桑田佳祐、ステージにかける強い思い 『BIG MOUTH, NO GUTS!!』ツアードキュメンタリーフィルムが映したもの

桑田佳祐、ステージにかける強い思い

 桑田佳祐のLIVE Blu-ray & DVD『LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」』が4月6日にリリースされた。最新EP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』(2021年9月15日発売)を伴って行われた有観客アリーナツアー『桑田佳祐 LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」』(全国10カ所20公演)から、さいたまスーパーアリーナ公演の模様を中心に収録された映像作品だ。

 長引くコロナ禍のなか、変化し続ける状況に適応しながら、全公演をやり遂げた桑田。“ごはんEP”の収録曲はもちろん、数多くの名曲や代表曲、“この時代にこそ届けたい”という思いで選ばれた楽曲によって構成されたセットリスト、そして、切実なメッセージ性と華やかなエンターテインメントを共存させたステージを追体験できる、記念碑的な作品に仕上がっている。

 さらに完全生産限定盤のボーナスディスク「まんぷくディスク」には、ドキュメンタリーフィルム「Documentary of BIG MOUTH, NO GUTS!!」を収録。2021年9月18日の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ公演から12月31日の横浜アリーナでの年越し公演まで、コロナ禍におけるコンサートの在り方を模索しながら駆け抜けた桑田、バンドメンバー、スタッフ、そして、各会場に足を運んだ観客の姿を刻んだ意義深いドキュメント作品だ。

 まず印象に残るのは、一切の妥協なく、ライブのクオリティを追求し続ける桑田の姿勢だ。楽曲のアレンジ、演奏のニュアンス、演出などを含め、全体像を俯瞰しつつ、詳細な部分にまでこだわる姿は、まさにアーティストシップの塊。オープニングSEを「威風堂々」(E.エルガー)に決めたり、「本当は怖い愛とロマンス」におけるダンサーの衣装と振り付け、ライティングや映像に至るまで、ツアー中にも数多くのアイデアが生まれ、ライブ全体がブラッシュアップされていく様子がリアルに映し出されているのだ。ドキュメントにはバンドメンバーのインタビューも収められていて、そのなかには「桑田さんは全体から細かいところまで、すべてを見ているプロデューサー」という声も。仙台でツアーをスタートさせたこと、「どん底のブルース」を歌ったこと、ツアーの途中から「真夜中のダンディー」をセットリストに加えたこともそうだが、すべてに意味があり、深いメッセージが込められていることにも注目してほしい。

 また、バンドメンバーやスタッフに要望を伝える際の、桑田の丁寧な物言いと態度も心に残った。「こうしたらいいと思ったんだけど、どうかな?」という言い方で担当者の意見を聞きながら、チーム全体で変更点や問題点を共有しながら、ライブの質を上げようとするスタンスには、彼のあまりにも誠実な人間性が如実に表れていたと思う(女性ダンサーの指導のもと、全員でストレッチや運動をする映像もあったが、これも「みんなで一緒にやるのが大事だと思うんだよね」という桑田の思いから行われていたのだとか)。

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