Yogee New Waves、現実と向き合って鳴らした新しい一面 コロナ以前に生まれたグルーヴを残した理由とは

Yogee New Wavesのグルーヴ

 2014年の『PARAISO』、2017年の『WAVES』、2019年の『BLUEHARLEM』から成る三部作を経て、約2年半ぶりとなるYogee New Wavesの4thアルバム『WINDORGAN』が完成した。オープンなマインドに満ちたアンサンブルとメロディ然り、1曲目の「SISSOU」を筆頭に散見される別れのストーリーを帯びたヒューマニスティックかつロマンティックなリリック然り、Yogee New Wavesというバンドのど真ん中が聴こえてくる。しかし一方で、コロナ禍によって様相が激変する時代の狭間で苦悩し、一時はすでに生まれていた楽曲群を白紙にすることも考えたという。そういった紆余曲折を経て、『WINDORGAN』は私たちのもとに届けられることになった。今回はその道のりと生々しい思いを、メンバー全員に語ってもらった。複数の人間が互いの表現性をぶつけ、分かち合いながら音楽を創造する生き物としてのバンド。その息吹に正直な彼らは、かく語りき。(三宅正一)

「全部録り直すしかないという気持ちだった」

ーーこの『WINDORGAN』はオープンなマインドをたたえていると同時に、多くの歌に別れの気配が帯びていて、アンサンブルが気持ちいいほどに切ない。そういう趣も含めてYogee New Wavesのど真ん中が聴こえると思いました。まずは率直な手応えを聞きたいなと思いますが、健悟さんどうでしょう?

角舘健悟(以下、角舘):『BLUEHARLEM』は俺が夢想に籠もっていた感じがあったなと思うんですね。その出口になっていたのが「CAN YOU FEEL IT」という曲だったんですけど、今回『WINDORGAN』はもっと開こうという感覚が明確にあって。

ーーその感覚は『WINDORGAN』に入っている最初の曲を書いた時点からあったんですか。

角舘:そう。最初は「to the moon」かな。その次くらいに「あしたてんきになれ」があって、あとはーー。

粕谷哲司(以下、粕谷):「White Lily Light」も結構前からあったし、そこから順番的には「You Make Me Smile Again」「Ana no Mujina」「Night Sliders」「Long Dream」「Jungrete」「Toromi days feat.Kuo (落日飛車Sunset Rollercoaster) 」「SISSOU」「windorgan」と来て、「JUST」が最後だよね。

角舘健悟

ーー前作から2年半の間に世の中の様相も激変したし、健悟さんはそのグラデーションを、ソングライターとして曲を作りながら感じていったと思うんですね。

角舘:めちゃくちゃ感じていたし、なんならこの2年半の俺の生きるテーマはグラデーションだったから。白とか黒とか、右とか左でもない、すべてはグラデーションでできているという感覚。そもそも人間はグラデーションでできているし、それを常に意識しなきゃと思ってた。

ーーそういったグラデーションを感じながらも、時代の様相を鑑みれば開いたマインドで曲を作るのってどんどん難儀になっていったんじゃないですか?

角舘:それはありますね。誰もがヘコんで当然の時期だと思うし。俺らとしてもいろいろ仕込んでいた予定が全部なくなって、さらにはメンバー同士で近づいて何かやることさえ禁じられるような世の中になって。『WINDORGAN』の収録曲は、コロナ前に6~7割はできていたんですよ。

Yogee New Waves – to the moon (Official MV)

ーーそんなにできてたんですね。

角舘:そうなんです。なので、コロナが立ちはだかったときに目の前が真っ暗になったというか。全部録り直すしかないのかなという気持ちでした。俺は全部録り直したかったし、駄々をこねました。メンバー的には「これもYogee New Wavesとしてトゥルーな曲たちなんだから、リリースしようよ」と言ってくれて。それで、新曲として「JUST」を書きつつアルバムがまとまったんです。

ーー個人的にもこのアルバムで一番好きなのは「JUST」なんですけど、他の曲も2021年の秋に聴いても偽りなくいい曲ばかりだなと思うし、しっかりリアルに響いてくる。

角舘:それもまたトゥルーなことじゃないですか。作者が満足していようがいまいが、聴いてくれた人が満足してくれたら、それはトゥルーだから。

ーーただソングライターの素直な気持ちとしては全曲書き直したかったと。

角舘:それは本当です。これは自分の中でセーフ、これはなしみたいな線引きをすると、2曲くらいしか残らなかったから。でも俺が録り直したいと思っても、チームがどうかは分からないもので。曽我部(恵一)さんは「絶対にいいものができるから録り直したほうがいいよ!」と言ってましたけど(笑)。チーム内で「Yogee New Wavesという生命体がどうすることを求めているか?」という話をよくした気がしますね。自分で作った曲をなくすのは寂しい気持ちもどこかであったし。

粕谷哲司

ーー他のメンバーはそういう状況に対してどのような態度を示したんですか?

