AmamiyaMaakoが伝える、怒りや葛藤を経たポジティブな想い DTMの広まり方に変化も

AmamiyaMaakoが伝えるメッセージ

 昨年3月にHALLCA、仮谷せいらとともに新ユニット「はるかりまあこ」でEP『TERMINAL』をリリース。その全曲をアレンジし、ソロでもトラックメーカー/シンガーソングライターとして活動中のAmamiyaMaakoが、2ndミニアルバム『Drops』をリリースする。本作は、KEN THE 390や☆Taku Takahashi、DJ HASEBEら著名なクリエイターにインスパイアされ、自身のラップやヒップホップの手法を大々的に取り入れた楽曲が並ぶ。洗練されたコード進行や心地よいメロディの奥には、彼女が抱える「怒り」や「葛藤」が内包されており、その鮮やかなコントラストが作品に深みを与えている。2018年のインタビューでは、「女の子のDTMのシーンを広めていくこと」を目標に掲げていた彼女の目には今、どのような景色が映っているのだろうか。(黒田隆憲)

意識しているのは、今までになかった組み合わせ方で「新しい味」を作ること

──はるかりまあこの取材から1年半が経ちました(※1)。この間、Maakoさんはどのように過ごしていましたか?

AmamiyaMaako:この1年間はライブも増えてきて、前回のインタビューの頃より世の中の様子も幾分良くなってきた気がしていました。自分のことで言えば、ずっとアルバムを出すことを目標にしていたので、はるかりまあこが終わってからすぐに自分の作品の制作に入っていきました。

 それから、コロナ禍での自粛期間にもともとやっていたギターをしっかりと練習しましたね。今回のアルバムにも、自分で演奏したギターが入っています。YouTubeでの活動も、アルバムの制作期間に入っていた時はちょっとペースが落ちちゃったんですけど、配信は毎週やるようにはしていました。YouTubeライブでは演奏したり歌ったり、トークテーマを決めてラジオみたいに話したりコメントを読んだり。最近は、これからDTMを始める人向けの動画コンテンツを作っているところです。

【DTM】音楽制作って何するの?

──2018年のインタビューでも、「女の子のDTMのシーンを広めていくこと」を目標に掲げていましたよね(※2)。

AmamiyaMaako:シンガーソングライターの女の子やアイドルさんから「自分でもDTMをやってみたい」という相談を受けることが最近ますます増えてきて。「最初にどんな機材を集めたらいいかわからない」「そもそも何をしたらいいのかわからない」という声もあり、何か後押しすることができたらいいなと。そういう気持ちは今もずっと持ち続けています。

──コロナ禍になり、楽器の演奏だけでなくDTMで曲を作りたいと思う人がより増えているのかもしれないですね。

AmamiyaMaako:めちゃくちゃ増えていると思います。2020年の前半は特に、ライブやレコーディングなど全てがストップしてしまって。そんな中で「自分で何かできることをやらなきゃ」とみんな思っていたし、その一つの選択肢としてDTMもあったのかなと。楽器屋さんへふらっと遊びに行った時も、「DTMを始めてみたい」と店員さんに相談している子たちがいたりして。

──DTMも、プロユースの録音機材を集めて本格的にやっている人もいれば、それこそスマホのアプリを使ってガジェット感覚で曲作りをやっている人もいて。

AmamiyaMaako:そうですね。ライブでも自分で制作したトラックを流し、そこに演奏や歌を乗せる子たちが増えてきているような気がします。DTMはどうしてもお金がかかってしまいがちなので、あまり費用をかけずにできる方法なども、自分のYouTubeアカウントでシェアできたらいいかなと。今度は私も使ったことないApple付属のDTMソフト「GarageBand」を使い、ゼロから一緒に曲を作っていく動画コンテンツをアップする予定です。

