新しい地図の3人が絶やさなかった音楽への情熱 喜び分かち合った今年の活動を振り返る
2021年も残りわずか。この1年も、2020年から続くパンデミックにより、エンタメの世界は手探り状態を続けざるを得ない日々だった。だが、有観客でのステージが思うように開催できない中でも、アーティストたちの“表現したい“という思いはむしろ大きく膨れ上がり、その強く熱い想いに胸をつかれる場面も多くあった。
稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾も、そんな思いを抱えての1年だったようだ。12月5日放送の『7.2 新しい別の窓』(ABEMA、※以下『ななにー』)で、多くのゲストを迎えてライブ三昧のオンエアを繰り広げると、エンディングで「もうちょっとだね、久々にお客さんいっぱい来てもらって!」「来年こそはできたらいいね」と語り合っていたのが印象的だった。
彼らは、この混乱の時期の間、ずっと私たちを笑顔にし続けてくれた。今回は、そんな2021年に広がった3人の“音楽の地図”について見つめていきたい。
奥深い音楽の世界へと誘ってくれた稲垣
稲垣の柔らかく透明感のある声色は、SMAPとしても新しい地図としても“彼らしさ”を思い出させるあのユニゾンの音色を構成するのに、必要不可欠な要素であることは言うまでもない。そして、ラジオ『THE TRAD』(TOKYO FM)で様々なゲストと音楽談義に花を咲かせている姿を見れば、音楽そのものに対する思い入れも人一倍あることが伝わってくる。
だが、稲垣はかねてより「歌い踊ることが苦手」と冗談めかして話すことが多かったのもまた事実。そんな稲垣の内なる音楽への愛と葛藤をぶつけるという意味でも、昨年から今年にかけて再々演された舞台『No.9 -不滅の旋律-』のベートーヴェン役はまさに適役だった。「友よ! もっと素晴らしい歌をうたおう。喜びと共に!」ーーそう絶叫する姿は、彼が自ら歌い聴かせるよりも、誰かと共に歌うことを楽しむアーティストであることと共鳴しているように見えた。
歌い表現する側でありながら、音楽を楽しむ側であるというフラットなスタンス。彼はよくSMAPの中で年上メンバーと年下メンバーの間にいる「中間管理職」だと話していたが、その立ち位置は音楽とNAKAMAとの間に立つ意味としても繋がっている気がする。クラシックから、渋谷系、アニソンに最新の音楽チャート……と、どれも稲垣の知的好奇心があればこそ見つめることができ、時代もジャンルも異なる音楽の魅力を今年も存分に教えてくれたのではないだろうか。
表現の自由さを思い出させてくれる草なぎ
2021年の草なぎといえば、映画『ミッドナイトスワン』での日本アカデミー賞最優秀主演男優賞の受賞をはじめ、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)での徳川慶喜役の好演に絶賛の声が上がるなど、演技面での活躍が光った1年だった。名実共に日本を代表する俳優となった草なぎだが、表現するという点については年々肩の力が抜けていくように見える。
そのいい意味での力みのなさは、草なぎがこの数年手放すことなく奏でているギターのおかげではないか。収録現場の楽屋にも持ち込んでいるというギター。YouTubeの『ユーチューバー 草なぎチャンネル』でもギターを奏でてから本編に入る流れも少なくない。香取と共に約26年続けているラジオ『ShinTsuyo POWER SPLASH』(bayfm)では即興ソングを披露するコーナーもおなじみだが、その感覚が他の現場にも浸透してきているように感じる。
文字通り音を楽しむ草なぎの音楽。ガチガチに作り上げられた完璧さよりも、ハプニングなども含めて生々しさをも表現として昇華していく度量こそが、草なぎの持つ強みなのだ。物語を生きる役柄、音楽の世界観、そこに生きた人を感じることができるのは、いつだって草なぎの予定不調和でライブ感のある表現力に魅了されるからだと気づかされたような1年だった。