LUNA SEA、BUCK-TICK、hide with Spread Beaver、MALICE MIZER……仲間との別れの先に届けられた新曲
5月29日、神奈川県秦野市にて初の凱旋ライブを開催したLUNA SEA。ライブのステージには、2台のドラムセットが並んでいた。向かって右側はサポートを務める淳士(SIAM SHADE/BULL ZEICHEN 88)のドラムセット、左側は真矢(Dr)のドラムセットである。2月17日に真矢が旅立ってから約3カ月。LUNA SEAのメンバーも、ファン=SLAVEも、いまだ深い悲しみを抱きながら、決意を持って新たな扉を開いた。
ライブのアンコールで披露されたのが、6年ぶりにリリースされた新曲「FOREVER」だ。J(Ba)が原曲を手掛け、5人のストイックなサウンドとストリングスアレンジが美しい情景を描き出すバラード。10thアルバム『CROSS』からタッグを組んできたスティーブ・リリーホワイトが担ったミックスもあいまって、LUNA SEAのバラードのなかでも特別な雄大さを持つ楽曲に仕上がっている。
制作は前々から始まっていたとのことで、ドラムには真矢の生前のテイクも使われている。タイトでありながら豊かな余韻を持つ温かいビートに耳を傾けると、魂を込めてドラムを叩く真矢の姿が目に浮かぶようだ。真矢のリズムに乗るRYUICHI(Vo)の歌声ものびやかで、特に高音の広がり方など、発声障害を克服して進化した声を堪能できるのもうれしい。
楽曲を繊細に彩るINORAN(Gt)のギターの音色、溢れる想いが伝わってくるSUGIZO(Gt/Violin)の熱いギターソロ、太い芯として支えるベースとパワフルなコーラスが印象的なJ。まっすぐスタンダードなロックバラードだからこそ、5人のありのままの音と生き様を受け取ることができる1曲だ。
リリースに先駆けて公開されたティザームービーで、Jは「歩みを止めないでほしいって真矢くんに伝えられたときに、いろんな意味を持ってるなって俺自身は感じていて」と明かし、INORANは「運命っていうものを受け入れる/受け入れないではなくて、僕らは風を起こさなければいけないし、起こしたい」と語っていた(※1)。
メンバーというかけがえのない存在を失ったあと、どんな道を選ぶのか。それはバンドによってさまざまで、当然正解などない。しかし、ひとつ確かなものがあるとすれば、音楽を通して表現できる感情があるということだろう。LUNA SEAの「FOREVER」がこれからきっと時代を超えて響いていくように、楽曲に込められた想いは多くのリスナーの心を癒していく。
BUCK-TICKは、ボーカリスト・櫻井敦司の急逝後、4人で活動を継続することを表明。“BUCK∞TICK”という名で、第一弾シングル「雷神 風神 - レゾナンス」をリリースした。今井寿(Vo/Gt)が作詞曲を手掛け、ボーカルを担うのは今井と星野英彦(Vo/Gt)のふたり。もともとボーカルを取ることもあった今井に加え、星野も歌うという選択肢は大きなサプライズだった。
今井節とも言えるバキバキのエレクトロサウンド×UKロックに乗せて、ふたりの歌声が力強いメロディとリリックを歌い上げる。〈上昇気流〉という第一声や、〈Rising!! Higher than the sun〉〈FLY HIGH!!〉などのフレーズからは、悲しみや後ろ向きな感情を吹き飛ばし、前に進む意思が伝わってくる。〈この地上で生き抜くことだ〉〈雨に撃たれ生き抜くことだ〉と歌うふたりに、背中を押されたリスナーも多いはずだ。
BUCK∞TICKは、その後フルアルバム『スブロサ SUBROSA』にシングル「渋谷ハリアッパ!」と多彩かつ挑戦的な楽曲群を発表。新体制後の楽曲を軸にライブを行い、そのオリジナリティをさらに研ぎ澄ませている。メンバー自身の胸中は察するに余りあるが、常に唯一無二であり続ける彼らにしかできない決断と言えるだろう。
90年代を振り返ると、思い起こされるのはhide with Spread Beaverの「HURRY GO ROUND」だ。
1998年5月。まさに青天の霹靂と言うべきhideとの突然の別れを経て、完成していたシングル『ピンクスパイダー』『ever free』に続いてリリースされた1曲である。hideの仮歌音源を使用し、メンバー兼共同プロデューサーを務めていたI.N.A.が中心となって制作された。
跳ねるようなテンポと軽やかなメロディはhideの楽曲のなかでもひときわポップで、仮歌ゆえか歌声も柔らかく優しい。さらに、注目したいのは歌詞だ。
〈蔦は絡まり 身は朽ち果てて/思い出の欠片 土に帰り/また 花となるでしょう〉〈また 春に会いましょう〉。音楽は決して途絶えず、巡り巡って何度でも再会できる――そんな想いを感じ、リリース当時、まるでhideからのメッセージのように響いてきたのを覚えている。追ってリリースされたアルバム『Ja,Zoo』収録バージョンの一度フェイドアウトしかけて再び戻ってくるアウトロのアレンジもまた泣けるのだ。
この曲は、2018年にhideのドキュメンタリー映画『HURRY GO ROUND』が制作された際、I.N.A.が別バージョンのボーカル音源を発見し、同年リリースのトリビュートアルバム『hide TRIBUTE IMPULSE』に「HURRY GO ROUND (hide vocal Take2)」として収録された。オリジナルのリリースからは27年半経つが、名曲は本当に時を超えて愛されるのだと実感する。
個性的な音楽性を持つバンドが揃っていた90年代。圧倒的な世界観で今なお熱い支持を集めるMALICE MIZERもまた、喪失を経験したバンドである。
90年代当時の彼らは激動そのものだった。1995年、Gackt(Vo)が加入した第2期スタートとともに大躍進し、傑作アルバム『merveilles』を携えて横浜アリーナ公演を成功させるに至る。しかし、直後にGacktが脱退、翌年にはドラマー・Kamiがこの世を去ってしまう。
クラシックとロック、エレクトロなどを融合させた多様な音楽性を支えたKami。華やかかつ緻密なドラミングだけでなく、愛されるキャラクターがミステリアスなバンドのなかでも大きな存在だった。Kamiへの追悼の意を込めて発表されたのが、Mana(Gt/Syn)、Közi(Gt/Syn)、Yu~ki(Ba)の3人編成で発表されたシングル『再会の血と薔薇』だ。
厳かなパイプオルガンの音色を軸に、シンフォニックに展開していくインストナンバー。5分半の長さで、激しい悲しみと絶望、そして祈りが表現されている。MVでは、黒い服を着た3人の姿と、Kamiが自らのアイコンとしていた蝶の映像が切なくも美しい。その後、Kamiが制作していた楽曲や残したドラムの音源を使用したアルバム『神話』もリリースされた。
すべての楽曲は、もう戻れない過去への想いを抱きながら、残された者たちが次の一歩を踏み出した証と言ってもいい。その意味では、すぐに聴く勇気が出ない人も多いだろう。「最後の音源」などと謳われると、どうしても身構えてしまうものだ。しかし、音楽はずっと待っていてくれる。いつか聴きたいと思ったときに再生し、曲に込められた想いを共有して、未来へ繋いでいってほしいと願う。
※1:https://www.youtube.com/watch?v=uR7ttXpDXYI
























