SHE'Sが10年間育み続けたバンドの核心 日本武道館公演を見据えた10周年ライブツアーを観て

SHE'S、10周年ツアーレポ

 本編ラストのMCでは、井上が、ファンから「SHE'Sの曲に救われました」と言われることがあるが、「手助けはしたかもしれないけど救ってはいないよ」「気づいたのはあなた自身だから」と伝えていく。さらに、井上にとっての音楽は“一人を支えてくれるもの”だったと前置きしたうえで、「どうかこのアルバムの音楽たちがあなたの孤独な時間を見守ってくれるものであれたらと思います」とアルバム『Amulet』、およびその表題曲で本編ラストに演奏した「Amulet」に込めた想いを語り、観客に「俺にとってもこの場所がお守りになっているみたいです。何が言いたいかと言うと、これからもよろしくお願いします」と伝えた。

 なお、“So Close, So Far”というツアータイトルは、7曲目に演奏された「Night Owl」の歌詞から来ている。ツアータイトルが発表された時点でそのことに気づき密かに微笑んでいた人もいれば、ピンスポットに照らされた井上がラストフレーズを丁寧に歌うシーンを観て「あっ!」と思った人もいたことだろう。「Night Owl」はメジャーデビュー前の2015年に発表された曲だが、そのメッセージ性は「Amulet」にも近く、彼らが音楽に託している願いは当時から大きく変わっていないのでは、と思わせられる。一歩一歩、バンドとして力をつけながら、大切にすべき核心をじっくり育んだ10年間だった。

 そうして歩んできたバンドが、来年2月24日、いよいよ日本武道館のステージに立つ。今回のツアー、オープニングの「追い風」の時点でレーザー光線が飛び交うなど、武道館を見据えた華やかな演出もあったが、それが大げさに感じられないほどバンドの演奏は頼もしかった。こうなればもう、結論はやはりこれしかない。来たるその日が楽しみだ! と。

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