ここに彼の全てが詰まっているーー3rdアルバム『CHARLIE』の12曲で知る、等身大のチャーリー・プース

チャーリー・プース、新章の幕開け

 実に3年ぶりとなるチャーリー・プースの3rdアルバム『CHARLIE』は、現時点で彼の最高傑作であると言っていい。本作には彼が様々な出来事を経て辿り着いた、「自分自身の声」が詰まっているのだ。

 チャーリーは2015年の映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』主題歌のウィズ・カリファ「See You Again (feat. Charlie Puth)」において楽曲制作に関わり、自身もゲストボーカルとして参加。その全米チャート12週連続1位という大ヒットをきっかけに、一気にスターダムを駆け上がった。これまでに2枚のアルバムをリリースしており、聴く者の心をつかむ類まれな歌唱力と70、80年代のブルーアイドソウルを想起させるサウンドにも定評がある。

Wiz Khalifa - See You Again ft. Charlie Puth [Official Video] Furious 7 Soundtrack

 また、2021年にはその年最大級のヒット曲、ザ・キッド・ラロイとジャスティン・ビーバーの「STAY」にプロデューサー/ソングライターとして関わっており、エルトン・ジョンとの共作「After All」もヒットさせるなど、音楽家としての確かな実力も兼ね備えている。今年に入ってからはラッパーのJ.I.Dをゲストに迎えたジョン・レジェンドの「Dope」を共作し、カルヴィン・ハリスの大作『Funk Wav Bounces Vol.2』の「Obsessed」にもシンガーとして参加した。特にこの「Obsessed」で披露した太く芯の通った声はハリスも大絶賛。共演したダンスホールシンガーのシェンシーアのタイトなラップと絶妙な化学反応を起こしている。先日公開された同曲のMVでの振る舞いは、上述した「See You Again」のMVでの緊張気味な姿や絞り出すような声とは対照的だ(もちろんどちらも魅力的なのだが)。その堂々とした佇まいと歌声はライブでのパフォーマンスにも表れており、YouTubeで公開されている「Attention」のライブ映像では、観客とのハイタッチも織り交ぜながら終始リラックスした雰囲気で歌い上げている。

Charlie Puth - Attention (Live from The TODAY Show)

 TikTokで曲の断片を次々と「リーク」しながら、まさにファンと共に作り上げたといえる最新アルバムには、ここまでで示してきたようなシンガー、プロデューサー、パフォーマーとしてもさらなる高みに到達したチャーリーの魅力が全て詰まっている。

 アルバムは全12曲で、その多くがプライベートでの別れの経験が反映された失恋ソングだが、前半と後半の6曲でサウンド面も含め内容が異なる。前半はかつての恋の相手を責めるような、後悔と焦燥の入り混じった悲痛なものが多く、対して後半は自分を責めるような方向で、内面を見つめ直すような内容となっており、最後に1つの結論が提示される。歌詞においては「カッコイイ」ポップスター像とはかけ離れたフレーズが多く、そして様々なジャンルを横断する音楽オタクな一面も含め、そのどれもが今の等身大のチャーリーなのだ。

 1曲目の「That’s Hilarious」はそんな本作にとってこの上ない幕開けである。真正面からチャーリーを映し続けるMVでは、時折浮かべる不敵な笑みからも、もう何も隠さずに自分をさらけ出すんだという意気込みが窺え、同時に明らかに力強さを増した歌声にも圧倒される。

Charlie Puth - That's Hilarious [Official Video]

 続く「Charlie Be Quiet!」は、前曲のムードを損なわないような静かなイントロから、エレキギターの炸裂するサビに向かう展開を魅せるロック色の強い楽曲だ。そして「Light Switch」は本作の中で最も明るいダンスナンバーで、リズムの外し方もお洒落でクセになる。つまり、2曲目「Charlie Be Quiet!」は前後のムードの違う楽曲を繋げる役割も果たしており、アルバムの構成にも注意が払われていることが分かる。また、歯切れの良い早口な歌い回しも交えることで緩急をつける「There’s A First Time For Everything」と「Smells Like Me」では、元恋人の不在を情けなく、かつメロディアスに嘆いている。

 そして前半部を締めるのは、BTSのJUNG KOOKを迎えた楽しげなヒット曲「Left And Right (feat. Jung Kook of BTS)」だ。今回のアルバムはこれまでと違ってゲストボーカルをほぼ入れておらず、それが本作をよりパーソナルなものにしている。そんな中唯一参加しているJUNG KOOKであるが、MVで仲睦まじく触れ合う愛らしい姿を見れば、なぜチャーリーが彼との曲を入れたのかが分かるだろう。

Charlie Puth - Left And Right (feat. Jung Kook of BTS) [Official Video]

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