粕谷:俺はとにかく6~7割できていた曲をミックスしたくて、1年くらいずっと言い続けてました。そういう意味では俺も駄々をこねてたんですけど、ミックスしてから判断して、一旦“作り切る”ことをしたほうが絶対にいいし、コロナがあってラフミックスの状態で止まっていたのが俺は嫌だったので。それで新しい曲に着手していくモチベーションが生まれなかったから、今ある曲をミックスしたいって言い続けたんですよね。

ーー思いとしてはどちらも真摯なのは間違いないわけで。

粕谷:どちらにせよ、お互い動きたいと思ってることは確かですよね。ライブができない中でどうするかといったら制作しかなくて、そこに対する方向性が違ったから話し合っていました。

角舘:(スタッフ含めて)6人対俺みたいな感じだったよね。でも、最終的にはみんなと気持ちを合わせて『WINDORGAN』を完成させたのは確かです。そうしないとアルバムは作れないから。

粕谷:全員が納得した形で進めないと意味がないからね。

「ピースを歌っていくヘヴィさを思い知った」

ーーコロナ前に6~7割できていたということは、本来このアルバムはもっと前にリリースする予定だった?

角舘:オリンピックが終わった頃にリリースしようという話があったので、本来は2020年8月かな。でも、コロナがあってそれは幻のプランになって。作品を届けるのはバンドとして正義なんだけど、コロナ以降はバンドとして集まることさえなかなかできなかったから、じゃあ何をしようかという方に気持ちが向いてた。みんながミックスしたいと言ってるときに、俺は音楽以外にもうちょっと繋がれる方法があるはずだって考えていたんですよ。

ーー例えば?

角舘:バンドロゴを解放して、家にいて手持ち無沙汰になってる人たちに塗り絵をしてもらって、心を埋めてもらおうとか思ったり。個人的には言葉の強度を増すために、テキストや詞を書く時間を設けたりしてました。けど、俺らはバンドとして宿題が残ってる状態みたいな。

ーーミックスされてない曲がね。上野さんと竹村さんはどういう心持ちだったんですか?

竹村郁哉(以下、竹村):ミックスすることに大賛成でした。もちろん録り直すことも考えたんですけど、個人的にはバンドが止まらざるを得ないときに生まれた曲も、ちゃんとリリースしたほうがいいと思った。追い風に乗ってるときじゃないバンドの曲も出さないと、バンドの色が見えづらいんじゃないかと思ったので、そういうときの記録としてもしっかり残したほうがいいっていう話をしていて。結果的にかなりYogee New Wavesのアルバムだなっていう仕上がりになりました。

ーー異論はないです。

竹村:これまでの三部作は割とコンセプチュアルなアルバムだったんですけど、『WINDORGAN』はバンドのありのままが表現されているアルバムになったなと思います。

ーー上野さんはどうでしょう?

上野恒星(以下、上野):そのときの気持ちをあまり思い出せないんですけど、いろいろなことがあったなと思います。アルバムを完成させるというのは、当時の自分からすると途方もないことだと思ってました。だから、本当にまとまってよかったです。

角舘:こういうアルバムのほうがよかったりするんだよなとは思う。AからZまで自分の血がベッタリついてるものよりも、こぼしてるものがあるくらいのほうが人は咀嚼しやすいのかなって。あと、メンバーと音楽を作る理由はマスターベーションの延長ではなくて。最終的に受け取る人たちが咀嚼したときにエネルギーになるような、ポジティブなイメージでバンドをやってるところもあります。俺個人は結構ストイックだし、精神性をガチガチに出すとファインアートの世界に近づいていく気がするけど、ポップミュージックってそういうものではないよなって最近ちょっと思ってるかな。

ーーつまり全曲を作り直していたら、もっとアバンギャルドでドープなものになっていたということ?

角舘:そうかもしれない。コロナでいろんな経験をしていく中で、自分自身も少しずつ変容していくじゃないですか。そうやって人間としての造詣が深くなっていくと思うんですけど、今の自分はすごくドープな部分が沸き立っていて、これをどうやったら人様に見せられるのかなと考えているところです。

ーーでも、それはやっぱり音楽で形象化するべきなんじゃないですか。Yogee New Wavesとして鳴らすかは置いておいて。

角舘:何かしらで形にするとは思います。狂気と愛ということでいえば、『WINDORGAN』は間違いなく愛で作られていますけど、コロナ前に作った愛と、コロナの最中に作る愛の性質は違うものであって。コロナの中で愛を絞るという行為がすごくヘヴィでしたよね。一滴の愛に対して狂気が1000ある感じ。以前は10滴の愛で100ドープくらいだったけど、今は全然違うパワーがかかってる。ちょっと抽象的な話だけど。

ーーでも、それはアーティストのみならず、すべての人に当てはまる感覚だと思います。

角舘:みんなたぶんそうなんでしょうかね。ピースを歌っていくヘヴィさを思い知りましたよね。『WINDORGAN』も俺ららしいアルバムだと思うし、前作のクオリティを圧倒的に超えてることもわかってるけど、今この時期に自信を持って「こんな作品作りました!」って言える人に早くなりたい。

ーー正直、作品を発表したくないアーティストのほうが多いと思うし、十全なマインドで出せる人のほうが稀有ですよね。

角舘:もしそういう人がいるとしたら、ちょっとデザインされた作品の香りに感じちゃうな。

ーーただ、このアルバムにはYogee New Wavesが提示してきたバンドミュージック然としたリリシズムやロマンティシズムの強度の高さを改めて感じましたけどね。

角舘:仲間への愛は相変わらず強いですね。近しい人への愛だったり、俺らは仲間思いの連中が揃ってますから。そういう意味ではラブリーな作品ができたなとは思います。

Yogee New Waves – あしたてんきになれ(Official MV)

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