野宮真貴、幅広い世代とつながる意欲的な表現へ 振り返りではなく“始まり”として迎えた40周年を語る

野宮真貴、始まりとして迎えた40周年

ポータブル・ロックとしての新曲を今作った意味

ーー続く「大人の恋、もしくは恋のエチュード」は、カジヒデキさんが作詞、高浪慶太郎さんが作曲と、渋谷系世代にとっては感涙モノなんですが、実はこの組み合わせ自体が珍しいですね。

野宮:高浪さんの曲を歌うのは、1993年以来ですね。昔はよく高浪さんの曲に私が歌詞を書いていたんですけれど、今回はここしばらくずっと共演なども多かったカジくんに青春っぽい歌詞を書いてもらえたらぴったりだなと思ってお願いしました。

ーー曲調はソフトロックっぽくてピチカート時代を思い出しますし、歌詞も当時の渋谷系の雰囲気があります。

野宮:お二人にはコーラスでも参加してもらったんです。声の相性がすごく良くて素敵なハーモニーになりました。

ーーさらに野宮さんのキャリアを遡るように、ポータブル・ロックとしての新曲「Portable Love」も嬉しい一曲です。

野宮:ソロデビューしたときのバックを務めてくれていたのが、中原信雄さんと鈴木智文さんで、そのまま3人でユニットを組んだのがポータブル・ロックの始まりです。鈴木慶一さんがご実家にホームスタジオを作られて、「デモテープ作ってもいいよ」と言ってくださったので、通っていたことを思い出します。80年代に2枚アルバムを作ったけれど、あまり売れませんでしたね(笑)。並行して他のアーティストのコーラスなんかもやってて、その流れでピチカート・ファイヴに浮気しちゃったんです(笑)。でも実は解散していないんですよ。

ーーこの曲はキラキラした80年代当時の空気感を思い出します。

野宮:イギリスにKero Kero Bonitoっていう、同じく男女3人組のバンドがいて、ポータブル・ロックに影響されたって公言しているんです。そういった80年代ニューウェイヴ風のサウンドは、今また新鮮みたいですね。そういうこともあるから、ぜひコラボしたいなって思いました。そうそう、ポタロク名義で5月には40周年ベストアルバムをリリース予定です。新曲も2曲作りましたよ。

ーーそして、佐藤奈々子さんが作詞、鈴木慶一さんが作編曲・プロデュースという「美しい鏡」は、まさにソロデビュー当時と同じスタッフワークでの原点回帰といえます。

野宮:この曲は、ムーンライダーズのメンバーも参加してくださっています。彼らの中に混じっていると、みんな「真貴ちゃん」って呼んでくれるし、いちばん年下になるから若返りするのにいいなって思います(笑)。そしてまったく心配することなくいい曲になりました。

ーーこうやって聴いてみると、野宮さんはスタッフワークに恵まれているし、どれもしっかりとご自身の音楽に昇華されていたんだなと感じます。

野宮:確かにこれまではとても恵まれていたと思いますし、それと同じように今回の『New Beautiful』にも愛を込めて参加してくださいました。

ピチカート・ファイヴとNight Tempoに共通する、音楽へのリスペクト

ーー最後には、鈴木雅之さんとのデュエットによる「夢で逢えたら」と、小西康陽さん、矢舟テツローさんも参加した「サンキュー」という2曲のライブテイクも収められていて、ここ最近の活動に対するひとつの区切りのような作品になっていますね。それと同時に新曲もたっぷり入っていますし、未来に向かっているように感じます。

野宮:確かにそうですね。振り返っている部分もありますが、どちらかというと、「これから新しい何かが始まる」という感覚です。私はだいたい10年ごとにターニングポイントがあって、ソロデビュー、ピチカート・ファイヴへの加入、そして解散と、いろんなことがありました。その間には海外デビューもあったけれど、慣れない英語で歌ってみるとか無理なことは全然していないんです。今まで自然体で活動してこられたのは、本当にラッキーだったと思います。このアルバムも自然体でいたからできたアルバムだし、ターニングポイントの1つなのかもしれませんね。

ーー今の海外デビューの話を聞いて思ったのは、昔から海外デビューを目指して英語で歌ってみたけれど結果が出ないとか、そういった事例はたくさんありましたが、ピチカート・ファイヴは日本での活動をそのまま海外に持っていって受け入れられたじゃないですか。それって、最近のシティポップが海外で再評価されているのと一緒で、無理に海外で売ろうとしているのではない。そういう意味でも、ピチカートの海外でのブレイクと今のシティポップ・ブームには共通するものがあると思います。

野宮:そう。共通するものは「リスペクト」ですかね。自分が好きなリスペクトする音楽を公言して、それをサンプリングとかリミックスで取り入れて、自分の音楽を表現する。ピチカートとNight Tempoはそこが共通しています。そして、海外だからといって、変に媚びたりしていませんでしたから。シンプルに愛とリスペクトを音楽で表現するだけです。今は嬉しいことに、YouTubeで「#東京は夜の七時」を検索すると、ピチカート・ファイヴ時代の曲を歌ってくださっている海外のミュージシャンもたくさんいます。キューバのバンドがラテンアレンジで「東京は夜の七時」をカバーしていたりとか。そういうのを目ざとく見つけては、コメントを書き込んだりしています(笑)。でもこういうことからつながっていけるというのは、本当にいい時代だなって思いますね。

ーーそうなると、またピチカート・ファイヴ時代のように海外ツアーもしていただきたいって思います。

野宮:それは本当にやりたいと思っています。今はコロナ禍で難しいけれど、今回コラボレートした海外のアーティストやYouTubeでつながったミュージシャンの方もたくさんいるので、近いうちに実現したいですね。

ーー初回限定盤のブックレットもかなりこだわりがあるようですね。

野宮:そうなんです。ブックレットには、私のデビューから今までのいろんな写真が入っているんですけど、一度も公に出したことないようなデビュー時の紙焼き写真も引っ張ってきてきました。ピチカート時代のジャケットを撮影してる風景のスナップ写真とかも入っているので、買うなら絶対に初回限定盤がオススメ。

ーーそれは楽しみですね。

野宮:ジャケットアートワークも“New Beautiful”な自分を表現したくて、初めてご一緒する方にお願いしました。長年通っている洋服屋さんのデザイナーさんなんですけど、アートワークの中でいろんな過去の私がコラージュされているんです。

ーーなるほど。そして、さらにビルボードライブ公演『野宮真貴 40th Anniversary Live』も控えていますが、これはどういうライブになりそうですか。

野宮:大阪、東京で3日間あるんですが、3日ともゲストが違うんです。みなさんアルバムに関わってくださった方だし、メニューも少しずつ変える予定なので、自分でもすごく楽しみにしています。チケットはソールドアウトなんですけど、4月29日の剣さんゲストの回では生ライブ配信をしますので、地方にお住いの方もぜひ。あとカジヒデキさんが4月30日のライブに緊急友情出演してくれることが決定しました。

ーーじゃあ、ライブまでにニューアルバム『New Beautiful』をしっかりと予習していったほうがいいですね。

野宮:はい、ぜひ聴いてください!

■リリース情報
New Album『New Beautiful』
2022年4月20日(水)CD発売
初回限定盤:CD+Blu-ray+ブックレット ¥8,030 (税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VIZL-2055.html
通常盤:CD ¥3,300(税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VICL-65698.html
*iTunes Store ほか主要配信サイト、音楽ストリーミングサービスにて後日配信予定
2022年5月25日(水)アナログ盤発売
アナログ:LP ¥4,950(税込)

<収録内容>
1「東京は夜の七時(feat. Night Tempo)」
作詞・作曲:小西康陽、編曲:Night Tempo
2「陽の当たる大通り(feat. Phum Viphurit)」
作詞・作曲:小西康陽、編曲:Phum Viphurit
3「スウィート・ソウル・レヴュー(duet with Rainych, feat. evening cinema)」
作詞・作曲:小西康陽、編曲:evening cinema 
4「CANDY MOON」
作詞・作曲・プロデュース:松尾レミ、編曲:GLIM SPANKY 
5「おないどし」
作詞・作曲·プロデュース:横山剣、編曲:CK, Nossan, Wakaba & Park 
6「大人の恋、もしくは恋のエチュード」
作詞:カジヒデキ、作曲・プロデュース:高浪慶太郎、編曲:高浪慶太郎&森山輝一
7「Portable Love」
作詞:野宮真貴、作曲・編曲·プロデュース:ポータブル・ロック
8「美しい鏡」
作詞:佐藤奈々子、作曲・編曲・プロデュース:鈴木慶一
9「夢で逢えたら(duet with 鈴木雅之)」from『野宮真貴、還暦に歌う。』ライブ
作詞・作曲:大瀧詠一、編曲:スパム春日井
10「サンキュー」from『野宮真貴×矢舟テツロー ~うた、ピアノ、ベース、ドラムス』ライブ
作詞・作曲:小西康陽、編曲:矢舟テツロー、演奏:矢舟テツロー・トリオ

<初回限定盤 付属Blu-ray 収録内容>
『野宮真貴、還暦に歌う。』華麗なるダイジェスト
01 スウィート·ソウル·レヴュー
02 東京は夜の七時
03 中央フリーウェイ(作詞作曲:荒井由実)©1976 by ALFA MUSIC, INC.
04 三月生まれ
05 T字路 (ゲスト:横山剣)
06 渋谷で5時(ゲスト:鈴木雅之)
07 Twiggy Twiggy
08 陽の当たる大通り
<MUSIC VIDEO>
東京は夜の七時(feat. Night Tempo)  
陽の当たる大通り(feat. Phum Viphurit)
スウィート・ソウル・レヴュー(duet with Rainych, feat. evening cinema)

<各チェーンオリジナル特典>
・TOWER RECORDS 全国各店、TOWER RECORDS ONLINE特典:オリジナルポストカードA type
・HMV全国各店、HMV & BOOKS online特典:オリジナルポストカードB type
・Amazon.co.jp特典:オリジナルポストカードC type
・楽天ブックス特典:オリジナルポストカードD type
・VICTOR ONLINE STORE限定特典:オリジナル·ポストカードE type

■ライブ情報
【ビルボードライブ大阪】(1日2回公演)
2022年4月24日(日)
1stステージ 開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ 開場18:30 開演19:30
サービスエリア¥8,500
カジュアルエリア¥7,900(1ドリンク付)
※ご飲食代は別途ご精算。
チケット予約はこちら

【ビルボードライブ東京】(1日2回公演・2DAYS)
2022年4月29日(金・祝)
1stステージ 開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ 開場18:30 開演19:30
2022年4月30日(土)
1stステージ 開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ 開場18:30 開演19:30
サービスエリア¥8,500
カジュアルエリア¥7,900(1ドリンク付)
※ご飲食代は別途ご精算となります。
チケット予約はこちら

■関連リンク
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