森山直太朗、コロナ療養期間に問い直した生きる意味 「僕の心が変わったから世界が素晴らしく思えた」
「papa」で初めて曲にした父親への思い
ーーなるほど。直太朗さんが丸刈り姿で出演したMVが話題の「愛してるって言ってみな」、父親への思いを歌った「papa」などは、“作詞・作曲/森山直太朗”。ご自身で作詞・作曲した楽曲には、個人的な感情が反映されているんでしょうか?森山:いま挙げてもらった2曲は、ずっと前から僕のなかにモチーフがあったんです。自分のアイデンティティとつながっているところもあるんだけど、今まではなぜか形にならなかったんですよね。もう少し違う世界観というか、御徒町と共作するなかで、自分は筒のようになって「どこもかしこも駐車場」を歌う、みたいな(笑)。
ーー個人的な思いを押し出すのではなく、器のような状態で歌っていた?
森山:そういう部分もあったと思います。自分の衝動やアイデンティティは見ないようにしていたというか。「papa」なんて、もともとは二十歳くらいに作った曲なんですよ。当初は母に向けた曲で、タイトルも「mama」だったんだけど(笑)。
ーーそうなんですね(笑)。
森山:はい(笑)。コロナになった後、改めてこの曲に向き合ったときに、「自分の心の安堵と不安、精神的な悩みや光って、親父とつながってるんじゃないか?」と思って。これまで父親という題材は避けていたんだけど、ヘンな話、順番でいったら親父のほうがきっと先に亡くなるだろうし、手紙を書くように曲にしてみようと。「この思いを聞いてくれ」みたいな感じではなくて、淡々と自分の内側に語り掛けてるような曲ですね。
ーー「愛してるって言ってみな」については?
森山:「素晴らしい世界」という曲が出来て、目の前の世界を肯定できたときに、この曲が湧いてきたんです。10年くらい前からアイデアはあったんだけど、「自分がこんな曲を歌ってもな」みたいな感じで引き出しのなかに置いてたんだけど、ふと思い出して。外側はポップですけど、じつはすごくフォーキーな曲だと思っているんですよ。友川カズキさんの「生きてるって言ってみろ」というすごい曲があって。そういう生々しさがこの曲のなかにもあるんじゃないかなと。
ーーここまで“愛”について正面から歌った曲も、今までなかった気がします。
森山:愛という言葉をずっと疑っていたし、あまり使ってなかったんです。今回のアルバムは曲がその言葉を呼び込んでいたし、愛がふんだんに散りばめられているんですよ。特に「愛してるって言ってみな」は、自分の根底にあるような気がして。かなり恥ずかしいんですけど、「本当はこんな人間なんです」というカミングアウト的な1曲でもあるのかなと。「どう思われてもいい」と飛び越えることができたのは、やっぱり「素晴らしい世界」のおかげだと思います。失うものなど何もないという感覚になれたからこそ、満を持して「愛してるって言ってみな」を形にできたので。
ーーもう1曲、「されど偽りの日々」についても聞かせてください。作詞が御徒町さん、作曲が直太朗さんですが、これもアルバムの軸になっている曲なのかなと。
森山:僕としては「されど偽りの日々」がアルバムの最後の曲で、その後の「それは白くて柔らかい」は映画のエンドロールみたいなイメージなんです。この曲は石川鷹彦さん(1970年代のフォーク、ニューミュージックを支えたギタリスト、プロデューサー)と深く関わっていて。石川さんは森田童子さん、吉田拓郎さん、さだまさしさんなどのアレンジなどを手がけてきた重鎮で、うちの母親のミュージシャン仲間でもあって。僕が音楽をはじめたときも、“鷹彦さんの門を叩く”みたいな感じでいろいろ学ばせてもらったんです。
特に震災の後から2015年くらいまでは楽曲制作やツアーなどにも参加していただいて。「されど偽りの日々」は、その時期に作った曲なんです。御徒町の歌詞が先にあって、それを鷹彦さんと一緒に曲にして。御徒町は「ちょっと歌詞を直したい」と言っていたんだけど、僕としてはそのままで出したかったんですよね。鷹彦さんは第一線から退かれているけど、僕のある時期を支えてもらった恩人だし、感謝を伝えたいという気持ちもあったので。「素晴らしい世界」「すぐそこにNEW DAYS」「されど偽りの日々」という並びも好きなんですよね。20周年は通過点に過ぎないし、だからこそこのアルバムには「されど偽りの日々」を入れたいという強いこだわりがありました。
ーーこのアルバムは直太朗さんにとっても大きなターニングポイントになりそうですね。
森山:自分が一番のリスナーというか、ずっと聴いてるんですよ(笑)。車のなかとか、散歩してるときとか、シチュエーションによって聴こえ方がどう変わるんだろう? って。それぞれに音楽を聴く環境があるだろうけど、どう響くか楽しみです。
ーーSNSなどでも感想をチェックしたり?
森山:もちろんそういう場所で感想をいただけるのは嬉しいんですけど、心のなかで思ってても言葉にしない方もいらっしゃるでしょうし、僕自身がリアルに実感できるのはやっぱりライブだと思いますね。6月からアルバムを引っ提げたツアーが始まるので、そのなかで少しずつ答え合わせができるのかなと。1曲1曲に向き合いながら作ってきて、それを繋ぎ合わせたら、一筆書きみたいなアルバムになって。そうすると不思議なことに、ステージで具現化するときのイメージが湧いてくるんです。それが未来につながると思うし、熱いうちにやりたいですね。
※1:https://sp.universal-music.co.jp/naotaro/20th/
■リリース情報
森山直太朗 20周年オリジナルアルバム『素晴らしい世界』
2022年3月16日(水) 発売
購入:https://lnk.to/subarashii
森山直太朗 先行配信シングル「愛してるって言ってみな」
配信サイト https://lnk.to/aishiterutte
■ツアー情報
森山直太朗20thアニバーサリーツアー『素晴らしい世界』
https://naotaro.com/subarashiisekai/
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<締切:3月29日(火)>