登坂広臣、自分と向き合い導き出した1つの答え ØMIとしての歩みの先で一番伝えたかったこと

登坂広臣、ØMIの歩みが結実した1つの答え

 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカル 登坂広臣が、昨年5月にØMI名義でのEP作品『ANSWER... SHADOW』をリリースし、自身がプロデュースするプロジェクト「CDL entertainment」を本格始動。アーティストとして生きていく中での孤独や葛藤といった“闇”の部分を描いた第1弾『ANSWER... SHADOW』、ファンへの感謝という“光”の部分を描いた第2弾『ANSWER… SHINE』に続き、シリーズを完結させるフルアルバム『ANSWER…』が2月2日にリリースされた。2枚組で構成される今作には、先行配信されている楽曲のほか、三代目JSBの今市隆二がコーラスで参加したバラード「After the rain」や、ライブをイメージして作った「Just the way you are」なども収録。長い旅の末に辿り着いた“答え”について、単独ツアー『ØMI LIVE TOUR 2022 “ANSWER...”』を控えるØMIに話を聞いた。(斉藤碧)

「世界は愛で溢れていると信じてる」

ーー今作『ANSWER…』は、昨年2月に配信された「ANSWER… SHADOW」を皮切りに始まった『ANSWER…』シリーズの完結編となります。デジタルシングル『ANSWER… SHINE』として先行配信された楽曲もある中、フルアルバムを作るにあたって特にこだわったことは何でしょうか。

登坂広臣(以下、登坂):今作は、昨年リリースしたデジタルシングル『ANSWER… SHINE』の楽曲と新曲をDISC1に、EP『ANSWER… SHADOW』の楽曲をDISC2に分けて収録しているのですが、『ANSWER… SHINE』と『ANSWER… SHADOW』の楽曲を足しても、いわゆるオリジナルアルバムの曲数よりは少なめだと思うんですよ。「INTRO 〜SHINE〜」「INTRO 〜SHADOW〜」を抜かすと10曲なので、本当はもう少し曲数があってもいいのかなと思っていたんです。でも、1曲1曲を際立たせたいという気持ちもありましたし、実際どの曲もリードと言えるような内容に仕上がったので、それらを並べていってバラード「After the rain」で締める、今の形になりましたね。

ーーDISC1の「INTRO ~SHINE~」とDISC2の「INTRO ~SHADOW~」は、どのような意図で入れようと思ったんですか。

登坂:以前リリースしたアルバム『FULL MOON』にも「INTRO ~WAKE THE MOON~」を入れたんですけど、コンセプチュアルな作品には、その世界観に入り込むための入口が必要だなと思ったので制作しました。作家さんには、“SHINE”は「水が滴り落ちたり、自然をイメージできる世界観がいいです」と、“SHADOW”は「自分の心の葛藤を表現する入口だから、激動の影の世界観を表現しつつ、次の「ANSWER… SHADOW」のイントロが始まったら、スッと静まり返る感じにしたいです」とお伝えして。収録曲も全部聴いていただいた上で、それぞれの世界に入るための「INTRO」を作ってもらいました。

ーーアルバムを締め括る「After the rain」は、UTAさんが作曲、ØMIさんとSUNNY BOYさんが作詞されていますが、どういう曲調にどういうメッセージを乗せるのかというのは、いつ頃から見えてきましたか。

登坂:『ANSWER…』シリーズを締め括るバラードを作りたいなっていうのは、始動した当初から思っていたんですけど、その具体的なイメージは『ANSWER… SHADOW』や『ANSWER… SHINE』を作っていく中で見えてきましたね。あと、「ピアノとストリングスの世界観で曲を作り上げたい」というオーダーも、UTAさんには以前から伝えていて、アルバムを作るにあたって感動的な曲調で情景が浮かぶような、そして『ANSWER…』の全ての答えとなる楽曲を作ろう! と話しながら一緒に制作していきました。

ーー最後の〈空を見て 気づいたんだ/世界は愛で溢れている〉というフレーズが、長い旅の先に答えを見つけた充実感を象徴していますよね。歌い出しと最後のメロディが同じということもあって、すごく耳に残りました。

登坂:もともとこのメロディを最後に持ってくる予定はなくて、最後のサビで終わる予定だったんですよ。でも、最初に出した「ANSWER… SHADOW」も実は最後のサビが来た後に1つ目のヴァースがもう1回来て、そこでメッセージを伝えて終わるっていう流れになっているので。「After the rain」も、あえて「ANSWER… SHADOW」と同じ構成にすることで連動感を出そうと思いました。とはいえ、歌詞は1ヴァース目の〈空を見て 気づいたら/名前のない色に染まる〉をそのまま繰り返すんじゃなくて、ここでは本当に今見えていることを書こうと。今はコロナ禍でもありますし、悲しいニュースが目立つ世の中だなと思うんですけど、よく見てみると、きっと世界は愛で溢れているーー僕はそう信じているから、最後にしっかりと伝えたくて、こういう歌詞にしました。

ØMI - After the rain (Official Audio)

「コーラスを作る過程で(今市)隆二の顔が浮かんだ」

ーー以前のインタビューで、『ANSWER…』シリーズの歌詞に出てくる〈You〉や〈君〉はファンの人のことだと話していましたけど(※1)、〈結ばれた奇跡/僕の愛で 幸せにする〉って、もはやプロポーズでは……?

