w-inds. 橘慶太と振り返るクリエイターとしての歩み 音楽を続けるために進んだ道、今後のビジョンも語る

w-inds. 橘慶太、クリエイターとしての歩み

「いい曲ができた」と思ったときに「これ良くない?」と話せる存在が大事

——そして翌年のアルバム『100』では、全曲の作詞・作曲・編曲を担当。

橘:この頃になるとかなり自信もついてましたね。基本的な理論や知識は身についていたと思うし、自分の耳がよくなっているのもわかって。トラックの成分もすぐに見えて、どうすれば自分がイメージしている音に近づくのかがわかる状態になっていました。「Time Has Gone」あたりからミックスの勉強をはじめたのも大きかったです。海外のトラックメイカーは自分でミックスまでやる人が多いし、やらなくても理論はわかっていて。

——ミックス、マスタリングまで含めて、クリエイターの個性だし、音楽性ですからね。

橘:そうなんですよね。ただ、最近は細かいところまで気づいてしまって、ちょっと困ってます。「誰も気にしないから、そんなところまでこだわらなくていいよ」って言われるんだけど、どうしても気になっちゃうんですよね。曲作りを教えてほしいと言われたら、まず「ミックスまではやらないほうがいいよ」って言ってます(笑)。それは単純に時間がかかるというのもあるけど、理論とかセオリーがわかると、教科書通りになりがちというか。なので最近は、あえて反対のことをやったりもしますね。理論上は明らかにおかしくても、耳で聴いたときの感じが良ければ、そっちを活かしたり。

——それも理論を知っているからできることですよね。

橘:確かに。理論的なことをわかっていたほうが制作のパフォーマンスが安定するというのはあります。『100』の頃からはだいぶストレスがなくなって、曲の質も上がったと思います。ちゃんと眠れるようになったし、音楽にうなされることもなく、好きなときに楽しく曲を作れるようになりました。ただ、トレンドがどんどん変わっていくので、それをチェックする必要はありますけどね。チャートに上がっている曲はどんなミックスなのか、どんなアレンジが流行ってるのか常に確認しているし、音楽制作のソフトもアップデートして。今っぽい音って、使っている機材と関係しているので。

——なるほど。トレンドとの距離の取り方についてはどうですか?

橘:流行っているものを理解しつつ、w-inds.にハマらなかったり、自分の好みじゃないときは、そっちに行かないようにしていますね。ここ数年の流れとしては、ハリー・スタイルズやテイラー・スウィフトもそうですけど、音圧を下げて、生音を気持ちよく聴かせるサウンドにシフトチェンジしていて。ただ、新体制のw-inds.がそれをやるのはちょっと違うんですよ。攻めている姿勢を示すことだったり、今の自分たちのスタイルを打ち出すことが大事だったので。今というか、ずっとそうなんですけどね。僕がやりたいことをやるのではなく、そのときのw-inds.に必要なことをやりたいので。

——楽曲制作のスキルを身につけたのは音楽を続けるためであって、やりたいことを押し出すわけではない?

橘:そうですね。事務所のスタッフからは「これからも慶太が作ったほうがいい。そうじゃないと“作れなくなった”と思われるよ」と言われるんですけど(笑)、“ひとりで制作できる”というスタイルを広げたいとは全く思ってないんです。むしろ最近は、誰かと一緒にやりたいと思っていて。トラックメイカー、トップライナー、ミックスエンジニア、僕のチームで、同じベクトルに向かって制作できるのが理想ですね。昔と違って今は僕もいろいろわかっているし、「このソフトを使って、この音をこれくらいの値にして」って言える。その状態で他の人と組むことで、もっと面白いものが作れるんじゃないかなって。

——それこそがコライトの意義だと思います。

橘:海外のコライトって、本当にそういう感じなんですよ。一人がバーッと作業したと思ったら、違う人が鍵盤でコードを弾きはじめて。トップライナーはそれを聴きながら歌詞を書いていて、「メロディもできたから、歌ってみるね」って。5時間くらいですごくクオリティの高い曲ができるんですよ。今はそれを一人でやっている状態ですからね。あと、「いい曲ができた」と思ったときに、「これ良くない?」「カッコいいね!」って話せる存在って大事なんですよ。「だよね!」って乗っていけるし、アイデアもさらに膨らむので。そういう意味では、w-inds.の新しい曲(「Bang!Bang!feat.CrazyBoy」)の制作はよかったですね。この連載で対談もさせてもらったSLAYと初めて一緒にやれたし、トップラインはJUNにお願いして。彼らとはこれからも曲を作っていきたいですね。

w-inds. 橘慶太×Hiroki対談【前編】 歌からサウンドへ、“全部できるようになりたい”気持ちが運んだトラックメイクへの道

w-inds.のメンバーであり、作詞・作曲・プロデュースからレコーディングにも関わるクリエイターとして活躍中の橘慶太。KEITA…

w-inds. / Bang! Bang! feat. CrazyBoy (MUSIC VIDEO)

