カメレオン・ライム・ウーピーパイの名が国内外で徐々に知られつつある 世界を踊らせる2023年へ

CLWP、世界を踊らせる2023年へ

 このヘンテコなダンスミュージックが世界を踊らせる日も近いのかもしれない。2021年にSpotify「RADAR:Early Noise 2021」にピックアップされて以降、自分たちのペースとスタイルを守りながらも日本国内のみならず海外でも徐々に名前が知られつつあるカメレオン・ライム・ウーピーパイ(以下、CLWP)のことである。

 テクノにハウス、ロックにヒップホップ……好きなものを全部投げ込んだような闇鍋サウンドとフロントパーソンChi-のアイコニックな存在感、そして歌詞に描かれるストーリーからDIYで作り上げるビジュアルに至るまで貫かれた独特のワールド。聴けば聴くほど、観れば観るほどこんなアーティストは他にいないし今までもいなかったな、と思う。楽曲の構造はディテールを掘ればやたらとマニアックだったりエッジーだったり懐かしかったり、総じて流行を一切無視したような趣味全開ぶりだったりするのに、トータルとしては耳にこびりつくほどにキャッチー。やっぱり、このアーティストを一部の好事家だけのものにしておくのは超絶もったいない。

 プロフィール上はChi-によるソロプロジェクトという建て付けになっているCLWPだが、実際にはその音楽はChi-のアイデアをもとに彼女の「仲間」であるWhoopies1号・2号との共同作業という形で生み出されている。Chi-の脳内にある独特の世界観をライブメンバーでもある両Whoopiesが吸い上げてサウンドに仕立て上げ、そこにChi-が再び乗っかって歌詞とメロディを仕上げる。その過程で3人それぞれの解釈や理解がごちゃ混ぜになり、それがひとつの形になって楽曲が生まれる。

 ざっくりいえばそんなフローで作られるCLWPの音楽は、(あくまでChi-の内面が出発点であるという意味で)断片的なイメージや妄想で組み上げられたレゴブロックのようなブレインミュージックという側面を持ちながら、繰り返されるコミュニケーションによって最終的な楽曲になるという点でとてもバンド的でもある。もはやソロだとかバンドだとか、ユニットだとかグループだとか、誰がプロデューサーで誰がアーティストだとか、関係なく音楽が作れる時代だが、そういう意味でもエクレクティックでボーダレスなCLWPのあり方そのものがとてもモダンだといっていいだろう。

 そういう意味で昨年、とりわけ5月のEP『MAD DOCTOR』リリース以降の活動は彼女(たち)がそのアイデンティティを加速させるプロセスだったということができる。2022年下半期にリリースされた楽曲はいずれも3人以外のクリエイターとのコラボレーション。そうやって第三者の目と感性が織り込まれることで新鮮なサウンドが生まれる一方、逆説的にChi-の世界観や歌のもつ強烈な引力のようなものがあからさまになっていたからだ。そもそも2021年にTCTSとコラボした「Rich Girl」からしてそうだったが、他のアーティスト、しかも意外な取り合わせであればあるほどCLWPの個性は際立つ。ちょっとベクトルは違うが、以前カバー企画で披露したチャットモンチー「シャングリラ」のCLWPバージョンもそうだった。甘いのに凄みももっているChi-の声、情報量過多気味のサウンドメイク、そういったCLWPの要素をキープしながら、そこにひとつ客観的な視点がポンと投げ込まれることでちょうどよく中和され、いい感じに着地する……ようなイメージだろうか。

TCTS × CHAMELEON LIME WHOOPIEPIE - Rich Girl (JPN ver.)

 2022年7月に配信リリースされたのはLAのギタリスト、スティーヴン・ハリソンをフィーチャーした「Whoopie is a Punkrocker feat. Stephen Harrison」。スティーヴンはFEVER333(昨年脱退してしまったが)、Cancer Batsなどのバンドで活動してきたギタリストで、全身タトゥーだらけのクールなハードコア野郎である。その彼がSpotifyで聴いたCLWPに惚れ込み、SNSで逆オファーをしたことが今回のコラボにつながったそうだ(そういえばTCTSとのコラボも彼からのDMがきっかけだったらしい)。The Ramonesの名曲「Sheena Is A Punk Rocker」を引用した曲名からもわかるとおり、イントロの掛け声からして思いっきりパンクでロックな楽曲になっている「Whoopie is a Punkrocker」。全編にわたって鳴り響くスティーヴンのギターがゴリゴリとサウンドを牽引している。とはいえ徹底的にロックをやってますという感じではなくて、サンプリングされたシンセサウンドや力んでいるのにどこか気の抜けたようなChi-のボーカルがいいバランスで楽曲をCLWP側に引き寄せている。

カメレオン・ライム・ウーピーパイ - Whoopie is a Punkrocker feat. Stephen Harrison (Visualiser)

 一方8月にリリースされたのが「Indie Slime」。こちらでコラボしているのはトラックメイカー・プロデューサーのPARKGOLFだ。90年代のBECKだったり8ビットのゲームミュージックだったり、Whoopiesの趣味と共鳴する部分も多そうなPARKGOLFのトラックの上でCLWPの3人が遊びまくっている様子が音からも伝わってくるような曲である。イヤなこととかムカつくこととか全部シカトして狂ったように踊っちゃえばいいじゃん、という歌詞のメッセージには、ポップに弾けながらも同時に世の中への違和感や現状への異議申し立てといったパンクな精神性が滲んでいて、その打ち出し方もとてもCLWPらしい。

カメレオン・ライム・ウーピーパイ × PARKGOLF - Indie Slime (Lyric Video)

 そう、この2曲、方向性はまったくもってバラバラだが、そのバラバラな音楽スタイルをもってなお、Chi-の描きたい世界は揺るがないどころかいっそう強化されている気がする。〈意味なく踊り出そう〉と歌う「Indie Slime」と〈歌ってるだけじゃ世界変わらなそう/大体で踊ればいー〉という「Whoopie is a Punkrocker」は同じことを歌っている気がするし、それは〈しがらみ全部踊らせるGirl〉という「Crush Style」や〈暗い土の中に〉〈希望はないの〉といいながら〈腐る間もなく踊れ〉とけしかける「Mole Dancer」にも通じるものだ。なんだか居心地が悪いな、という実感と、その居心地の悪さを振りほどくためのビートやデタラメなダンス。そんなものがChi-の世界観のベースにはある。そしてそれは、2023年一発目の新曲となる「LaLaLa」(1月25日リリース)でも変わらないのである。

カメレオン・ライム・ウーピーパイ - LaLaLa (Official Music Video)

 90sヒップホップのドープなグルーヴにのせて今回CLWPが歌うのは「愛」である。〈ありったけの愛 よこして〉〈I don’t know how to love lalala...〉と、Chi-の歌はまだ見ぬ愛を探して彷徨う。〈きまってない まだ見えない Goal〉というとおり、その旅に終わりはない。そしてその旅を進んでいくために何が必要なのか……ということを彼女は〈今Check このMusic/始まりはGroovy〉という力強いラインに込めている。愛を探し求めることと、音楽に身を委ねて踊ることは同じだ、とこの曲はいっているのだ。音楽を通じてさまざまな人と出会い、知らない世界に飛び込み続けるCLWPの道程とも重なるような「LaLaLa」の風景は、斬新なコラボレーションを繰り返してきた2022年を経て、より説得力を増しているように思える。

 そして2023年、年始からはUber EatsのCMソングに「Whoopie is a Punkrocker feat. Stephen Harrison」が起用され、彼女(たち)の「旅」はさらに進んでいく。昨年12月には香港でのフェス『BPM JUNIOR - Family Sports & Music Festival』に出演、そして今年3月には世界最大の音楽ショウケースである『SXSW 2023』に参加することも決定している。TCTSやスティーヴン・ハリソンがふとしたきっかけでCLWPに出会い思わずDMを送ったように、『SXSW』でのパフォーマンスが新たなコラボレーションのきっかけになることは十分に考えられる。そうなればそこからCLWPの世界は一気に広がるだろう。その未来に備えて、今のうちにどっぷりCLWPワールドに浸かっておいてもらえれば、と思う。

「LaLaLa」

■リリース
配信シングル「LaLaLa」
発売日:2023年1月25日(水)
配信URL
https://CLWPRecords.lnk.to/LaLaLaPR

カメレオン・ライム・ウーピーパイ公式HP:
https://clwp.jp/

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