楽曲「狂感覚」を披露。

 そしていよいよ最終地点「出発の祭壇」にたどり着くと、私服衣装に着替えた花譜のもとに、デビュー以降彼女の楽曲を一貫してつくり続けてきたカンザキイオリが登場。ライブシリーズ『不可解』がスタートしてから約4年の思い出を振り返る。そしてここで、カンザキイオリから涙ながらに、所属事務所であるTHINKRおよびKAMITSUBAKI STUDIOから卒業することが発表される。

 花譜にとってカンザキイオリとは、デビュー以降のほぼすべての楽曲を提供してもらった、欠かすことの出来ないクリエイティブパートナー。花譜のこれまでのライブのエンドロールでは、つねにすべての音楽をカンザキイオリが提供してきたことが表記されており、昨年の日本武道館公演『不可解参(狂)』で、彼女が自分自身で作詞作曲した楽曲「マイディア」を披露したことで、初めてクレジットに2つの名前が記載されることになった。そんなパートナーが事務所を卒業し、ひとまず「花譜」というプロジェクトから離れることは、彼女にとってもカンザキイオリにとっても大きな出来事だったことは想像に難くない。

花譜ライブ写真

 お互いにプロジェクトを通して感じてきた思いを語り、未来への気持ちを話して披露されたのは、カンザキイオリが伴奏を担当する2人きりでの「過去を喰らう」と「命に嫌われている。」。「過去を喰らう」ではギター1本に合わせて2人で歌い、「命に嫌われている。」ではピアノひとつを伴奏にしたデュエットを披露。中でも終盤に向けて堰を切ったように感情が溢れ出す「命に嫌われている。」は思わず息を飲んでしまうほど素晴らしい瞬間だった。

花譜ライブ写真

 以降はステージに残った花譜が、「マイディア」に続き自身で作詞作曲を担当した楽曲「リメンバー」を披露。〈進むビートに乗って僕ら/いつでも繋がりあえるよ〉〈ありがとう/ねえまた歌おう〉という、カンザキイオリと花譜自身の新たな旅立ちを優しく祝福するような内容の歌詞は、様々な経験を経た今だからこそ書けたものと言えそうだ。

 そして最後は、花譜が塔最上部にある光のゲートの前に立ち、これからに向けた思いを語る。

「何もわからないまま飛び込んだこの世界は、ずっと新しいことに満ちていて、リアルとバーチャルがごちゃまぜで、私だけど私じゃないをずっと体感してきて、まだこの気持ちを言葉にするのは難しいんですけど、今ここにいて本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。(中略)自分と花譜という存在が混じり合ってきて、みなさんに伝えたいこととか、自分の言葉で言いたいことが出てきて、最初からは考えられないくらい、たくさん喋る人になりました。(中略)またたくさん、新しい景色をみんなと見に行きたいです。私とみんなの物語は、まだはじまったばかりです。みんなのことが大好きです。愛してる!」

 花譜がゲートの中に入り、新しい場所に旅立つ姿を観客が見送ってライブ終了となった。

花譜ライブ写真

 2019年8月から続いてきたひとつの物語を終えた花譜は、シンガーとして、もしくはシンガーソングライターとして、今後さらなる飛躍をしていくのだろう。また、この日のライブの最後には、佐倉綾音がCVを担当するキャラクター・エルによるナレーションによってKAMITSUBAKI STUDIOのバーチャルシンガーグループ・V.W.Pの他のメンバー、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜たちも参加する新たなライブプロジェクト「SHINKA LIVE」の始動がアナウンスされ、『不可解参(想)』がそのエピソード0であったことも明かされている。

花譜ライブ写真
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 花譜の未来にとって大切な分岐点となるひとつの物語の終わりと、新たな物語のはじまりを、最先端の技術を使って壮大なスケールで伝えるような素晴らしいライブだった。

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