石崎ひゅーい、親友 菅田将暉も登場したメジャーデビュー10周年記念ライブ リスナーへの熱い想い伝えた特別な一夜に

石崎ひゅーい、菅田将暉も登場した10周年ライブ

 2022年7月25日、石崎ひゅーいのメジャーデビュー10周年記念ライブ『、(てん)』が恵比寿リキッドルームで開催された。今回の公演名には、様々な意味が込められている。まず、メジャーデビュー10周年の「10(ten)」。また、これまでずっと天国にいる母親に向かって歌を歌い続けてきた石崎は、この公演名に「天」という意味も込めたという。そして、終わりを意味する「。(句点)」ではなく、これからも物語を描き続けていく意志を込めて「、(読点)」を公演名として掲げた、という想いもライブ中に語られた。今回は、その何重もの意味が込められた特別な一夜を振り返っていく。

 オープニングナンバー「第三惑星交響曲」から、フロアに大きな手拍子が巻き起こる。一人ひとりの観客がこの日のライブを待ち望んでいたことがひしひしと伝わってくるような熱気であった。続く「バターチキンムーンカーニバル」では、「愛してるぜ!」という石崎の叫びに、観客は目一杯の拍手で応えていく。その熱量を受けてだろうか、石崎は、3曲目の「夜間飛行」のラストにおける〈夜空を飛んで会いに行く〉という一節を、まるでシャウトするように歌い届けた。今はまだ観客は自由に声を出すことはできないが、それでもステージとフロアのコミュニケーションは確かに成立していた。そして、冒頭3曲を聴いた時点で、そのどれもが1stアルバム『独立前夜』からの選曲であることに気づく。この選曲は、長年にわたり応援し続けてくれているリスナーへの感謝の表れだったのだろう。

 「祝われるっていうのは、正直得意じゃありません。ですが、今夜だけは言わせてもらっていいですか。今夜、石崎ひゅーいの10周年を盛大に祝ってください、よろしくお願いします!」。その石崎の言葉に応えるようにして、フロアからはさらに大きな拍手が巻き起こる。その後、「メーデーメーデー」「1983バックパッカーズ」、そして、久々にセットリストに加わった「カカオ」と立て続けに披露されていく。私たちの日常における喜怒哀楽の感情に、自然体のまま優しく寄り添ってくれる石崎の楽曲たちは、この10年間を通してリスナーの人生を肯定し、支えてきたのだろう。石崎が観客に感謝の想いを伝えるたびに、それに負けない熱さで応えていく観客たちの姿が、その何よりの証であった。

 ライブ中盤のハイライトを担ったのは、5月にリリースされたばかりのバラードナンバー「花束」。美しくドラマティックな歌のメロディを誇る同曲は、彼のディスコグラフィの中でも最もエモーショナルな楽曲の一つだ。例えば、石崎の初期の代表曲「花瓶の花」におけるモチーフが“一輪の花”だとしたら、この楽曲のモチーフは、まさにタイトルが示しているように“花束”である。今回のライブで歌われた「花束」を聴いて、まるでこれまでの10年間における点と点が、美しい1本の線で繋がったような深い感動が押し寄せてきた。そして、この楽曲が10周年というメモリアルなタイミングでリリースされた意味が改めて伝わってきて、胸がいっぱいになった。

 その後のMCパートで石崎は、10年が経った今も毎日悩んでばかりだし、未だに確固たる自信を持つことはできない、と正直な心境を吐露した。しかし、それでも音楽の世界で生きていこうと思える理由が2つあるという。その1つが、自分の音楽活動を応援し続けてくれるリスナーがいること。彼のリスナーに対する感謝と信頼は、これまでのライブパフォーマンスを通してすでにしっかりと伝わっていたが、改めて言葉にして伝えなければならないと考えたのだろう。そして、もう1つの理由が、彼の音楽活動を支えるミュージシャン仲間やスタッフの存在。一人ひとりのバンドメンバーに深々とお辞儀をして感謝の想いを伝えた後、キーボーディスト(兼バンドマスター)であり、デビュー前から石崎の楽曲制作に携わり続けてきたトオミヨウと2人で初期の楽曲「ひまわり畑の夜」を披露した。石崎の息遣いを感じ取りながら、彼の歌に優しく寄り添うトオミの奏でる音色が美しかった。

 その後に披露されたのは、亡き母への想いを歌った「天国電話」。石崎本人も語っていたように、まさにこの10周年記念ライブで歌われるために生まれてきたような楽曲であり、〈あれから10年経っても〉に続けて歌われる一つひとつの言葉たちは、とても切実な響きを放っていた。続けて、石崎が長いキャリアの中で大切に歌い続けてきた代表曲「花瓶の花」が披露される。「天国電話」の歌詞がそうであったように、この曲における〈何年も何十年も何百年も何万年も前からずっと探していたんだ/君と生きていたいんだ〉という言葉も、まさにこの日のために紡がれたもののようであった。石崎は、何度も感極まるような表情を見せながら、曲中で目の前の〈君〉に感謝の気持ちを伝え続けた。

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