SARUKANI、ビートボックスクルーならではの楽曲制作の秘訣 「4本のマイクで世界中を駆け巡りたい」今後の野望も語る

SARUKANI、楽曲制作の秘訣

 SARUKANIが、1stアルバム『What's Your Favorite Number?』を3月2日にリリースした。

 SO-SO、RUSY、KAJI、Koheyといった世界でも名を馳せる4人が集結したビートボックスクルーである彼ら。同作はヒューマンビートボックスの世界大会『Grand Beatbox Battle2021』で披露した楽曲を詰め込んだファン待望の作品だ。

SARUKANI -『What's Your Favorite Number?』 (Album Trailer)

 ヒューマンビートボックスとは、“口からいろいろな音を出して、人間の声だけで音楽を奏でる”表現技法を指す。1stアルバム内で使われている音も、もちろんすべて4人の口から鳴らされている音。多種多様なビートやサウンドを自在に操り、どんな場所でも音響設備さえあれば重低音が鳴り響くダンスフロアにしてしまうのだ。これから彼らの音楽に触れるリスナーも、彼らが作り出すサウンドには驚きと興奮を覚えることだろう。

 今回、リアルサウンドではSARUKANIの4人に初インタビュー。世界的に盛り上がりを見せるビートボックスシーンの現状から、SARUKANIならではの楽曲制作のこだわりなど興味深い話をたっぷり聞くことができた。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

急加速するビートボックスシーン、日本における現状は?

ーーSARUKANIとはどんなグループなのでしょうか?

SO-SO:SARUKANIは、ヒューマンビートボクサー4人が集まったビートボックスクルーで、2021年10月に行われたヒューマンビートボックスの世界大会『Grand Beatbox Battle 2021』のクルー部門で準優勝。僕とRUSYのユニットSORRYが同大会のタッグチームループ部門で日本人初の世界チャンピオンになりました。それぞれの成績では『Grand Beatbox Battle 2019』ソロループ部門で4位、同年のアジア大会『Asia Beatbox Championship 2019』ソロループ部門で優勝しています。

Kohey:僕も『Asia Beatbox Championship 2019』ソロ部門で3位になっています。

RUSY:僕は2018年と2019年のアジア大会で2年連続3位になりました。

KAJI:僕はオンラインで日本一のビートボクサーを決める大会『JAPAN ONLINE BEATBOX BATTLE 2021』で優勝したほか、海外のオンライン大会では4回以上優勝しています。

Kohey:あとそれ以外にもメンバー全員が個人で世界大会に出場しています。

Sarukani 🇯🇵 | GRAND BEATBOX BATTLE 2021: WORLD LEAGUE | Crew Showcase
Kohey 🇯🇵 | GRAND BEATBOX BATTLE 2021: WORLD LEAGUE | Solo Elimination
Huskey 🇯🇵 GRAND BEATBOX BATTLE 2021: WORLD LEAGUE | Tag Team Elimination
Wildcard Guys 🇯🇵 | GRAND BEATBOX BATTLE 2021: WORLD LEAGUE | Tag Team Elimination

ーーこれまで個人でも輝かしい成績を収めているのになぜグループとして活動することになったのでしょうか?

SO-SO:SARUKANI結成のきっかけは2019年のアジア大会です。その時は全員が日本代表としてソロで大会に出場していましたが、たまたまホテルの部屋が一緒だったんです。そこで一緒に時間を過ごしていくうちに仲良くなりました。曲を作り出したのはその翌年のコロナ禍のステイホームの時期です。その時に作ったのが今回のアルバムにもリマスターが収録されている「SARUKANI WARS」ですね。それでその動画を公開してみたところ、予想以上に反響があったので、それならみんなで一緒にやってみるかということでSARUKANIとして活動していくことになりました。

SO-SO - SARUKANI WARS (feat. Kohey, Rusy and Kaji) (Official Video)

ーーヒューマンビートボックスとはどんな音楽なのでしょうか?

SO-SO(写真=まくらあさみ)
SO-SO

SO-SO:簡単に説明すると、“口からいろいろな音を出して、人間の声だけで音楽を奏でる”のがヒューマンビートボックスです。諸説ありますが、元々のルーツはヒップホップにあり、ラップをするためのビートマシンを買えないアメリカの貧困層の人たちがその音を口で再現しようとしたことで誕生したと言われています。現在はヒップホップだけでなく、ダンスミュージックやR&B、ジャズなどにも派生しています。

 音楽ジャンル的には、さまざまなジャンルとの親和性が高いのも特徴です。それとビートボックスには大会やバトルがあるので、スポーツのような競技性も持ち合わせています。

KAJI:ビートボックス自体は、音の模倣から生まれたものですが、今では音楽として突き詰めてやっている人もいます。また、アスリート的に大会で勝つことを目的にしている人もいるようにそれぞれで取り組み方も違うため、その進化の方向も多様化しています。

ーー最近のシーンにおけるトレンドのようなものはあるのでしょうか?

Kohey(写真=まくらあさみ)
Kohey

SO-SO:トレンド自体は日々変わっていますが、最近はベースミュージックがトレンドになっていますね。

Kohey:少し前は複雑なコンボとかも流行ってましたが、今年で完全にベースミュージックに移行した印象があります。なので、今は“低音がヤバいやつ=強い”みたいなイメージを持っている人は多いと思います。

ーー現在の日本のビートボックスシーンは世界的に見てどういった状況にあるのでしょうか?

