ゲスの極み乙女、ステージ上で提示した結成10年の軌跡と“解体”の真意

 ゲスの極み乙女。は、楽曲を通してリスナーに何かしらの明確なメッセージを届ける、というスタンスのバンドではなく、自分たちとリスナーが音楽を通して共に楽しみ合う体験を、ただただまっすぐに追求し続けているバンドだ。しかし逆説的ではあるが、今回のようなライブを通して、音楽の楽しさ、豊かさ、奥深さ、底知れなさを伝えること自体が、4人が放つ輝かしいメッセージなのだと思う。そして、誰よりも自分たち自身がライブを楽しもうとする4人の姿は、とても輝かしかった。

 ライブの進行と共にステージセットが徐々に「解体」されていき、ライブの開場からはじまったカウントダウン表示も残りわずかな時を刻む。そして「bye-bye 999」の演奏と共にカウント表示は「00:00:00:00」になり、解体された無骨な骨組みを背にした川谷が「ゲスの極み乙女。は、解体します」と告げた。その言葉を聞いた直後は、その真意を掴めずに困惑したが、すぐにメンバーから「解体」という言葉に込められた意味が説明がされた。「解体」とは、つまり、バンド名の句点を外して「ゲスの極み乙女。」から「ゲスの極み乙女」へ改名すること。川谷曰く、「。」=「終わり」をなくすことは永遠になることであり、それは、いつまでも終わることなくこのバンドを続けていく意思表示であった。(ステージ下手の巨大なレンチをクレーンゲームのように操作しながら、ステージ中央にセットされた「。」のオブジェを外す一幕は、メンバーたちの素の表情やメンバー同士の関係性が垣間見えた微笑ましい時間であった)

 その後、新生"ゲスの極み乙女"として、初期の代表曲「ホワイトワルツ」「餅ガール」を畳み掛け、本編ラストの「ドレスを脱げ」では、これまで『NHK紅白歌合戦』を含め何度もステージを共にしてきたでか美ちゃんがステージイン、狂騒のポップ空間の中で美しい大団円を迎えた。(なお、先ほどはドラムの代打を務めた佐藤が、この曲においてはギターを担当して共にフィナーレを彩った)

 アンコールでは、新曲「スローに踊るだけ」を初披露。4つ打ちの力強いリズムを追い風にするようにして、川谷の凛とした歌心が会場全体に広がっていく。そして、最後に披露されたのは、近年の代表曲であり、5月にリリースされた1曲入りベストアルバム「「丸」Best Track」(計25曲を解体・再構築して繋いだ約35分の楽曲)のラストに位置付けられた「もう切ないとは言わせない」であった。数ある楽曲の中でも、メンバーとファンが特に強い思い入れを持つ同曲は、今回のメモリアルな公演を締めくくるにふさわしいナンバーであったと思う。

 最後に川谷は、「これまでの歩みは決して間違いではなかったこと」を心から信じさせてくれたファンに向けて、丁寧に感謝の想いを伝えた。そして、新生"ゲスの極み乙女"として、これからもバンドを続けていく意志を改めて告げた。これまでの10年間がそうであったように、これから続いていく4人の新しい旅路の行く末は、おそらくは本人たちも含め誰も予想できないものになるだろう。だからこそ、次にこのバンドがどのような企みを仕掛けてくるのか、今からとてもワクワクする。引き続き、4人の動向から目が離せない。

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