YOUYAがファンを前に語った、日々進化する底なしのポテンシャル 役者/アーティストとしてのビジョンも
アーティストとしてはもちろん、俳優としても着実にキャリアを重ねている松下優也。2020年10月には、「YOUYA」として音楽活動を再開させ、これまでに5作品をリリースしてきた。さらに、6月22日にはYOUYAとしての初ワンマンライブの様子を収めたBlu-ray『YOUYA 1ST LIVE “OVERTURE”』をリリース。それに伴い、東京、愛知、大阪でリリース記念イベントを開催した。リアルサウンドでは、7月26日にSHIBUYA TSUTAYAで開催したイベントにて公開インタビューを行った。同記事ではその内容をお届けする。(高橋梓)
歌とダンス、“どちらも100%に見せる”ことが大事
ーー改めて1stライブの様子を収めた作品をご覧になられていかがでしたか?
YOUYA:YOUYAとしての初ライブ、しかも全曲初披露だったので、まずちゃんと形になっていてよかったなと思います。ただ、ライブは去年11月に行なったものなので、日々自分は進化してんねんなとも思いました。これ、リリース記念イベントですけども、僕にとってはもう過去のものですね(笑)。
ーー成長が止まらない。
YOUYA:止まらないですね。やればやるだけ成長するって、この年でも実感できるのがおもろいなと思います。逆に20代の頃は長い目で見ないと自分が成長しているってわからなかったんですよね。でも32歳になって、どういう風にやればうまくいくのかと考えながらやるようになって、まだまだ伸びている感じがします。このライブも準備万端で行なったつもりやったけど、今はもうこの時を超えてるやろうなと思います。
ーーBlu-rayを拝見すると、日本語字幕がついています。その意図は何だったのでしょうか。
YOUYA:楽曲のほとんどが英語ですが見てくださる方の多くが日本人なので、という理由が一つ。それと歌詞にもこだわって書いているので、そこも知ってもらいたいなと思って字幕を付けました。
ーー仰るとおり、YOUYAとしての楽曲はほぼ英語詞ですよね。英語の方が表現したいことにフィットするとお話されていましたが、それはいつどうやって気付かれたのですか?
YOUYA:洋楽の和訳を見た時に「自分はこの方が向いているな」、「言葉がはめやすいな」と思ったんです。例えばラップって(1つの音に)言葉をたくさん入れられるので、言いたいことが全部言えるんですよ。でも歌は音符というルールに沿って言葉を入れるので、限りがある。「愛してる」と言うだけでも5つ使うことになるけど、「I love you」だったら2つくらいでいけちゃうんです。僕は日本人やし、もちろん日本語の良さも知っているんですけど、今は英語にしかできない表現で書きたいなと思いました。
ーーそんな楽曲がたっぷり披露された初ライブですが、会場となった舞浜アンフィシアターは特徴的なステージの作りです。
YOUYA:そうなんです。自分がお客さんとして見たことはあって、いつかあのステージでライブをやってみたいとなと思っていました。いざやってみて難しいと思ったのは、自分の立ち位置。ライブで盛り上がるとツラ(舞台上の客席寄り一番前)の方に行きたくなるわけです。でも、アンフィシアターでツラに行っちゃうと真ん中にいるお客さんしか見えなくて、ほとんどの人に背中を向ける状態になっちゃう。「かなり後ろじゃない?」って感じるあたりがお客さんにとって一番見える位置なんだとわかって、結構気にしながらやっていました。
ーー一般的なステージでやる時とダンスのフォーメーションも変わってきそうですね。
YOUYA:完全にアンフィシアター用に作っていましたね。今後は普通バージョンで披露していくことになると思います。先日Billboard Liveでライブをしたんですが、そこではダンスはなくバンドと一緒にやったんですよ。なので、今後通常のダンスバージョンを披露するのを楽しみにしていてほしいです。
ーーYOUYAさんの楽曲にとって、ダンスも重要なファクターのひとつです。ご自身はダンスをどのように捉えていらっしゃいますか?
YOUYA:歌と同じレベルのものだと思っています。僕はマイケル・ジャクソンが昔から好きですけど、マイケルって音楽とダンスが同じように見えていません? この曲といえばこのダンスって連想できるというか、(ダンスが)飾りではないじゃないですか。僕も同じような捉え方をしていて、曲の色付けをするためにダンスをするのではなく、歌と同等のレベルのものとして大切にしています。
ーー踊る曲と踊らない曲があると思いますが、そこで違いがあったりも?
YOUYA:当たり前ですけど、歌だけなら歌にすごい集中できるのでやりやすいですね。歌もダンスも合わさった時に、どういう塩梅でやるのかはアーティストそれぞれのセンスだと思います。どちらも100%でやることが一番なんですけど、“どちらも100%に見せる”ことが大事なんですよ。「ここは歌だけに集中する」とか、「踊っているからこそあえてフェイクする」とかって、アーティストのセンスが問われる部分。どこで片方を抜いて、どこで両方やるかというアドリブ的なものをやりつつ、歌もダンスも100%に見せるというのが大切だと思っています。
ーー例えばライブ中にテンションが上がって、振りが抜けてしまうということはあるのでしょうか?