──最新作となる2ndミニアルバム『Drops』の制作はどのようにして始まったのでしょうか。

AmamiyaMaako:もともとは、私が雑誌『サイゾー』さんに連載中の企画「AmamiyaMaakoのスタジオ入ります」がきっかけでした。最初にお会いしたのがDJ HASEBEさんで、m-floの☆Taku TakahashiさんやKEN THE 390さんなど第一線で活躍されているトラックメイカーやラッパー、プロデューサーの方々に、私がインタビューをするという内容なのですが、そこでお聞きした制作エピソードを踏まえ、そこからインスパイアされた楽曲を並べたのが本作です。

──それはとても貴重な体験でしたね。

AmamiyaMaako:本当にそうなんです。皆さんの秘伝のタレみたいなものを、こっそり教えていただくような感じで(笑)。「へえ! こんなふうに作っていくんだ」みたいに驚くことばかりでした。印象深かったのが、grooveman SpotさんとDJ Mitsu the Beatsさんが似たような手法の話をされていたこと。キックやスネア、ハットの位置をグリッドには置かず少しズラしていくことでグルーヴが生まれるそうで。「そんなこと、やっていいんだ!」と思って「それぞれのストーリーを」という曲の中で試してみました。チルなサウンドなんですけど、私なりに試行錯誤してスネアやクラップをすごく後ろにズラして、ハットを前にするなどしています。

 もうひとつ☆Taku Takahashiさんからは、「異色な要素を組み合わせる」というアイデアをいただき、今回はそれを全曲でやっています。特に1曲目の「Drops」は、ポップになり過ぎないように「毒々しさ」みたいな要素をあえて入れました。「give me summer」もハウスミュージックの要素を入れています。私自身あまりポップ過ぎるサウンドが似合わないというか(笑)。歌詞の内容も、今回はコロナの影響もあって、落ち込んでいる人が少しでも前向きになるようなものになったらいいなと思って、それをテーマにした曲が多いんです。

──確かにそれは感じました。

AmamiyaMaako:コロナだけでなく、SNSを見ていると誰かがバズるとそこにネガティブなリプライを飛ばす人っているじゃないですか。そういうのを最近、すごくよく見るようになったと思っていて。でも他人の批判ばかり気にして自分の言いたいことが言えなくなってしまうのはものすごく嫌だったので、「そんな人たちは放っておこう!」みたいな強いメッセージを含む歌詞もあります。しかも、ただ明るいだけの曲じゃなくて、自分の中のネガティブな気持ちも入れることで、より「私っぽい曲」にしたかったんです。

 以前、スタッフが私の音楽を「創作料理」に例えてくれたことがあるんです。確かに今までになかったような組み合わせ方で「新しい味」を作る、みたいなことはかなり意識していましたね。例えば☆Takuさんは、コードの響きもちょっと不協に感じるようなところがあっても、意外とそれが快感に繋がることもあるので大事にしているとおっしゃっていて。

──ちょっと違和感を覚えるくらい変な響きが入っていたりすると、そこが聴きたくなって気づけばリピートしているようなことってありますよね。

AmamiyaMaako:そうなんですよ。ラッパーのCOMA-CHIさんはラップのリリックも、「わざと何を言っているのか一瞬分からなくさせるのも技法の一つ」とおっしゃっていました。

──その方が、つい耳をそば立ててしまう。

AmamiyaMaako:まさに。

──さっき言っていたように、今作は内省的な歌詞が多い印象です。

AmamiyaMaako:去年の秋くらいから作家事務所に所属することになり、楽曲提供のお仕事をやらせていただくことも増えてきて。そうすると、アーティストやクライアントの希望に基づいて制作することになるので、あまりにも強過ぎる言葉やテーマは扱えないことが多いんですよね。逆に言えば、「そういう曲は私が歌えばいいんだな」という気持ちになってきて。

──なるほど。他アーティストに曲を書くようになったことで、「自分が歌うべきこと」がより明確に見えてきたというか。

AmamiyaMaako:そうなんです。提供曲の場合は「直し」が入ることもあるのですが、「確かに、この子たちが歌うにしてはこの言葉は強過ぎるかも……でも、これはこれで気に入っているから自分で歌っちゃえ」みたいな(笑)。

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