登坂:ウェディングソングっぽくするつもりはなかったんですけど、結果的にそうなったなって自分でも思いました(笑)。昨年は三代目JSBとしても10周年のアニバーサリーイヤーを行って、ドームツアーも無事に完走して、直接自分の目で見て感じたことがたくさんあったので、その中で曲を作ったら、自然とファンの皆さんへの素直な言葉が出てきましたね。アーティストとしての孤独とか不安、いろいろなことを考えながら旅をしてきたけど、みんなの顔を見ながら活動していくうちに、余計なものがどんどん削ぎ落とされて、最後に残ったのはすごくシンプルな言葉だった。難しい言葉が何ひとつない、小学生でも理解できるような、すごくわかりやすい曲です。もう、真っ白! って感じ(笑)。でも、それが今の気持ちだし、僕を応援してくれているみんなに伝えたいことだから、これでいいなと思っています。

ーーシンプルな言葉だからこそ、歌うのはすごく難しそうだなと思います。いかようにでも表現できるからこそ、どう表現するのがベストか悩みそうだなと。

登坂:めちゃくちゃ難しかったです。今回のアルバムの曲で、レコーディングに一番時間がかかりましたね。特に時間をかけたのは歌い出しで、途中でスタジオを変えてもらって、気分を変えて録り直したりもした。一度歌い終わったんだけど、別日に「もう1回やりたい!」と言って納得が行くまでトライしたりとか、かなり粘って録りました。

ーー「You (Prod. SUGA of BTS)」も、SUGAさんとやりとりを重ねながら何度もレコーディングしたと話していましたが(※2)、今回は自分との戦いが白熱したんですね。

ØMI - You (Prod. SUGA of BTS) -Official Music Video-

登坂:「You (Prod. SUGA of BTS)」はSUGAくんと意見を交換して、作りながら録っていったので、何度も歌い直すことが必要だったんですけど。「After the rain」に関しては、コラボレーションとは違い、自分の想いが全てここに込められているので、声の成分とか、一つひとつの鳴りとか、ブレスの伝わり方とか……歌詞の1文字1文字に想いが乗るように、ブースの中で自分自身とじっくり向き合いながら録っていきました。

ーー1人で歌い始めて〈二人だけの 答えを〉でコーラスが重なり、どんどんスケールが大きくなっていく展開もドラマティックでした。しかも、コーラスには今市(隆二)さんが参加されているそうで、どういう経緯で今市さんにオファーしたのでしょうか。

登坂:「After the rain」は、僕にとって1つの区切りともなる『ANSWER…』のエンディングを飾る曲なので、自分1人で締めるのもアリだなとは思ったんですけど、コーラスワークを作っていく過程で隆二の顔が浮かんだんですよね。もし自分の中で『ANSWER…』の次はこういう作品を作ろうっていうビジョンが明確に見えていたら、こういう発想にはならなかったかもしれないですけど。これで一旦“完結”という感覚が強かったので、1人で締めるよりは2人で……という自然な流れでした。ただ、僕自身も三代目JSBの登坂広臣としてではなく、ØMIという1人の歌手として歌っているし、その状態の彼にコーラスとして参加してほしくて。そうお願いしたところ、快く歌ってくれましたね。

ーーこれまでの楽曲のコーラスは、ご自身で歌うこともあれば、制作チームのメンバーに歌ってもらうこともあったそうですが、「After the rain」のコーラスは全部今市さんなんですか。

登坂:いえ、隆二が歌っているのは大サビだけですね。それ以外は全部自分の声を重ねているんですけど、曲として変化をつけたいというのもありましたし、自分の一番伝えたい気持ちを歌っているところに、バックコーラスとして隆二の声が入っていたらいいなと思って、最後だけ歌ってもらいました。贅沢だと思うんですけどね(笑)。でも、コラボレーションでもフィーチャリングでもなく、長年やってきた1人の歌手同士として僕の歌に参加してもらいたかったので。ここに隆二の声が入っていると思って聴かないと、気づかないくらいだと思うんですけど、この曲を聴いてくださる方に、隆二の存在を感じてもらえたらいいなと思いました。

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