LOVE PSYCHEDELICO、ライブ作品で追体験するサウンドメイクの進化 20周年ツアーで突き詰めた最高峰のステージ

デリコ、ライブ作品で描くサウンドの進化

 長い音楽活動の先には一体何が待っているのか。2020年にデビュー20周年を迎え、ベストアルバム『Complete Singles 2000-2019』を携えての全国ツアー『20th Anniversary Tour 2020』を予定していたLOVE PSYCHEDELICO。そのステージに立つ前に、KUMIとNAOKIが図らずして直面したのは、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う約1年に及ぶツアーの延期だった。このツアーは、2019年に独自に制作・設計し、初のアコースティックツアー『LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019』で初披露した会場用の高音質カスタムスピーカーをバンドセットのライブに応用する新たな試みが予定されていたが……全ての音楽家がそうであったように、LOVE PSYCHEDELICOはステージと客席が音楽を介してエネルギーを交換し合うコミュニケーションの場としてのライブ、その重要性をコロナ禍によって再認識させられることとなった。

 この逆境下において、音楽の現場ではライブ配信が劇的な進化を遂げた。複数台のカメラをスウィッチングしながら、高画質のライブ映像が安定的にストリーミングされるようになり、ストリーミング用にリアルタイムでマスタリングするエンジニアを導入する現場が増えたことでその音質も飛躍的に向上。この2年でライブ配信はエンターテインメントの1つのジャンルになったが、この期間、NAOKIはLOVE PSYCHEDELICOがスピーカーを導入するきっかけとなった映画館、TOHOシネマズの依頼を受け、立川立飛をはじめ、全国各地のTOHOシネマズの音響監修を担当。会場の特性に合わせたチューニングを施すことで、実際の会場での音響を向上させるスキルと経験を蓄積していった。

 そして、1年の延期を経て、2021年5月15日の埼玉・三郷市民文化会館から再スタートした、9都市10公演の『20th Anniversary Tour 2020』はサブウーファーを含めて、左右14発のスピーカーとそれに対応したハイレゾのPAミキサー、そして彼らがスタジオで使用しているスピーカーをモニタースピーカーとして足元に設置。さらにNAOKIがライブ当日の朝から会場入りし、会場の音響調整を行うという、これまでにない万全の体制で繰り広げられた最高のパフォーマンスが、3月30日にリリースされたライブ映像作品『20th Anniversary Tour 2021 Live at LINE CUBE SHIBUYA』には収められている。

 デビュー以前のLOVE PSYCHEDELICOは、ライブ経験もほとんどない2人組。バンドを結成するため、学生時代に制作したデモをほぼそのまま収録したものが1stアルバム『THE GREATEST HITS』(2001年)であり(※1)、ミリオンセラーを記録している。デビュー直後、右も左も分からない状況での大ヒットを経て、想像だにできないプレッシャーを抱えながら大舞台に立ち、パフォーマンスを重ねてきたことだろう。1年遅れながら、そんなLOVE PSYCHEDELICOのデビュー20周年を記念したツアーは、2019年にリリースしたベストアルバムを軸に、代表曲である初期の「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~」「Your Song」「Last Smile」から、2020年に配信で発表した最新シングル曲「Swingin'」まで、その長い軌跡を網羅したグレイテストヒッツ・ツアーであったが、演奏は過去をなぞったもの、経年変化を感じさせるものではなく、楽曲に宿る気迫、その瑞々しい響きが現在進行形の音楽であることを雄弁に物語っていた。パンデミック下ということもあり、客席から声が上げられない状況下ではあったが、ステージ上の演奏と、それに対してハンドクラップや体を動かすことで応えるオーディエンスのリアクションが相互に作用し合うことで、会場の空気が濃くなっていくようなテンションの高まりが、今回のライブ作品から感じられるはずだ。

LOVE PSYCHEDELICO – Swingin’(20th Anniversary Tour 2021 Live at LINE CUBE SHIBUYA)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる