LiSAの11年は挑み続けた“今”の連なりだーーミニオン登場、新曲「NEW ME」も初披露した武道館ワンマンを観て

LiSA、9度目の武道館ワンマンレポ

 『ONLiNE LEO-NiNE』を彷彿とさせる照明演出があった「cancellation」では、久々にエレキギターを手に取った。曲を作る時くらいしかギターを触らないと言っていた彼女がギターボーカルに初めてトライしたのは全国ツアー『LiVE is Smile Always ~Launcher~』(2015年)の頃で、「不器用な私が何かに挑戦する姿を見せることで誰かを勇気づけられるかもしれない」という趣旨の発言を度々していたが、「cancellation」のサビを歌いながらギターを鳴らす姿を見る限り、今はトライというよりも、一種の表現としてギターボーカルを選び取っているように見える。幕張メッセ公演『LiSA LiVE is Smile Always~メガスピーカー~』(2015年)以降、骸骨の模型を用いた官能的な演出が取り入れられるようになったのは「DOCTOR」で、ステージに骸骨がセッティングされた時、内心ドキッとした人も多かったのではないだろうか。また、初期曲の「say my nameの片想い」や「EGOiSTiC SHOOTER」が演奏された時には客席からどよめきが。中でも多様な声色を駆使しながら自由に歌う「EGOiSTiC SHOOTER」での歌唱は、2012年当時にはできなかったもの――もっと言うと“「GL」以降のLiSA”という印象があり、だからこそ「EGOiSTiC SHOOTER」と「GL」を並べたセットリストには説得力があった。

 人生とは選択の連続。集めた一秒がもたらした未来もあれば、予期せず回収された伏線もある11年だった。そんなことを感じさせるライブの1曲目に「往け」が選ばれたのは合点がいく。自身を奮い立たせるためのまじないとしての“いけ”から、意志を伴った“行け”、そして帰る場所があるからこそ言える“往け”へ(※1)。願い続けて、怖れないで、謳い続けた“今”が積み重なり、11年になった。冒険映画とは遠い毎日だったかもしれないが、点が線になったのは、一生懸命生きた証がおみやげになったのはここまで進んできたからこそ。そして“こんなことがあったよね”という話ができる今がある。ライブ終盤、アカペラから始まるアレンジで届けられた「Catch the Moment」は“今”に対するLiSAの切実な想いが表れた曲だ。スクリーンに映るLiSAの瞳は涙で潤んでいる。彼女の心の中には泣き虫な少女がやはり住んでいるようだが、晴れやかな表情からは充実感が読み取れたし、沸いた感情を乗せながら、しかし全くブレない歌声からはシンガーとしての成長を感じた。

「今まで忘れたい瞬間がたくさんあって。でもそれ以上に、忘れたくない瞬間がたくさんあって。そのどの瞬間も見逃さず、音楽で、言葉で、ライブで表現してきました。(観客の気持ちを受け取るように、長い拍手が止むのを待ってから)今日まで歩いてこれたのは、この最高な瞬間を作ってくれるみんながいたからです。大切な日に来てくれて本当にありがとうございました。今日までの11年を誇りに、私、LiSAはまだまだ行きます。そんな手紙を書きました」

 最後に届けられたのはこのツアーで初披露の新曲「NEW ME」だ。過去の自分に語りかけるようなやさしい曲は、同時に「(武道館に9回立ったということは)9回も夢を叶えられたんだから」と頼もしい言葉が飛び出すのも納得の、さらなる未来を掴みに行こうと宣言する曲でもあった。そう。次の朝日は顔を出しているのだ。全曲を歌い終えたあと、その場にへたり込んだ彼女が「みんなの顔を見て安心しました。ありがとうございます!」と笑う。「私は私の道を、あなたはあなたの道を、行け! そしてその先で、未来で、また季節が変わる頃に会おうね!」と想いは今手渡された。不安定なこの世界で確実なことなんてないけど、“今日の日を楽しもう”と“明日の日も楽しみ”を胸を張って重なれば、約束は魔法になり、未来へ続く道になる。こうして次の1年がまた始まっていくのだ。

※1:https://natalie.mu/music/pp/lisa18

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