Chara、ダンスミュージックで際立つ“声”の存在感 新作『Baby Bump』をDJ目線でレビュー

 Charaの新作『Baby Bump』の発売日にファッション誌elleとChara共催の『Baby Bump』のリリースパーティー『ELLE × Chara “Holy Bumpy”』が渋谷のContact Tokyoであった。その時に、僕はCharaの作品に度々参加しているmabanuaとKan Sanoと共にメインフロアでDJをすることになった(僕がCharaの音楽をよくわかっているから、という枠ではなくて、Charaの周りのミュージシャンのことをよく知っているから、という枠で呼ばれたんだと思う)。

Chara『Baby Bump』(通常盤)

 その時の選曲にはあらかじめリクエストがあって『Baby Bump』の雰囲気に合うものにしてほしいということ、また『Baby Bump』からの曲を何曲か混ぜてほしいことだったので、僕もmabanuaもKan Sanoもそれに沿って選曲をしていた。ちなみに僕はそのリクエストに合わせて、スティーブ・レイシーやジ・インターネットやゴールドリンクやMndsgn絡みの音源など、80~90年代のテイストがあって、同時に生演奏っぽい質感を取り入れている現行のUSのR&Bを中心に選曲をしていった。ここではその時にContactで聴いたり、自分でDJをしていて感じた印象を交えながら、『Baby Bump』のことを考えてみようと思う。

 まずはサウンドチェック時に驚いたことから書き始めたい。フロアでふらふらしながら会場の音の感じを聴いていたところにmabanuaがかけた『Baby Bump』の低音の鳴りに僕はびっくりした。バスドラやベースの低音がものすごく強く鳴っていて、音ではなくて、耳では感じ取れないレベルの異常に低い音域まで入っているような感覚があった。つまり、クラブでのプレイにも対応されているくらいのサウンドがそこには入っていたということに現場で気付いたのだった。実はその時点では資料をもらっていなくて、クレジットも見ていなくて気付かなかったのだが、mabanuaやLUCKY TAPESのKai Takahashi 、Tendreなどとともに、Seihoがトラックを手掛けていた。そのラインナップを見て、その時の低音にも納得したのだった。つまり『Baby Bump』はそういったディテールまで作り込まれた作品である、ということだ。個人的な関心としては、アナログもリリースされるらしいので、そっちの鳴りもクラブで聴いてみたいと思った。

 そして、実際にDJをやって自分でこのアルバムからの曲をかけてみて感じたのは選曲のやりやすさ。そりゃ合いそうな曲を用意してきたんだから当然だろうと言われそうだが、このアルバムに収録されている曲に関しては、前述のようなUSのR&Bを中心とした曲たちとも違和感がなく、同じムードの中で同じ地平のものとしてかけることができた。J-POP枠でここまでスムースに馴染んでくれるものも珍しい。

 理由はいくつかある。例えば、「Pink Cadillac」がPファンク系譜のシンセファンクだったり、「Chocolate Wrapping Paper」はぶっといシンセベースが印象的なブギーだったり、「Baby Bump」がディープなハウス風だったり、「Twilight」がアーバンなディスコだったり、「Everybody Look」はオールドスクールなディスコラップとも繋がりそうなファンクだったり、70〜90年代くらいのブラックミュージックをリバイバルしている近年のトレンドとも接続していて、たとえば、ジャズ周りだとサンダーキャットやテラス・マーティン、ブランドン・コールマン、ファンク方面ならMndsgnとかDamFunkとか、もっとポップなところだったらマーク・ロンソンやYaejiだったり、アンバー・マークだったり、そういったところと音色やテクスチャーを共有している部分もある。前述の低音同様、音響面でも遜色がなく、同じ質感のものとして鳴ってくれた。

 そして、最も大きな理由は楽曲の構成だろう。初っ端の「Pink Cadillac」がいきなり象徴的だが、基本的にビートはほぼループでできていて、コードも同じもののループのようなシンプルなもので、いわゆるJ-POP的なサビに向かって盛り上がるような構成はなく、そもそもいわゆるサビと言えるような部分があるような無いような曲だったりもする。それはまさに僕がDJの際にもっていった楽曲たちとも共通する構成だったので、それまでにかけていたR&Bとも同じようなフィーリングのままきわめて自然に繋がってくれた。そういう意味では、この『Baby Bump』の曲たちは海外の曲との相性がいいとも言えるかもしれない。

 そういえば、このアルバムの中でかなりポップでキャッチ―な「愛のヘブン」「Cat」あたりもでさえも曲の構成はかなり平坦で、ミニマルなビートのループの上でCharaが歌うダンスミュージック仕様だ。とはいえ、このアルバムの中では最もJ-POP的な歌ものの構成に近い歌が聴けるものにはなっている。ただ、Charaのボーカリストとしての個性的なスタイルゆえに、そういった曲でさえもただの歌ものにはならないのがこのアルバムの面白いところだ。

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