YOUYA:完全に忘れることはあんまりないかも。ダンスって歌に比べて感覚的な要素が強いから、体の中に入ってるんですよ。僕、ダンスに関して思うところがあって。ソロでやっていると、自分が一番前に立つので誰の背中も見ずに踊るわけじゃないですか。ずっとそれが当たり前だと思っていたんです。でも、途中でX4というグループをやって、みんなの背中を見て踊ることがあって。みんながしっかり踊ってくれるから、ちょっとうろ覚えでも全然踊れちゃうんですよね。しかも背中から出ているバイブスももらえるわけやから、一人の時より絶対上手く踊れるんです。そういうのを思うと、自分が一番前に立っている景色って当たり前じゃなかったんやって。なので、ソロライブ中に後ろを見ちゃうんですよ。でもそれはダンサーやバンドがいるから。音楽を感じながらライブがしたいんですよね。松下優也として役者活動もさせてもらっていますけど、ミュージカルの時にオーケストラピットってあるじゃないですか。自分の前にオーケストラがいる時はお客さんと自分の間に音楽が存在しているので、めっちゃやりやすい。正直テンションが変わったこともあるくらい、音楽を感じながらやりたいというのはあります。
ーーダンサーやバンドの方とともにステージを作り上げているのですね。Blu-rayのWHITE ver.に収録されているスタッフ密着カメラ映像の中にも、ダンサーの方々と振り合わせをしているシーンがありました。ああいった場ではどんなすり合わせをされているのですか?
YOUYA:それぞれがかっこいいダンスをしたとしても、揃っていないといいものに見えないので合わせることが前提です。自分から指摘することもあれば、みんながそれぞれやってくれることもあります。それと、当たり前じゃなかった景色という話で言うと、あんな風にダンサーと一斉に振り入れをするアーティストってそんなに多くないらしくて。僕は、振り覚え早いんで(笑)。
ーーさすがです(笑)。振り入れはどれくらいでやられるのですか?
YOUYA:(曲によって)結構バラバラかも。あと20代の頃は朝からのリハだと眠くて、何も入ってこなかったです(笑)。今は切り替えられるようになりましたけどね。それと、自分の右斜め前に振りを教えてくれる人がいると、スムーズに入ってきますね。
ーーYOUYAさんからダンサーの方々にリクエストすることもあるのでは?
YOUYA:ダンサーって自分のやりたい仕事を選んでいるけど、中には“こなす仕事”ってあると思うんですよ。自分の現場はそうあってほしくないので、モチベーションが作り出せるような現場であればいいなと考えていたりはしますね。僕を立ててくれたり、考えてくれるのはすごくありがたいけど、ダンサー自身がステージに立ちたくて、踊りたくてやっていてほしい。「仕事」という概念をほんの少しだけ超えてくれる現場だったらいいなって思っているので、ライブの前後で伝えたりはしていますね。正直、僕はタッパもあるし何やっても目立つんですよ。だからダンサーには「自分が目立つ」くらいの気持ちでいてくれて全然いいんです。バンドメンバーもそうやし、MVのディレクターもフォトグラファーもスタイリストも、一緒に仕事をしている人たちはみんなそうかな。その方が楽しいと思いますしね。
ーーなるほど。YOUYAさん自身の演出について、ご自身で考えられたこともありそうです。
YOUYA:僕がやっている音楽のライブって音源通りきれいに歌うのではなく、その場によって歌割りや譜割りを変えてみるっていうのが良さだと思うんですよね。そこはこだわって考えたかもしれません。
ーーアドリブやフェイクを入れる時はどういった心情なのでしょうか?
YOUYA:本当のアドリブでたまたま良いのが出ることもありますけど、大体リハーサルで生まれるんですよ。何度もやっていくうちに「ここはこういう風に歌いたくなるな」っていうのがあって、それをライブでやるという。ただ、お客さんはリハーサルを知らないからアドリブのように聴こえる。そういうのを楽しみたいんですよね。ミュージカルにも出ていますけど、ミュージカルって譜面通りにやらなきゃいけないことが多くて結構厳しいんです。でもライブってそうじゃないし、自由に楽しもうと思って歌っています。
ーーご自身の中で生まれていた音をアウトプットしている、と。
YOUYA:そうですね。中学生の頃からゴスペルをやっていましたが、100人くらいいるクワイアの中から急に選ばれて、「はい、アドリブで」ってマイクを渡されるんです。当時は地獄の時間やったけど、今思えばそれで鍛えられたセンスもあるんかなって思います。