syudou、さらなる“加速”を予感させた初の有観客ライブ 孤独を脱した音楽活動への幸せ
syudouが8月8日、ワンマンライブ『加速』を開催した。2012年よりボカロPとして活動を始め、これまで多くのヒット曲を世に送り出したsyudouは、昨年より自身も歌うシンガーソングライターとしての活動も開始。この日は彼にとって初めての有観客ライブで、会場には本人の思い入れが強いという中野サンプラザホールが選ばれた。
開演するとまずはアニメーション映像が流された。syudouらしき主人公のキャラクターがスポーツカーを運転しており、BGMが徐々にスピードアップ。そして今回のライブのタイトルである“加速”の文字が大きく表れると、そのまま1曲目「いらないよ」へと突入した。暗いステージが明るくなり、ついにsyudouの姿が出現。会場は大歓声に包まれた。
舞台上には階段で登れる大きなステージセットがあり、syudouは最初上段に現れたが、歌唱中に下に降りて観客を煽ったり、また上に登って激しく歌い上げたりと、ステージを縦横無尽に駆け回ってみせる。序盤からすでに会場の空気を掌握しているようだった。
2曲目の「たりねぇ」までを勢いよく歌い終えたところで「はじめまして、syudouです」と挨拶した。syudouは「モテたいと思って活動を始めたのがちょうど10年前」と話す。そしてこの満員の会場を見渡して「間違いなくモテ始めました」と喜ぶと、会場から笑いと大きな拍手が湧き上がった。
次に披露した「邪魔」は、その後のMCで「気持ちが乗る曲を作ろうと思って作った」と話していたように、感情がこちらにまで伝わってきた。当初は「それまでは音楽をカッコつけて作っていた」「7th(コード)を入れてオシャレにしてた」という彼だが、それでは人に聴いてもらうことができず、この「邪魔」を境に作品の傾向を変えたという。転機と言えるこの曲のパフォーマンスは、syudouの音楽家としてのスタンスがしっかりと感じ取れるものだった。
そして「馬鹿」をギターを担いで歌唱。ステージにはsyudouの他にバンドメンバー4人がいて、syudouの歌声を演奏で支えているが、彼の歌声はバンドサウンドにも全く掻き消されない力強さがあり、観客に言葉がストレートに届く。syudouの紡ぐアグレッシブな言葉が客席にまで直に伝わってくるようだった。
再びマイクを持ち「アンチテーゼ貴様」を披露した後、今回のライブにこの会場を選んだ理由を明かした。生まれは山梨、育ちは栃木で、「故郷が2箇所ある」と語る彼は、両県を行き来する途中、新宿経由で中野駅をよく通過していたという。その際に車両の窓から見えるのがこの中野サンプラザホールだったというのだ。また、学生時代にライブイベントでよく足を運んでいた会場でもあったらしく、そういった意味でも思い入れが深いのだとか。
次の曲に行く前に、あらかじめ観客にハンドクラップを要求。一定のリズムパターンで手拍子するオーディエンスに、後から合流するようにして「ビターチョコデコレーション」を歌い始めた。ダークな色の照明が楽曲の世界観をより一層引き立てる。間髪入れずに「孤独の宗教」と「フラミンゴ」を披露し、ライブはさらに加速していった。
空気が一変したのが次の「灯火」だった。しっとりとした雰囲気のあるこの曲を、照明の美しい演出によってあたたかく表現していた。神々しいライトの中で歌うsyudouの眼差しは会場全体に向けられていた。
ここでこれまでの活動を振り返ったsyudou。「高校生の時に音楽を始めたんですけど、バンドをやりたくても(自分の)協調性のなさ、エゴの強さ、変なこだわり」などが理由でバンド活動がうまくいかなかったという。しかし今回バンドメンバーを従えてライブをしてみて「こんなにバンドが楽しいとは思ってなかった」という。
また、昨年からアーティスト活動を始めたsyudouだが「ボカロだろうと自分の曲だろうと、歌ってる内容は地続き」だと話す。「自分の思ったこと、自分の気持ちの体重が乗ることを曲にしてる。(中略)何も変わってない。ただそれを続けてる。これからは、そのいい流れを“加速”させていくだけ」と今回のライブに付けたタイトルの背景についても明かした。
次に歌ったのは「狼煙」。力強いバンドサウンドが会場に響き渡る。歌声の鋭さと、敏腕のバンドメンバーたちとのコンビネーションも抜群だ。曲の最後にsyudouは上段に駆け上がり、背中を客席側に向けて大きく腕を広げた。そして曲が終わると同時に拳を高く突き上げた。