LiSAの11年は挑み続けた“今”の連なりだーーミニオン登場、新曲「NEW ME」も初披露した武道館ワンマンを観て

LiSA、9度目の武道館ワンマンレポ

 LiSAのソロデビュー11周年スタートとなる、4月20日に開催された『LiVE is Smile Always~Eve&Birth~』日本武道館2日目公演は、LiSAにとって9度目の武道館ワンマンでもあった。MCで言及があった通り、武道館は彼女がアーティストとしてデビューする前から憧れていた場所。11周年を迎えた今、LiSAは「ただいま、武道館!」と笑い、堂々とステージに立っていた。LiSAの11年とは、答えのない答えを求めて、打ちのめされても挑み続けた“今”の連なりだ。晴レの日もあれば嵐の夜もあったし、光を目指して道を進めばヘドロが足にまとわりついた。時にルートを見失い、思考がディストーションしてしまうこともあっただろう。しかし、経験一つひとつを血肉としていったからこそ、今この会場をびっしり埋める観客を魅了できている。相変わらず涙もろいし、ladyになってもrapidだし、客席を愛おしそうに見渡している時の穏やかな表情も変わらない。武道館に棲む魔物の正体が大舞台に対するプレッシャーや不安だとしたら、きっと魔物がいなくなることはないだろう。しかし今のLiSAなら魔物とも一緒にパレードしちゃえるし、何ならステップを踏み始めそうな感じだ。どんな僕だってちょっと愛してみようと、変わらないまま変わっていった先で、武道館をホームと思えるようになった。それはどんなに尊いことか。

 しなやかで凛としたボーカルのみならず、バンドが鳴らすタイトなリズムや演者の顔をあえて見せない照明演出も相まって、緊張感溢れるオープニングとなった「往け」。ライブで育ったアッパーチューン「ROCK-mode'18」。観客とともに振り付けを楽しむポップでキュートな「say my nameの片想い」。青空をバックに爽やかに歌い上げた「晴レ舞台」。LiSA、生本直毅(Gt)、PABLO(Gt)、柳野裕孝(Ba)、石井悠也(Dr)、白井アキト(Key)、岩村乃菜(Cho)、ダンサーのyUkA、risako、Peco、NOSUKEの11名によるステージは冒頭から多方面に大胆に振り切れている。それは未体験な宇宙空間? いや、沈まぬ遊覧船にいつの間にか乗せられていた、と言った方がきっと正しいだろう。LiSAの大好きなミニオンが登場した11曲目の「Merry Hurry Berry」を終えるまでほぼノンストップ。全国ツアー『LiVE is Smile Always~紅蓮華~』(2019年)以降さらに研ぎ澄まされた、多彩でアクロバティックなだけでなく繊細さも伴うボーカル。オンラインライブ『ONLiNE LEO-NiNE』(2020年)や多数の音楽番組出演を経験したことでさらに磨かれた、歌だけでなく所作や表情も含めて楽曲を表現する魅せ方。それらがフルに活かされたパーフェクトなステージだ。

 明日のことなど考えず、身を捧げるようにライブをしていた頃とは違い、適度にリラックスしつつキメるところはバシッとキメる、メリハリのあるステージングで観客の心を掴むのが今のLiSAだ。「まだまだみんなとやりたいこと、いっぱいあるんだよ。ホントは声出したり、下に降りていってみんなに会いに行ったりさ。でも、やれないことを数えたってしょうがない。2022年4月20日は今日しかないんだよ!」という想いの下、長年のファンも初めてLiSAのライブに来た人も、老若男女誰でも楽しめる空間を志向する姿がそこにはあった。

 また、記念日ならではのポイントとして、過去・現在・未来を一本線で繋ぐような、愛を以って歴史を辿るようなテンションがこのライブにはあった。例えば、「rapid lady ハレーション」は「rapid life シンドローム」とのマッシュアップアレンジで披露。また、これまでリリースした様々な楽曲をリミックスしたようなSEから「紅蓮華」が始まった場面も印象的だった。「紅蓮華」はLiSAの存在が世に広く知られる一つのきっかけとなった曲だが、いわゆるラッキーパンチではなく、それまでの彼女の活動が導いた幸福であったことはLiSA自身も、そして彼女を見てきたファンやスタッフも感じていたことだろう。生身の言葉、生身の歌しか歌ってこなかった11年を具現化したような演出は感動的だった。

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