SO-SO:今の日本は海外のビートボクサーからすると「ビートボックスがお金になる国」というイメージがついてきたと思います。というのもRofuという2人組のビートボクサーがやっているYouTubeチャンネルの影響力が凄まじく、今の日本のシーンは彼らが中心になって盛り上がっていると言っても過言ではない状況です。しかも、その盛り上がり方もビートボックスをやる人が増えて盛り上がるのではなく、ビートボックスを見て盛り上がる人が増えているという感じなんですよ。

 そういう盛り上がり方は世界的に見ても珍しいし、去年の世界大会もインターネット上での視聴者は日本人が増えていた印象です。すごく沢山の日本語のコメントだけに限らず、投げ銭もあったので本当にビートボックスでマネタイズできている感じがありましたね。そういう状況だから、ビジネスとしてビートボックスをやるのであれば、日本を拠点にするのがいいと思っている海外のビートボクサーは多いと思います。

ーー海外のビートボクサーはバトル中心でアーティスト活動する人はあまりいないのでしょうか?

KAJI(写真=まくらあさみ)
KAJI

KAJI:どちらかと言えば日本がこれまで極端に少なかったという感じですね。その点では日本は海外から大きく遅れていたと思います。

ーーでもそれがYouTubeをきっかけに“ヒューマンビートボックスがお金になる国”へと変わってきた?

KAJI:そうですね。ただ、以前から日本にもヒューマンビートボクサー自体はいっぱいいたんですよ。でもブームの火付け役になったのがRofuだったという感じです。僕らとしてはシーン自体を盛り上げようとはあまり思っていなかったのですが、結果的に今はすごく日本のシーンが盛り上がっています。

ーー日本のビートボックスでは過去にはバラエティ番組内のアカペラ企画「ハモネプ」だったり、AFRAさんやHIKAKINさんなどが注目を集めましたが、今はさっきのRofuさんのようにインターネットと結ぶつくことで人気が高まったり、シーン自体も進化した印象があります。SARUKANIさんは、その進化とインターネットの関係性をどのように捉えていますか?

KAJI:コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたことをきっかけにインターネットを使う人もめちゃくちゃ増えたと思いますが、その影響が人気の高まりとも関係があると思っています。

SO-SO:最近はバトルのイベントもすごく増えたし、キャパの小さいイベントだとチケットもすぐ売り切れるようになりました。それまでのビートボックスのイベントは基本的にはほとんど赤字でしたし、以前は客席にいる人もほぼビートボクサーといった感じでした。でも、今はちゃんとビートボックスのファンがたくさん会場にバトルを見にきてくれるようになりましたね。

Kohey:今はSNSを通じて、ビートボックスに興味を持つ人が圧倒的に多く、その人たちが一気に現場に殺到しているような状況です。だから、今はファンとプレイヤーの比率も9:1くらいにまで変化している印象がありますが、ただ、プレイヤーの中にはそういった状況の変化に戸惑う人も少なからずいます。それに今はビートボックスをやっている人よりもファンの方がシーンに詳しかったりもするんですよ。あと、最近ビートボックスを聴き始めた人たちは、いわゆるポップスの延長線上にある音楽として聴いてくれているような人が増えた感じもあります。

RUSY(写真=まくらあさみ)
RUSY

RUSY:例えば、YouTubeを通じて、元々K-POPが好きだった人が僕らの曲を聴いてくれたり、これまでヒューマンビートボックスを聴いていなかった人がファンになってくれるようなことが増えてきているように思います。

ーーその状況をSARUKANIさんとしてはどのように捉えていますか? また、その中で現在のビートボックスシーンにはどういった課題があると思いますか?

KAJI:めちゃくちゃ嬉しいし、ポジティブに捉えています。

SO-SO:ただ今、よく言われているのが日本のビートボックスのバトルイベントで導入されているオーディエンス票の問題です。このシステムだとどうしてもファンが多いビートボクサーが有利になってしまいがちなんですよ。だからもっと公平性が求められるべきという声もありますね。

 それと今はファンが求める需要に対する供給の数が少ないんだろうなと思います。今でも僕らやRofu、SHOW-GOのようにYouTubeを含めて表で活動しているビートボクサーは本当に少ないし、アーティスト的なものよりもリアクション動画のような副産物的なコンテンツの方が多いのが現状です。そういう動画は手軽に作れるし、再生数も伸びますが、アーティスト活動をしている人がもっと増えてくるとシーン全体がメジャーなものになっていくのかなと。

KAJI:そういうこともあって、僕らとしては本当に自分たちの音楽としてパフォーマンスをやっている人がもっとメジャーになってほしいというか、もっとこのシーンの深いところを知れるコンテンツが増えてほしいと思っています。

ーー最近では大会やライブ以外にもテレビ番組でもパフォーマンスを行なっていますが、現代の“ヒューマンビートボクサー”には、自分のパフォーマンスを見せていく上でどんなことが求められていると思いますか?

RUSY:最近のビートボックスファンは既存の動画をたくさん見ていることもあって、常に新しいパフォーマンスを求めています。なので、ここでしか見ることができないものや視覚的にも見て楽しいパフォーマンスをすることを常に心がけています。

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