LOVE PSYCHEDELICOの濃密なパフォーマンス アコースティックライブツアー東京公演レポ
LOVE PSYCHEDELICOが9月25日に東京・EX THEATER ROPPONGIにて、アコースティックライブツアー『LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019』の東京公演を行った。
この「TWO OF US」は、KUMIとNAOKIが不定期で行ってきた2人だけのプレミアムなアコースティックライブで、今回、独自に設計、製造した高音質の会場用スピーカーを持ち込み、全国18都市20公演を行う初のツアーへと発展。5月の横浜公演から4カ月に渡って演奏を重ねてきた彼らは万全の状態でステージに登場すると、着席スタイルで行われたライブは、2人がいるリビングルームに招かれたような、親密なムードが広がった。
そして、歌の息遣いや弦の残響音、衣擦れさえも聞こえてくるほどの高音質な音響も相まって、彼らの演奏は本当に素晴らしかった。KUMIの柔らかい歌声と2本のアコースティックギターのハーモニーが美しい「Birdie」やLed Zeppelinの名曲「Kashimir」と同じDADGADチューニングのギターがエキゾチックに響いた「Hit the road」。新調したビンテージのリズムボックスを用いた「Favorite Moment」やNAOKIがボーカルをとったEagles「Take It Easy」のカバーなど、LOVE PSYCHEDELICOの歴史を彩る楽曲の数々を披露。気の遠くなるような多重録音で作り上げられた原曲を極限まで削ぎ落としたミニマムなアコースティックアレンジがむしろ彼らの音楽の豊かさを際立たせていた。
アコースティックギターやエレキギター、ラップスティールギター、マンドリン、ブズーキ(ギリシャの民族楽器)を曲ごとに持ち替え、MCでは使用しているスピーカーや楽器の解説、近況を面白おかしく語るNAOKIに対して、絶妙なやり取りで応えるKUMI。これまでストイックさが先立っていた彼らが垣間見せたリラックスした素顔は、長い年月をかけて築き上げてきたファンとの信頼関係や音楽に対する揺るぎない自信がもたらしたものなのだろう。
「Last Smile」を歌うKUMIのボーカルが深みへと誘うライブ後半は、NAOKIが溢れる感情を「裸の王様」の長尺ギターソロに乗せたかと思えば、KUMIが「沢山の方と出会わせてくれた曲」と紹介した「Your Song」と代表曲の「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー〜」では、オーディエンスが一斉に立ち上がるほどの盛り上がりを見せると、アンコールのロックディスコ「Calling you」でベースを手に、ダンスグルーヴを紡ぎ出したKUMIがラストナンバー「Sally」では母性に満ち満ちた優しい歌声でライブを締め括った。
この日、印象に残ったのは、そのパフォーマンスの濃密さだ。繊細な感情の起伏を伝えるKUMIのボーカルの突出した表現力と頻繁に楽器を持ち替えながら細部の粗を際立たせてしまう高音質の音響に耐えうる演奏の高いクオリティは、テンションを切らすことなく、文字通り、オーディエンスを魅了した。来年2020年にデビュー20周年を迎えるLOVE PSYCHEDELICOだが、その楽曲は熟成感を深めつつも、今まで以上に躍動し、その先に広がる素晴らしき世界を描き出そうという研ぎ澄まされた探究心、向上心を前に、今後も続く彼らの旅とその成果への期待感が大きく膨らんだ一夜であった。
(文=小野田雄/写真=田中聖太郎)