いつか名前を隠してコンペに参加してみたい

——SKY-HI「何様 feat. ぼくのりりっくのぼうよみ」の編曲、花村想太「Let me love you」の作曲など、様々なアーティストの楽曲に関わる機会も増えています。

橘:人の曲を作るのは好きで、自分で言うのもどうかと思うけど、得意なんですよ(笑)。曲を頼まれると、「この人にはこういう曲がいいな」とすぐに思いつく。ビックリするくらいすぐできるんです。w-inds.やソロでやれていないこともできるし、すごく楽しくて。「こういう感じの曲で」とリファレンス楽曲を渡されたときも、どういうフレーバーを残して、どう組み立てればいいかもわかって。そこに自分らしさをちょっと加える感じです。

——“橘慶太らしさ”のポイントって何だと思います?

橘:何だろう? 主になるのはビート感かな。音色やビートを作るのが好きだし、“っぽさ”が出ているのかなと。メロディに関しては、そこまで自分らしさを出したいと思ってなくて。「トップライナーと一緒にやりたい」というのも、そういうことなんですよ。他の人にメロディを作ってもらうことで、曲の幅も広がるので。制作においていちばん好きなのはトラックメイクで次がメロディ、だいぶ下にあるのが歌詞なんです。歌詞は本当に難しい。いつも言ってますけど世間に対して言いたいことがないし、不満もないので(笑)。

——(笑)。他のアーティストに楽曲を提供することで、作風も広がりそうですね。

橘:そうなったらいいなと。名前を隠してコンペに参加してみたくて。コンペを勝ち取ると、また違った喜びがあるのかなって。以前はそういう発想もなかったんです。遊びでトラップとかロックのトラックを作ることもあるんですけど、「面白い曲できた!」って友だちに聴かせて終わってしまっているので、せっかくだから活かせたらいいなと。

——ちなみに最近気になっているクリエイターやアーティストは?

橘:Vaundyは好きですね。「恋風邪にのせて」を聴いたとき、“J-POPの天才”だと思って。80年代のシティポップ感があるんだけど、ちゃんと今の音楽になっているし、イントロのフレーズとかもすごくよくて。まだ若いんですよね? どうやってあの域にたどり着いたんだろう?

——いつか橘さんとのコラボ曲を聴いてみたいです。今も制作はしてるんですか?

橘:やってますね。w-inds.のアルバム制作が始まるんですけど、今回はいろんなクリエイターにお願いしようと思っていて。さっきも言いましたけど、自分で全部作るのが目的ではないし、そこに対するこだわりもなくて。おこがましいけど、これまでw-inds.の曲を作ってくださった皆さんとようやく肩を並べられるようになったと思っているんです。だからこそ、支えてくれた人たちと一緒にやってみたくて。ちょっと前に葉山拓亮さんにライブでお会いしたときに、「(w-inds.に提供した)僕の曲をアレンジしてよ」と言われたんですけど、お断りしました(笑)。葉山さんに作っていただいた曲はすごく完成度が高くて隙がないから、アレンジできないんですよ。自分で作るようになったからこそ、すごい人に支えてもらってたんだなって、改めて思いますね。

連載バックナンバー

・【第8回】TRILL DYNASTY
・【第7回】Hiroki
・【第6回】Night Tempo
・【第5回】岡崎体育
・【第4回】NONA REEVES 西寺郷太
・【第3回】Yaffle(小島裕規)
・【第2回】KREVA
・【第1回】m-flo ☆Taku Takahashi

■リリース情報
w-inds.15thアルバム『Beyond』
2023年3月14日(火)リリース
特設サイトURL:https://ps.ponycanyon.co.jp/w-inds/15thAL/
各法人予約リンク:https://w-inds.lnk.to/15thalbum

Special Book盤 [CD+Blu-ray+PHOTOBOOK] SCCA-00142 / 税込8,800円
Special Book盤 [CD+DVD+PHOTOBOOK] SCCA-00143 / 税込7,700円
初回限定盤 [CD+Blu-ray] PCCA-06186 / 税込4,400円
初回限定盤 [CD+DVD] PCCA-06187 / 税込4,000円
通常盤 [CD only] PCCA-06188 / 税込2,750円

Special Book盤予約受付期間:2022年12月18日(日)19:00〜2023年1月21日(土)23:59

収録内容
[CD]
後日発表
全10曲収録予定
[Blu-ray/DVD] ※Special Book盤、初回限定盤のみ付属
後日発表
※収録内容は変更になる場合あり

<法人別特典>
・Amazon.co.jp:メガジャケ
・タワーレコードおよびTOWERmini全店、タワーレコードオンライン:A4クリアファイル Type-A
・楽天ブックス:A4クリアファイル Type-B
・ポニーキャニオンショッピングクラブ、PONYCANYON SHOP、魔法集市:A4クリアファイル Type-C

◆YouTubeチャンネル
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◆公式HP
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