デビュー10周年の石崎ひゅーい、菅田将暉とのコラボ曲「あいもかわらず」はリスナーの“人生の友”に 二人の絆から紐解く

石崎ひゅーい×菅田将暉「あいもかわらず」を聴いて

 デビュー10周年を迎えた石崎ひゅーいが、菅田将暉とのコラボ曲「あいもかわらず」をリリースした。石崎のデビュー記念日の7月25日に開催された『10th Anniversary LIVE 「、」』には菅田がサプライズ出演し、同曲をいち早く披露する一幕も。それぞれの声で歌うAメロ、Bメロを経て、2声で届けるサビでは息の合ったハーモニーを聴かせてくれた。

 石崎と菅田のタッグといえば、「さよならエレジー」や「虹」など石崎が菅田に提供した名曲たち、あるいは映画『糸』のエンディングソングに起用された“菅田将暉×石崎ひゅーい”名義での「糸」(中島みゆきカバー)がまず思い浮かぶが、オリジナル曲でのコラボは意外にも今回が初。菅田がこの曲を初めて聴いた時に言ったという「熟成したチーズみたいだ」という言葉(※1)になぞらえると、ここまで積み重ねてきた月日があったからこそ、「あいもかわらず」は味わい深い一曲になったのかもしれない。

菅田将暉 『さよならエレジー』
菅田将暉 『虹』
糸 – 菅田将暉×石崎ひゅーい【Ito – Suda Masaki × Ishizaki Huwie】

 ここで改めて石崎ひゅーいの10年の歩みを振り返りたい。2012年7月25日、ミニアルバム『第三惑星交響曲』をリリースし、メジャーデビューした石崎。表題曲は母親の死から生まれた曲で、きらめくダンスビートに乗って泣いたような歌声が響きわたった。記憶の中の風景にあった輝きを振り返りながらも“忘れたくないものだって忘れてしまう。なぜなら人間だから”という悲しい真理を自身に突きつけ、飛翔力のあるメロディ、ファンタジックな歌詞とサウンドに昇華。〈君がずっと泣き止まないもんだから/神様もワンワン泣き出して〉のあとに続くのが〈僕たちは祭囃子の中〉なのがユニークだ。

石崎ひゅーい – 第三惑星交響曲

 石崎が自分という人間を削りながら生み出した歌のテーマは、友達に対する想いから好きな女の子の話、自分のダメ人間っぷり、洗濯機、おっぱいなど多岐にわたる。しかしメジャーデビュー曲が母親の死という喪失を扱った曲だったこと、そして東日本大震災翌年の2012年にデビューしたことが、歌の人格形成に大きな影響を与えたのではないだろうか。10年後の今、振り返ってそう思う。デビュー当初はどの曲も個人的だったが、俳優業や他アーティストへの楽曲提供など、別の世界へ飛び出した経験が刺激となり、“自分という人間を削る”には限らない方法で新しい歌が生まれるようになった。自身の感情を発露させる歌は、やがて聴く人の感情を喚起する歌に変わった。そんな変化はありつつも、芯は変わらない。時間も距離も飛び越えながら、眠れずに孤独な夜を過ごす人を見つけ出せる存在としての音楽に希望を見出しつつも、“どこまでいっても自分は無力だ”という自覚の狭間でもがく石崎の姿が、10年前の曲からも現在の曲からも透けて見えるのだ。

 だからこそ石崎の歌は泥臭くも美しく、無骨なのに繊細で、儚くも生命力に満ちている。そしてそれは板の上の菅田のイメージとも重なるものであり、両者が共鳴したのは必然と思えてならない。本稿では石崎のキャリアを振り返るのみに留めるが、同じように菅田も、挑戦と達成を繰り返しながら、喜びだけでなく悔しさも味わいながら、自身の思う美しい表現を突き詰めてきたのだろう。何もないところからメロディや歌詞を生み出す作業は孤独なもので、音楽家に限らず、表現者とは元来孤独だ。「あいもかわらず」の〈焦げついたアスファルトの隅で/この僕の真ん中で/君をずっと待っていた〉というフレーズのように、それぞれの信念が引き寄せた出会いだったのだろう。

石崎ひゅーい×菅田将暉 – あいもかわらず / LIVE(2022.7.25@LIQUIDROOM)

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