2021年もINIやBE:FIRSTが誕生 頻発するサバイバルオーディション番組、人気の明暗を分ける鍵は?

オーディション番組、人気の明暗を分ける鍵

 11月にデビューしたボーイズグループ・INIはデビューシングルで50万枚を超えるハーフミリオンを売り上げ、同日にデビューしたBE:FIRSTはBillboard Japan Hot 100で1位を獲得するなど、2021年も2020年デビューのNiziUに続いて日本国内でのサバイバルオーディション番組出身グループの活躍が目立った年だった。

 韓国を席巻したアイドルデビューサバイバル番組「PRODUCEシリーズ」の投票操作が発覚し、関係者の有罪判決が下って以降韓国内ではアイドルサバイバル番組の人気は収束したが、その熱を引き継ぐように日本国内では数多くのアイドルグループ系デビューサバイバル番組が誕生、あるいは放送されるようになった。INIを生んだ『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』やBE:FIRSTを生んだ『THE FIRST』のように放送当時から注目を受けデビューまで成功した例もあるが、一方では大きな注目を集めることはなかった番組も存在する。そのポイントはどこにあるのか、実際の番組から考察してみたい。

 まず、最も大きな影響を与えるのは放送媒体だろう。現在の日本国内でのアイドルデビューサバイバルブームの起源となったと考えられるのは『PRODUCE 101 JAPAN(日プ)』シリーズだが、開始当初は韓国での大ブームをすでに知っていたK-POPファンの間でも、“プデュ”のシステム自体を経験してみたいという一部の層以外の間では、韓国のフォーマットをそのまま持ってくること(元々は『AKB48選抜総選挙』のベンチマーキングであること)、練習生ではなく事務所に所属していない一般人のみという点などが募集段階から賛否両論あった。しかしこの流れを変える最も大きなポイントとなったのが、YouTubeで流された参加者全員によるテーマソングのパフォーマンス映像だろう。「“プデュ”といえば」という定番のイメージはそのままに、決して本家に劣らないパフォーマンスを見せた練習生の姿に期待を高めた視聴者も少なくなかったように感じる。また、GYAO!での無料放送で行われたことも、口コミやYouTubeでの動画を見て興味を持った人が途中からいつでも途中参加できるというハードルを下げることに成功した理由でもあるだろう。本放送時初回は無料で配信し、アーカイブ化していくことで、ファイナル前や新シリーズ前に復習することができたり、デビュー後も含めて後からファンになった人たちが有料課金でも追いかけることが可能だった。「最初から課金で見るほど発掘への熱意やアンテナはないが、SNSで話題なら見てみたい/その流れにはのりたい」というような「ゆるい」層の参入障壁の低さは、SNS時代では大きなバズりの原動力となりやすいのではないだろうか。結果的に様々なジャンルの「推し活層(ジャンル問わず何らかの推し活をしている層)」からの注目を受けたことは、“プデュ”シリーズのシステムの根幹である「国民プロデューサー」という参加者と視聴者を紐付ける関係性をより強力に生かすものとして作用したように思う。

 “プデュ”シリーズに続いて大きなヒットとなったのはNiziUを輩出した『Nizi Project』だが、こちらは「2PMやTWICEを輩出したJYPエンターテインメントと坂道グループらを手掛けるソニーミュージックによる共同プロジェクト」という大型企画ではあるが、やはり開始当初は「日本を中心に参加者を募集する日本市場向けグループ」という部分で、元々サバイバル慣れしていたK-POPファンの間での反応は様々だった。しかし、やはりJYPという事務所の知名度と、事務所を象徴する存在でもある創設者のJ.Y. Park自らが参加者をジャッジするシステムによって、アイドルファンの間では当初からある程度の注目を集めることに成功した。このサバイバルの放送方式は、予選と本選のように二段階に分けた部分も特徴と言えるだろう。Huluでの有料配信期間はアイドルファンの間で話題になっただけだったが、後追いでYouTubeやTV地上波でも放送され、朝のワイドショーでダイジェストが放送されることで徐々に一般層からの注目を集めていった。“日プ”の場合はファンダム人気が中心となる男子グループのサバイバルで、コアファン予備軍からの注目が必要になり、「推し活層」はSNSやオンライン環境に強いためオンラインでの配信がメインでも良かったが、それとは少し異なる「大衆認知の大きさ」がコアなファンダム以上に必須である女子グループのサバイバルの場合、地上波という、より大衆的なマス向けメディアで放送されることは必要な条件だったのかもしれない。また、ここで最も話題になったことの一つは、番組のコアとなったJ.Y. Parkのキャラクターとサバイバル中の言動だったが、このようなジャッジと参加者の関係性もまた、サバイバルを盛り上がる原動力だろう。

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