Orangestar、5年ぶりに立ったライブのステージ 一人ひとりが思い描く情景を共有した『UNDEFINED SUMMER-NOISE』

Orangestar、5年ぶりライブレポ

 清々しく空に突き抜けるような高音の歌声とともに、爽やかな情景を音に乗せるボカロP・Orangestar。彼の5年ぶり2回目のライブ『UNDEFINED SUMMER-NOISE』が8月5日、東京ガーデンシアターにて行われた。

 打ち寄せる波の音や蝉の鳴き声のBGMが夏を感じさせる開演前を経て、青い照明とともにバンドが「roars」を演奏しはじめると、ライブが開幕。ステージ後方のスクリーンに晴天が映された「Henceforth」、青春の風景を描いたアニメーションが瑞々しい「Surges」が序盤に続くと、この日Orangestar、遼遼(Vo/Gt)と共にボーカルとしてステージに立った夏背によるハイトーンがきらびやかに光り、バンド隊による有機的で明るいサウンドが青春の1シーンを緻密に描く。もともと持ち合わせる高音のボーカルを曲の終盤で転調してさらに高音域で響かせるのはOrangestarの多くの楽曲の特徴でもあるが、ライブでは一層力強くハイトーンを奏でる夏背のボーカルがオーディエンスのギアを上げる役目を果たし、序盤ながら会場を熱く彩った。

Orangestarライブ(写真=HARUNA AOI(superbly inc.)、SHIMOYAMA HARUKA)

 「空奏列車」、「霽れを待つ」と、夏背の歌声とOrangestarのコーラスが青空を連想させる楽曲が続くと、代表曲のひとつ「アスノヨゾラ哨戒班」へ。息継ぎもそこそこに歌詞が詰まったメロディを歌う夏背の歌声が、どこか切羽詰まった序盤の歌詞とリンクする。スクリーンにはMVが映されており、その背景の夜空にラスサビで光が射し、焼けるように橙に変化すると、オーディエンスも自主的にサイリウムを一斉に青から橙に変え、MVとリンクする景色を作り上げた。その美しい光景に、2人も歌い終えて早々「感動した。みんなオレンジにしてくれて泣きそうだった」と口にし、圧倒された様子。夏背曰く「驚きの色の多さで、みんなが思う情景の色に変えられます!」との14色仕様のサイリウムが導入されたこの日、オーディエンスは好き好きに自身の思う情景の色を光らせていた。温かいアコースティックギターの音色と可愛らしいキーボードのフレーズが特徴的な「回る空うさぎ」ではOrangestarのリクエストによって橙や赤といった暖色に、「雨き声残響」では青や水色など、客席が同じ系統の色に染まることも多く、サイリウムを通して会場に一体感が作り上げられていった。

Orangestarライブ(写真=HARUNA AOI(superbly inc.)、SHIMOYAMA HARUKA)

 「Orangestarのライブとはなんなのかって思った人もいると思うけど……それは僕も思いました」。呟くようにぽつぽつとMCをしていたOrangestarは途中、そんなことを話してもいたが、その答えが中盤で披露された「DAYBREAK FRONTLINE」と「Alice in 冷凍庫」だったのではないかと思う。

 「水星」を美しく歌い終えたあと、ステージを覆い隠すように紗幕が降り、そこに「DAYBREAK FRONTLINE」MVの印象的な一枚絵が映し出される。「軽トラに乗って海に行こう」というMCでの伏線を華麗に回収したことでオーディエンスのテンションも上がる中、歌い始めたのは夏背でもOrangestarでもなく、原曲と同じボーカロイドのIA。会場を驚きに包み込んだ。夏背とOrangestar、2人による生歌も非常にレアでありそのハーモニーも魅力的だったが、やはり自身最大級のヒット曲の存在感と説得力は圧倒的。同じくIAが歌唱した「Alice in 冷凍庫」も併せ、夏背とOrangestar、そしてIAの歌声も含めて、“これぞOrangestarのライブだ”と強く感じた瞬間であった。

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