ILLITがGLLITと守り抜いた“5人”のステージ 初ツアー『PRESS START︎︎❤』で証明した日進月歩の実力

ILLIT、守り抜いた“5人”のステージ

 ILLITにとって初のライブツアー『ILLIT LIVE 'PRESS START︎︎❤' in JAPAN』の東京公演最終日、7月26日。会場となったTOYOTA ARENA TOKYOの開演前のスクリーンに映し出されていたのは、ゲームのスタート画面を思わせるピンク色の「PRESS START」の文字。これから始まる物語への期待を高めるなか、ライブは幕を開けた。

 ゲームのような趣向は公演全体にも通底しており、楽曲に合わせて教室やバスケットコートなど、さまざまな空間がステージに立ち現れる。誰かを好きになる胸の高鳴りや嫉妬、友達と過ごす無邪気な時間。ILLITの楽曲に描かれてきた日常の感情を、次々と場面が切り替わるカラフルな世界のなかで見せていくことが、今回のライブの大きな軸になっていたように思う。

ILLIT (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

 ライブは、ILLITを広く知らしめた「Magnetic」で幕を開けた。WONHEEが「みんな、声出してー!」と呼びかけると、客席から大きな歓声が返り、「IYKYK (If You Know You Know)」へとなだれ込む。スタンドマイクを使った「bamsopoong」、メンバー同士で手をつないだ「Bubee」と続き、序盤からILLITらしい軽やかさと親密な空気が会場を満たしていった。「Cherish (My Love)」の前には、GLLIT(ファンの呼称)へ向けたメッセージ映像が流れ、「I’ll Like You」では客席から大きなコールが巻き起こる。MINJUが「大好きだよ!」と伝えると、それ以上の熱量でGLLITの思いが返ってきた。メンバーが言葉や歌を届け、GLLITが声で応える。その往復が、活動休止中のMOKAの思いを背負ったYUNAH、MINJU、WONHEE、IROHA――4人で臨むこの日のステージを支える力になっていた。

YUNAH (P)&(C) BELIFT LAB Inc.
YUNAH

 特に印象的だったのが、教室を模したセットでの「Pimple」から「Almond Chocolate」へと続くブロックだった。「Pimple」では、机に座った4人がそれぞれ手紙に書いたメッセージを掲げていく。その手紙はのちのMCでカプセルに収められ、客席へと届けられた。続く「Almond Chocolate」は、しっとりとしたアレンジで披露。IROHAが「ぜひ一緒に歌ってください!」と呼びかけると、会場いっぱいにGLLITの歌声が広がり、そのなかにはMOKAの名前を呼ぶ声もあった。ステージに立つ4人を応援しながら、5人のILLITを思う気持ちも一緒に分かち合う。メンバーとGLLITがともに楽曲を届ける、その関係性がよく表れた時間だった。

MINJU (P)&(C) BELIFT LAB Inc.
MINJU

 ILLITについては、「Magnetic」に代表される軽やかで愛らしいイメージから語られることが多い。しかし、ライブを通して観ると、その表現の幅は想像以上に広い。「jellyous」では“嫉妬”という感情を細かな表情とダンスに落とし込み、YUNAHとMINJUによる「Desperate」では、黒の衣装をまとってクールなムードを作り出した。一方、WONHEEとIROHAは、水色のスポーティーな衣装で「Scrum」を披露。スクリーンに広がるバスケットコートを背景に、爽やかなユニットステージを展開した。かわいさをひとつの型として提示するのではなく、嫉妬や焦り、無邪気さ、力強さまで、少女たちの感情を目まぐるしく切り替えていく。それがILLITのライブにおける面白さなのだろう。

WONHEE (P)&(C) BELIFT LAB Inc.
WONHEE

 チアリーダーを思わせる衣装での「時よ止まれ」から「Tick-Tack」へと続き、MINJUがセットの電話から電話をかけると「Midnight Fiction」がスタート。ステージは、メンバーの日常を覗き込むような空間へと変わった。「GRWM (Get Ready With Me)」では、IROHAとWONHEEが「TOKYO」と書かれたメガネで遊び、IROHAがYUNAHをおんぶする場面も。「Sunday Morning」の終盤には4人で抱き合った。用意された演出のなかに、メンバーの素の関係性が自然と溶け込んでおり、振付とじゃれ合いの境目が曖昧になる瞬間にこそ、ILLITが持つ柔らかな魅力がよく表れていた。

IROHA (P)&(C) BELIFT LAB Inc.
IROHA

 「Billyeoon Goyangi (Do the Dance)」「NOT CUTE ANYMORE」「Lucky Girl Syndrome」と畳みかけたのち、「I Got Your Back (Feat. JISOO, MOMOKA of HANA)」ではHANAのJISOOとMOMOKAが登場。WONHEEはMV撮影を「学校の部活をしているような感覚で、撮影だということも忘れてしまうくらい楽しかったです」と振り返った。同世代のメンバーが集まったからこその無邪気な空気が、そのままステージにも流れ込んでいたように感じられる。続く「NOT ME」「It’s Me」では、自分自身を肯定するような力強さも見せ、愛らしさだけではないILLITの現在地を印象づけた。

ILLIT & HANA (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

ILLIT & HANA (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

 アンコールでは、4人がアリーナ後方から登場。「Mamihlapinatapai」を歌いながら客席のあいだを進み、GLLITのすぐ近くでパフォーマンスを届けた。ステージ上からでは見えなかった一人ひとりの表情をたしかめるように手を振り、会場の隅々まで感謝を伝えていく。初めてのツアーをともに歩んできたGLLITとの距離が、物理的にも、気持ちの上でも近づいていく時間だった。

ILLIT (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

 最後の挨拶でIROHAは、日本での『PRESS START︎︎❤』が終わる寂しさを口にしながら、「GLLITの皆さんに出会うことができて、すごく楽しい期間でした。こんなに楽しい時間を一緒に過ごしてくださって、本当にありがとうございました」と感謝を伝えた。WONHEEも、客席から向けられたきらきらとした眼差しや大きな声援に触れ、「私たちの初めてのツアーを一緒に過ごしてくれて、ありがとうございます」と思いを言葉にする。3日間にわたって大きな会場が埋め尽くされた光景をMINJUは「幸せな夢を見ているようでした」と振り返り、「皆さんからいただいた愛を当然のことと思わず、これからたくさんお返ししていきたいです」と約束した。この日、家族や友人が会場を訪れていたというYUNAHは、「こんなにかっこいい姿を見せることができて、本当に幸せです」と笑顔を見せる。それぞれの言葉には、4人でこの公演を届け切った安堵と喜び、そして変わらず支えてくれたGLLITへのまっすぐな感謝が滲んでいた。

ILLIT (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

 ラストは、ILLITのライブで恒例となった「oops!」。一度では終わらず、GLLITの声と熱気に応えるように、印象的なフレーズを何度も繰り返していく。メンバーも客席も最後まで全力で楽しむ、“終わらない「oops!」”は、『PRESS START︎︎❤』をともに作り上げてきたILLITとGLLITだけが作り上げることのできる光景だ。東京最終日では、その繰り返しが日本ツアーの終幕を惜しみながら、次に会える日を約束しているようにも映った。

 『PRESS START︎︎❤』は、ゲームの始まりを告げる言葉である。初のツアーを終えた今も、ILLITにとってはまだ物語の序盤。4人で守ったステージに、客席からMOKAの声が加わり、5人の音楽になっていく。その光景を見て、ILLITの次のステージは、すでにGLLITとともに始まっているのだと思えた。

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