今のAKB48は“絶対的センター”がいないから面白い? 大島優子、宮脇咲良ら歴代メンバーの活躍から考える

 5月18日にリリースされるAKB48の59thシングルで、本田仁美が初めてセンターをつとめることが発表された。今回の大役への抜てきは成長著しい本田にかける期待度の高さが感じられると同時に、2021年9月リリースの58thシングル『根も葉もRumor』で打ち出した“どえらいダンス”というテーマが象徴するように、ダンス、歌のスキルなど実力面をこれまで以上に重視する方向性を示した人選となったように思う。これからは『AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』(TBSチャンネル)などでの結果や評価が、より重視されるのではないだろうか。

 AKB48の一員として活動する上で最大の名誉である、センターの座。ドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』(2013年)でも、舞台上に割り振られているセンターポジションを示す数字「0」の前に立つことの責任と重圧が映し出されていた。一方で同作の完成披露プレミア試写会の舞台挨拶では、当時センターを担っていた大島優子が「私にとってセンターというものは、(ひとつの場所に)存在するというよりも、センター自体がいろんなメンバーのもとへ動いている。空中に存在するというか、その人が立った場所にスポットライトがあてられ、そこがセンターになる」と、その座は決して安泰ではなく、死守するのは至難であることを話していた。彼女のこの言葉が、“AKB48のセンターとは?”という問いかけの答えなのかもしれない。

前田敦子、大島優子によってセンターが聖域化

 過去のAKB48のセンター争いを振り返ってみると、様々な方法でそのポジションが決められてきた。もっともよく知られているのは、『AKB48選抜総選挙』の結果だ。規定のシングルCDに封入された投票券などを利用して行われる、ファンによる人気投票。そこで総数1位を獲得したメンバーが、指定されたシングル曲のセンターをつとめてきた。過去の『総選挙』で特に注目されたのが、レジェンドである前田敦子と大島優子だろう。2人が競い合ったことで、AKB48のセンターは聖域化した。

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【MV full】 ギンガムチェック / AKB48[公式]

 2010年から2018年まで開催された『AKB48グループじゃんけん大会』も、センター争いの企画のひとつだった(2014年、2015年の優勝者はソロシングル発売&ソロコンサート開催。2016年、2017年、2018年はユニットでの勝負として行われた)。じゃんけんという運試しで勝者を決定してセンターに抜てきするスタイルは、一部では賛否両論となった。第1回では内田眞由美が優勝し、19thシングルの表題曲「チャンスの順番」でセンターを獲得。しかし内田は、グループを卒業して4年後の2019年、『爆報!THE フライデー』(11月29日放送回/TBS系)に出演した際、SNSなどで「運だけのまぐれセンター」「センターに違和感がある」と叩かれ、さらに『じゃんけん大会』優勝の翌年にAKB48のコント番組でセリフのない岩の役をつとめたことも重なって、アイドルとしての限界を感じたと語っていた。センターという栄光を勝ち取ったにも関わらず、結果センターというポジションが彼女を苦しめてしまったのだ。このエピソードも、AKB48のセンターを語る上で非常に重要なものである。ちなみに『じゃんけん大会』は以降、篠田麻里子、島崎遥香、松井珠理奈(SKE48)、渡辺美優紀(NMB48)ら錚々たる顔ぶれが優勝している。

【MV full】 チャンスの順番 / AKB48[公式]
【MV full】 上からマリコ / AKB48 [公式]

 『じゃんけん大会』、『選抜総選挙』は2018年を最後に開催されていない。54thシングル『NO WAY MAN』(2018年11月発売)以降は、人気や運による選抜企画ではなく、様々な側面と意味をからめてセンターにふさわしいメンバーを選考している印象だ。

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