清 竜人×内田怜央(Kroi)、新しい音楽に挑戦する意義 互いのクリエイティビティへの信頼が生み出す刺激的な表現

清 竜人×内田怜央(Kroi)対談

「頭のなかでは言い切れなかったことも、ラップしてると滲み出てくる」(内田)

ーー主題歌の「If I stay out of life...? (feat. Leo Uchida from Kroi)」については?

清:映画の主題歌なので、映像の雰囲気やキャストのことを含めてイメージしましたね。あとは映画のラストシーンも意識して。アンニュイさもあるし、エモーショナルな感じもあるので、そこを汲み取れる楽曲にしたくて。

内田:最初にデモを聴かせてもらったときは「このグルーヴに乗れるかな?」と思いました(笑)。このトラックをカッコよく乗りこなせる自信が持てないとお受けできないと思ったので、まずはいただいたデモをDAWに落として、ボーカルのパートを削って、自分でラップしてみたんですよ。何度かやってみて「これなら行けるかもな」と思ったので、「ぜひやらせてください」とご連絡しました。

清:ありがたいです。

清 竜人 - If I stay out of life...? (feat. Leo Uchida from Kroi)

内田:Kroiにはないアプローチの曲なんですよ。8分の7拍子のリフから始まって、ビートが独特で。“J・ディラ”ビートというか、ドランクビートの雰囲気もあるんだけど、またちょっとニュアンスが違っていて。

清:かなり複雑なアプローチをしているので、ラップがタイトじゃないと成立しないところがあるんですよね。ラップがメインになっていて、その周りで楽器隊が自由に動いているので。

内田:Kroiの場合は、バンドのノリやグルーヴの上で暴れるという感じなんですよ。この曲はラップが軸になってるから、アプローチが逆というか。その発想はまったくなかったので、すごく刺激を受けました。

清:怜央くんはリズム感も音感もいいし、実際レコーディングでも一発目のテイクで「お願いしてよかった」と安心しました。

ーーリリックについてはどうですか?

内田:自分以外の方に書いていただいたリリックをラップすること自体、初めてだったんですよ。それも最初は「できるんかな?」と思っていたんですけど、何度か繰り返しているうちに自分に馴染んでくる感じがあって。

清:レコーディングでも回数を重ねれば重ねるほどパフォーマンスが上がってましたからね。

内田:ありがとうございます。これは“音”の話になっちゃうんですけど、英語と日本語の合わせ方、グルーヴと意味合いのバランスがすごくいいんですよ。ラップって、言葉自体の意味だけではなくて、ライムやフロウで呼び出されるものもあって。頭のなかで考えてるだけでは言い切れなかったことも、ラップしてると滲み出てくるんですけど、この曲にはそれがすごくありました。あと、表現がきれい。自分も情景描写を頑張ってるんだけど、ここまできれいには書けないです。竜人さん、ラップやってますよね?

清:ラップと言えるほどのものではないけどね。過去の作品で、ワンセクションだけラップみたいなものはやったけど、やっぱりラップって一朝一夕ではどうにもならないと思ってるんですよ。フロウやライムをいろんなビートに合わせることをひたすら繰り返さないと、自分なりの(ラップの)表現は見つからないし、ラップメインの曲を自分がパフォーマンスしているイメージがないので。怜央くんが歌詞を書くとき、もちろんケースバイケースだと思いますが、メッセージ性や文章としての意味も必要だろうし、声や歌詞を楽器の一つ、サウンドの一部として扱うこともあると思うんだけど、そのバランスはどう取ってるんですか?

内田:そこは一番考えている部分でもあって。もともと自分は音楽が好きな人間で、伝えたいメッセージとかはあまりなかったんです。でも、バンドを続けて、曲を書いていくなかで、「こういうことを言いたい」というものが音楽から引き出されてくることがあって。ただ、そのままラップしちゃうと、どうしても押しつけがましくなるんですよ。「俺の正解はこうだ」みたいな。そうじゃなくて、言いたいことをフロウやライムで包み込んで、自分が感じてることをジワッと伝えるようなイメージで綴るようにしてますね。

清:なるほど。テンポが速い曲だとラップもリズミカルになるし、歌詞が聴き取れないところもある。その後ではっきり聴き取れる歌詞がバン! と来れば、その言葉が印象に残ったり。そういうバランスも計算しているんだろうな、と。

内田:そうですね。一時期は洋楽ばっかり聴いてたので、まずは音だけで楽しめなくちゃいけないと思ってるんですよ。言葉が分からなくても音で伝わることが優先というか。

清:どういう音楽が好きだったんですか?

内田:最初はレッチリ(Red Hot Chili Peppers)ですね。小2くらいからドラムをやっていて、レッスンでスティービー・ワンダーとかもよくわからないまま叩かされてたんですけど(笑)、中2のときに自我を持って音楽を聴き始めて。レッチリを起点にして、ファンク、ヒップホップ、ロックなんかに枝分かれして、いろんな音楽を聴くようになった感じです。Kroiのギター(長谷部悠生)は中学の同級生なんですけど、軽音部とかはなかったから、二人でレッチリのライブDVDを見て盛り上がってました(笑)。

清:そうなんだ(笑)。Kroiのサウンドにはフュージョンのテイストもあるじゃない? 自分の作品でも何度かやってみたことがあるんだけど、フュージョンとJ-POPって相性があまりよくなくて、難しい気がしていて。ともすればダサい感じ、古い感じになってしまうんだけど、Kroiはすごくカッコよく、洗練された形で取り入れている。そういう音楽も通ってるんですか?

内田:フュージョンはメンバーみんな好きですね。自分もドラムやギターを歌よりも先にやっていたので、楽器主体の音楽が好きで。Kroiを結成したときは、“フュージョン+歌モノ”みたいなこともやりたいと思ってたんですよ。Dirty Loops的な感じというより、むしろビリー・コブハムみたいな楽器が上手いおじさんたちの(笑)、いなたいフュージョンに歌を乗せてみたくて。少しずつ板についてきた感じもありますね。

ーーKroiとは違う環境でのレコーディング、どうでした?

内田:面白かったです。竜人さんのディレクションが素晴らしくて。

清:なんか言った(笑)?

内田:まず、判断が速いんですよ。レコーディング現場の立ち振る舞いは作品に影響すると思ってるんですけど、俺らはめっちゃダラダラしてて(笑)。いいテイクが録れない時間が長くなったり、ゆっくり考えすぎちゃったり。竜人さんはすごく機敏で、それがカッケーなと。

清:(笑)。さっきも言いましたけど、怜央くんのパフォーマンスがよかったから、細かいことは何も言ってなくて。テンション感だったり、ちょっとした言い回しやイントネーションくらいかな。自分の楽曲に男性アーティストを迎えるのは初めてだったので、すごく新鮮でした。

内田:めちゃくちゃ光栄です!

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