ベルウッド・レコードのアーティストが集結した50周年記念コンサート フォークやロックの黎明期を彩った名曲の数々
第二部は、細野晴臣「ろっかばいまいべいびい」を高田漣バンドが演奏してスタート。そして彼の父である高田渡の「鉱夫の祈り」と「告別式」を、なぎら健壱が色気のある歌声で歌い上げる。同窓会のような楽屋の盛り上がりをコミカルに話したMCも印象的だった。レーベルと同じく自身もデビュー50周年の伊藤銀次は、テレキャスターのギターで「留子ちゃんたら」を弾き語った。さらに大滝詠一のプロデュースによるデビュー秘話を紹介してから、大滝の「乱れ髪」をカバー。スティールギターとソプラノサックスのアンサンブルも美しい。そして「誰よりも緊張しているはず」と紹介され、佐野史郎が登場。ベルウッドのアーティストに激しく魅了された彼は、エレキサウンドで遠藤賢司「夜汽車のブルース」を聴かせる。はっぴいえんど「かくれんぼ」では憧れの鈴木茂と鈴木慶一をフィーチャーした。
そのまま鈴木茂が独特なギターサウンドで、はっぴいえんどの「氷雨月のスケッチ」を演奏。彼が在籍したはっぴいえんど、ティン・パン・アレーらの作った日本語ロックの礎の上に現代の音楽が存在していると感慨深い気分だった。そしてはっぴいえんどの「花いちもんめ」でも太い音色のギターが炸裂。長尺のアウトロもBPMによって支配、整理された現行の音楽ライブへのアンチテーゼにも見えた。
最後に登場した小室等率いる六文銭は、この日一番フォークらしいフォークを奏でていたのではないだろうか。1971年にリリースされた「私は月にはいかないだろう」、翌年の「キングサーモンのいる島」に続き、「出発の歌」(1971年)。4人のコーラスワークがしみじみと沁みた。
最後にレーベル創設者である三浦光紀氏が登場。「良質の音楽は良質のリスナーがいて初めて成立するもの。ベルウッドに集まったアーティストの制作を見ると、世間の理解を超えた作品が多い気がします。地味で世界で一番小さいであろう、このレーベルが50年残ったのは耳の肥えた方がいたからこそ。今日は支えてくれた皆さんに直接お礼をしたいのと、ベルウッド以外では絶対観られない内容にしようと企画しました。ベルウッドのアーティストが一堂に会するのはこれで最後だと思います。今後はNFT、ブロックチェーン、メタバースなどの技術を使って日本のサブカルチャーを世界に紹介する会社を計画しています。これに関しても温かいご支援をいただければ」この挨拶を以て、記念碑的なコンサートは幕を閉じた。
明治以降の日本における音楽の大きなテーマのひとつは「洋楽の日本語化」にあるといえるだろう。歌曲に始まり、日本語ロック、日本語ラップとそのなかで数々の論争が繰り広げられてきた。それらの音楽がなければ、今日の日本でチャートインするポップスは生まれ得ない。アナログレコード復権、シティポップのリバイバルが騒がれて久しいが、この日のライブには今こそ省みられるべき懐かしく、新鮮な音楽が溢れていた。
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ベルウッド・レコード初期の名盤52タイトル配信開始
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