橋本絵莉子から羊文学 塩塚モエカまで……ASIAN KUNG-FU GENERATIONが女性ボーカリストとの共演で見せる新側面

 ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)が10月7日に27thシングル『ダイアローグ / 触れたい 確かめたい』をリリースした。昨年ロンドンでレコーディングされた2曲を収録したこの作品。「ダイアローグ」がミドルテンポで転がるどっしりとしたロックナンバーであるのに対し、「触れたい 確かめたい」はシンセベースを導入した新鮮なサウンドが特徴だ。またゲストボーカルとして羊文学・塩塚モエカが大々的に参加し、従来と一線を画す楽曲に仕上がっている。今回のようなアジカンと女性ボーカリストの共演曲は意外なようでいてこれまでも幾つかあり、バンドの新たな側面を提示してはその度に驚きをもたらしてきた。

ASIAN KUNG-FU GENERATION『ダイアローグ / 触れたい 確かめたい』
ASIAN KUNG-FU GENERATION『ダイアローグ / 触れたい 確かめたい』

 遡ると2011年の「All right part2」が最初のゲストボーカル参加曲である。当時チャットモンチーのボーカルであった橋本絵莉子がコーラスとして参加しており、溌剌とした歌声を響かせている。豪快で太いロックサウンド、言葉遊びを中心とした歌詞が「All right=大丈夫だ」というタフなメッセージに帰結していくこの曲。華やかで開放的なムードもありつつ、切実さと凛々しさを兼ね備えた橋本の歌声は楽曲の強度を高めるのに一役買っている。

「All right part2」

 コーラスへの興味は2013年の後藤正文(Vo/Gt)の日記で時系列に沿って示されている。2010年の6thアルバム『マジックディスク』は後藤の歌声を重ねる形で豊かなコーラスワークを表現しており、彼のデモを軸にして作られたアルバムの内容にもよく馴染んでいた。そこからバンドセッションを中心に制作された2012年の7thアルバム『ランドマーク』に向かうにつれ、“多人数感”のあるコーラスを持つ楽曲が際立っていく。『ランドマーク』のツアーではコーラスとしてシンガーソングライターの岩崎愛を起用し、“人の歌声”が引き出す音楽のスケール感を追求していた時期だ。

「Wonder Future / ワンダーフューチャー」

 岩崎愛は2015年の8thアルバム『Wonder Future』のタイトル曲「Wonder Future / ワンダーフューチャー」にも参加。不確かな未来にざわめく心を映し出すメロディアスな1曲で、アルバムの中でも屈指の不穏さを持つ。しかし曲が終盤に向かうにつれ、様々な人物の心模様が混ざり合うように歌声が増えていく。不安を打ち消し、美しさを立ち上げるようなコーラスワークは楽曲のドラマ性を引き立てる。そしてこの曲のように群像を歌声によって描く手法はこの後さらに進化を遂げていく。

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