桑田佳祐、ステージにかける強い思い 『BIG MOUTH, NO GUTS!!』ツアードキュメンタリーフィルムが映したもの
筆者は初日の仙台公演とファイナルの横浜公演を会場で観る機会に恵まれたのだが(もちろん、どちらも最高のライブだった)、アレンジ、演出、バンドの一体感を含め、ライブ全体の印象はかなり違っていた。ドキュメント映像を観たことで、「なるほど、ここまでディテールにこだわっていたのか」と納得できたと同時に、桑田のステージにかける思いの強さに心を打たれた。
言うまでもなく、根底にあるのは、オーディエンスに対する感謝の気持ちだ。昨年の9月から12月は、コロナ禍の第5波の最中。初日の仙台は運よく緊急事態宣言からまん延防止措置に移行したタイミングでの開催となり、その後、少しずつ感染者数は減ったものの(名古屋公演では、初めて100%のフルキャパで観客を収容した)、まったく予断を許さない状況に対応しながらツアーは行われた。観客は“声出し禁止”“マスク着用”などのルールを守り、拍手、手拍子、笑顔でステージを楽しんでいたが、その姿は桑田自身にも大きな感動を与えたようだ。愛媛公演直後には「お客さんの気持ちが伝わってきて、泣きそうになりました」とコメント。また、「“ありがとう”の気持ちは、言葉よりも、歌で伝えたい」という言葉も印象的だった。ドキュメント映像には観客のインタビューもあり、ツアーを開催してくれたことへの感謝、「ライブに来られてよかった」「元気をもらった」という声からは、このツアーがもたらした意義をはっきりと感じ取ることができた。
仙台公演の終了後に打ち上げられた花火を楽しみ、広島公演では“尾道ラーメン”のケータリングの列に並び、名古屋の商店街でフクロウの置物を購入し、バンドメンバーにアナログレコードをプレゼントし、横浜アリーナのバックステージで原由子(サザンオールスターズ)と一緒に「年越しはいつもここだよね」と言い合いながら年越しそばを食べるなど、ツアー中のあれこれもたっぷり収録。リハ中の真剣で鋭い眼差しとステージに立ったときの“千両役者!”的な笑顔のギャップを含め、桑田佳祐の本質が浮き彫りになった本作。ぜひ、本編のライブ映像とともに堪能してほしいと思う。
サザンオールスターズ オフィシャルサイト
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