Charaが振り返る、デビュー30周年オーケストラコンサート これまでの軌跡を辿るような公演に
Charaのデビュー30周年を飾るオーケストラ公演『billboard classics Chara 30th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2022 -Chara’s Time Machine-』が7月30日午後6時よりWOWOWライブ/WOWOWオンデマンドで放送・配信される。
世界的に活躍する栁澤寿男の指揮によるオーケストラ公演は、今年3月27日に兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールで、4月15日にBunkamuraオーチャードホールにて2公演を開催。今回は60人編成の東京フィルハーモニーを迎えた東京公演の模様を収録。「やさしい気持ち」や「ミルク」、「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」などの名曲の数々にシンフォニックなアレンジが施され、名門オーケストラによる演奏でどう生まれ変わったのか。アーティストとしての30周年の軌跡を辿るような公演を終えたCharaに、普段のライブとは違うオーケストラとのコラボレーションを終えた感想を聞いた。(永堀アツオ)
「真逆で大丈夫かな?」から「すごくいいじゃん!」に変わった
——まず、デビュー30周年を記念して開催されたプレミアムなオーケストラ公演の総括からお願いできますか。
Chara:2公演のみで、公演ごとにオーケストラのメンバーさんも違ったので、私としては「もっとコミュニケーションを取りたい!」っていうところで終わってしまったのは少し残念だったけど、リハーサルの時にマエストロとコンマスとは、いろいろと相談させてもらって。クラシックの当たり前がたくさんあると思うので、そこで私が気になったことを無視しないでちゃんと話せたことは良かったですね。あと、私は譜面にないところを演奏するタイプじゃないですか。
——譜面通りよりは、フィールの方を大事にしてますよね。
Chara:そう、クラシックとは真逆なんだけど(笑)、共通するところはいっぱいあって。音楽を愛する人間同士だというところで融合ができたらいいなと思っていたんです。最初は「真逆だけど!」っていうイメージだったけど、やっぱり生楽器は素晴らしかったし、演奏も本当に素敵だったので、もうちょっとやりたいなという気持ちになって。だから、「真逆で大丈夫かな?」 から、「すごくいいじゃん!」に変わったというのが、全体の感想ですね。
——マエストロとはどんな相談をしたんですか。
Chara:私はリズムをすごく大事にするんですけど、「Heaven」とか、裏打ちのリズムで歌う曲が多いのね。それは、譜面にも書いてはあるんだけど、クラシックの当たり前とも違うから、グルーヴィーに再現するのに少し苦労して。しかも生演奏で、パーカッションの方々は私から一番遠く離れた場所にいる。リハーサルも1回しかなかったので、最初は慣れるのにちょっと苦戦したけど、それも貴重な経験になりましたね。
——シンフォニックアレンジはどう感じましたか。
Chara:ヘッドに山下康介先生がいて、志倉知美さん、荻原英明さん、湖東ひとみさんというアレンジャーさんがいて。打ち込みのデモが上がってきた時点で、「メロディに対して、ここのリフはしっかり弾いた方がいいと思います」とか、「ピアノと歌というシーンにしてはどうかな?」という相談はさせてもらって。あと、ハープを入れてほしいとか、編成のリクエストもさせてもらって。「Junior Sweet」や、「Happy Toy」とか、後半にグルーヴィーな曲を持ってきていたので、パーカッションはできれば数名ほしいなという話もして。打ち込みのデモと生演奏では違ってくる部分もあるので、山下先生にはリハーサルに来てもらって、一緒に確認しながら進めていきましたね。
——リハーサルで変わった部分もあったんですか?
Chara:そうだね。2部の1曲目に持ってきた「やさしい気持ち」は最初、違う出だしだったかな。もう少しテンポが速かったんだけど、テンポルバート(自由な速さで)にして、お花の妖精ちゃんみたいにゆっくり登場したいって言いましたね(笑)。あとは、マエストロと合わせて歌い出すシーンが3〜4カ所あったんだけど、私がなかなか合わなかったりして。何回か確認して合わせたりしましたね。
——ピアノの連弾でオーケストラに加わった「KILIG」とか。
Chara:そうそう。〈不安を交換して〉ってフェイクで歌詞を歌った後に〈ハッピーバースデー〉って言ったらピアノを弾き始めるんだけど、そこの入り方が難しくて。リハでは1回も成功したことなかったけど、本番ではうまくいって。指揮で始まるのは慣れないね。でもその曲だけ、マエストロが見える位置で歌えたからものすごく楽しかった。メンバーの中にはお子さんいらっしゃる世代の方もいるので、歌詞の内容も説明させてもらったりして。リハの時は言わないで、本番で言おうと思ってたんです。
——「KILIG」というのは、フィリピン語で「恋をすると蝶が舞う気分」という意味だと説明した後、当時4歳の姪っ子が誕生日に送ってくれたムービーの話をしてましたよね。あれは観客だけじゃなく、楽団員の方にも向けて話してたんですね。
Chara:そう。その場で初めて聞くお客さんと同じ感覚で聞いた方がフレッシュかなと思って。今しかやらない演奏だけど、一瞬だけでも自分のかわいい子供のことや親のことが思い浮かんだら素敵だなと思って。演奏にも出ると思うんだよね。
——改めて、各曲についてお聞きしたいんですが、Overture「あれはね」はオーケストラ演奏のみとなっていました。フルオケでの演奏を聴いて、Charaさん自身はどう感じましたか。
Chara:1曲だけ、インストでオープニングをやっていただきたいなという思いがあったんですね。この曲は割と初期、“アーリーチャラ”の曲で、シングルではなかったんですけど、Charaらしい人気曲で。最近、なかなか歌うことがなかったんですね。でも、今回30周年の一環でこのライブをやらせていただけることになって、今までの作品を自分でも改めて聴いて「いい曲だな〜」と思って。最初は、「アンコールがあったら、これを歌ってもいいですね」って言う話はしてたんだけど、本番ではそれをうっかり忘れてて(笑)。まぁ、デビュー曲「Heaven」でちゃんと締まってるから、なくてもいいかなと思って。だから自分が聴きたいっていうことと、この時代から応援してくださっているファンの人にはこの曲をインストで届けたいなと思って選んで、やっぱり素敵でした。
——メロディの素晴らしさを改めて感じましたね。
Chara:そうだね。自分で言うのもなんだけど(笑)、やっぱりいい曲だよね。全然ヒットしてないけど、いい曲だったなって。
——でも、この曲が収録されている2ndアルバム『SOUL KISS』は注目を浴びていましたよ。当時、クラブでもかかってましたし。
Chara:確かに。授賞式には行かなかったけど、日本レコード大賞新人賞(最優秀アルバム・ニュー・アーティスト賞)をとってたの。でも、私それを知らなくて。滅多につけないテレビがたまたまついてた時に、Chara『SOUL KISS』って出て。「あれ? 私、とってる」って。今、急に思い出した(笑)。いつか『SOUL KISS』ツアーがやれたら、胸熱だね。
——本公演でもこれまでの日々を思い出す場面はありましたか。
Chara:そんなに思い出したら疲れちゃうでしょ。人間は忘れる機能がついているからね(笑)。でも、例えば、「あれはね」はイギリス人のデヴィッド・モーションにサウンドプロデュースをしてもらってて。1stアルバム『Sweet』もロンドンでのレコーディングだった。1990年の終わりにロンドンに行って、一人で電車に乗ってスタジオに行ったり、借りていた部屋がすぐお湯がでなくなっちゃったり。全部楽しかったけど、その空気感が出るんだよね。その当時のイギリスの日々を思い出しましたね。