『JUMP ROPE FREAKS』インタビュー
ズーカラデル 吉田崇展、クライマックスを追い求める曲作り バンドであることの喜びから芽生えた新たな始まり
「常に閃きの中にいられたら楽しい」
ーー吉田さんは映画は好きじゃないんですか。ストーリー性や情景や心理描写において、楽曲に日本映画的な視点を感じられるところが結構あるなと思ったんですよね。
吉田:映画は、本数的にはそんなに観ていないですね。映画を観ると疲れちゃうので。みんなどうしているんですかね?(笑)。
ーー僕もライブでも映画でも集中力が持続するのは1時間半が限界だなと思っているので、気持ちはわからないでもないです。
吉田:楽しめば楽しむほど終わったあとの虚脱感がすごいなと思うし、事前に「いい映画」って聞くと身構えちゃいます(笑)。コンディションを整えないと観られないなって。
ーーその先にある自分の状態を危惧するという(笑)。
吉田:そうかもしれないです。結局、億劫になるんですよね。でもその点、音楽というか、ポップスって終わるまでの時間が短いから好きなのかもしれないです。3〜5分ほどの中で始まりから終わりまで感情を動かせるというか。これは本気で思いますね。
ーーただ、そのポップスを作る行為にはすごく時間がかかるじゃないですか。そこは大丈夫なんですか?
吉田:曲を作るときはあまり「疲れるから嫌だな」とは思わないです。それがなぜかは今まで考えたことなかったんですけど、曲を作ることに関しては「ちょっといいアイデアかもしれない」と思うことがパッと浮かんだときに無邪気に作業に入れる感じがありますね。シンプルな思考回路で「今思いついた!」「やりたい、やろう」とスムーズに移行できます。
ーーそれは曲を作り始めたときから?
吉田:そうですね。曲を作るという作業自体につらいなと思ったことはないです。作りたいのに完成までもっていけなくてつらいという時間はめちゃくちゃいっぱいあるんですけど、つらい行程がたくさんあるからといって、億劫になったり嫌になることは今までなかったです。
ーー音楽表現に身を投じているときは億劫になることはないと。
吉田:僕が曲を作るのは常にクライマックスを作りたいと思っている感じなんです。
ーーああ、なるほど。
吉田:例えば、歌詞の一言がハマった瞬間にそこでカタルシスがあるので、1個1個のクライマックスという山自体は小さいかもしれない。
ーーでも、それが続いている。
吉田:そう。そこで一旦クライマックスが来て、次のクライマックスに向けて歌詞の一言やメロディを作っているという感覚があるかもしれないです。
ーークライマックスがずっと続くように曲を作っていると。
吉田:そうですね。常に閃きの中にいられたら、楽しいんだろうなって。
ーーライブのときはどういう感覚なんですか?
吉田:ライブはなかなか難しいなと思いながらやっていた部分もありました。今まではライブ中に新たな閃きを感じながらやれていたわけじゃなかったんですけど、去年のワンマンライブは鍵盤とギターのサポートを入れて初めて5人編成でやったんですね。その編成でやっているときは曲たちが喜んでる感じがして、本当によかったんですよね。そのワンマンライブではクライマックス感みたいなものをたくさん感じることができたなって思いました。次のツアーもその編成で回るんですけど。
「密室的な音楽とバンドを上手く繋げたい」
ーー5人編成のライブだと、曲が持っているポテンシャルにちゃんと応えられていると。
吉田:まさしくその通りです。今まではなるべく削ぎ落として、ロックバンド的なカッコよさをライブでちゃんと出そうとしていたんですけど。
ーー3ピース然としたダイナミズムとか。
吉田:そうですね。3人で鳴らせる世界をちゃんと見せようとしていたんですけど、5人編成を1回やってみると、曲が求めていることにもっと寄せることができるなと思えて。その喜びは大きかったですね。
ーー今作も5人編成でライブをやることを前提にアレンジを組み立てていったところもあるでしょうか。
吉田:あると思います。5人編成でやるイメージの中で、アレンジが自由になったところはかなり大きかった気がしますし、5人編成の経験や手応えを持って、またいつか3人に戻ってもいいかなという感覚もあります。
ーー吉田さんが弾き語りから始まったことを考えると、今そういう地平に立っているのはすごく感慨深いんじゃないですか?
吉田:はい。すごく……「バンドっていいよね」って思います。今回のレコーディングで、この先は本当に多岐にわたる広い未来があると思えたので。「バンドで挑戦して新しいサウンドを掴もうぜ」という部分では、一定の成果を得ることができたと思っているので、その意識は継続しつつ……これは雑談レベルの話ではあるんですけど、年末に中村佳穂さんの昔のライブ映像をずっと号泣しながら観ていて。そこで思ったのは、弾き語りのミュージシャンってめちゃくちゃすごい人がいると思うんですけど、そうやって密室的に音楽をやってる人たちと、バンドで音楽をやってる人たちが結構分断されてしまっているような気がしているんです。
ーーたしかに、それとこれは違うシーンみたいな分断があるかもしれない。
吉田:あの密室的に音楽をやる感じ、俺もそういえば昔は持っていた気がするんだよなと思うところがあって。そことバンドを上手く繋げるようなことができたら楽しいだろうなと思いながら最近は過ごしていたんです。
ーー吉田さんが観た中村佳穂さんのライブは、ピアノ1本で歌っているステージですか?
吉田:そうですね。バンドセットの映像も、もちろんめちゃくちゃ素晴らしかったんですけど。
ーー彼女の場合、そこに差異がないですよね。ズーカラデルの音楽像もそういう地平に立ったら、さらに新しいクライマックスを作れるんじゃないかと思います。
吉田:本当にそう思います。自分も密室的な音楽とバンドでやる音楽の中で、どす黒い陰気な曲から、華やかな曲までシームレスに取り扱うことができたら、すごく楽しいだろうなって思っています。
■リリース情報
ズーカラデル
2ndフルアルバム『JUMP ROPE FREAKS』
2022年1月19日(水)発売
配信はこちら
・通常盤(CDのみ)¥3,000+税
・初回限定盤(CD+DVD)¥4,000+税
・ビクターオンラインストア限定盤(CD+DVD)スペシャルブック付き豪華特殊パッケージ仕様 ¥5,000+税
<CD収録内容>
M1.まちのひ
M2.シーラカンス
M3.つまらない夜
M4.正しかった人
M5.ノエル
M6.どこでもいいから
M7.ローリア
M8.スタンドバイミー
M9.若者たち
M10.ウズラ
M11.GHOST
M12.トーチソング
M13.稲妻
M14.未来
M15.ジャンプロープフリークス
<DVD収録内容>
『それでも、星に願ってもしょうがないだぜ Live at EX THEATER ROPPONGI 2021.11.05』
M1.未来
M2.漂流劇団
M3.TAPIOCA
M4.ブギーバック
M5.ニュータウン
M6.ビューティ
M7.ころがる
M8.若者たち
M9.ノエル
M10.トーチソング
M11.ダンサーインザルーム
M12.シーラカンス
M13.アニー
M14.フライングマン
★ズーカラデル Behind the Scenes
■ツアー情報
ズーカラデル『JUMP ROPE MADNESS TOUR』
2022/2/12(土)Zepp Haneda
2022/2/19(土)名古屋DIAMOND HALL
2022/2/23(祝)仙台Rensa
2022/3/1(火)福岡BEAT STATION
2022/3/3(木)大阪BIGCAT
2022/3/5(土)広島LIVE VANQUISH
2022/3/6(日)高松DIME
2022/3/12(土)札幌PENNY LANE24
2022/3/20(日)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE